17話:最近のくノ一ってツヤツヤテカテカしているのをよく着ているけど男も着ないとダメなのか気になるよね?
「んむぐぅううう!!??」
「はいはい暴れたら落っことしちゃうからおとなしくしてようねー」
ジタバタと体をひねらせ必死にもがく忍者な少女を抱えたままで、森を、山を、草原を、走って走って、走り抜ける。
クロエとロベリアちゃんにビオラちゃんはペシテちゃんの護衛についてもらっている。もちろん分身は置いて来たし、心配は無いだろう。
……それにしても、うん。背負っているくノ一っ娘がとっても柔らかい。きちんと鍛えられている分しなやかな柔らかさなんだけども、それでも女の子らしいぷにぷにでふにふ感がとても堪らない。そして、肩に背負って連れて行っているせいで、背中には二つの柔らかいものが当たっていて心地いいんだよ!ふふ、なんだか分身にロベリアちゃんのジトが突き刺さってる気がするけど気にしない!もう一方のコテージでもサラさんにジトられてる気がするけど気にしない!だけど、やっぱり言っておこう!ありがとうございます!!
「さて、ガラガラでボロボロで、原型すら保ってないし、諸々の落とし物という名のお宝は大体持っていかれてるみたいだけど?うん、予想通り地下は生きてたみたいだなって」
目的地は爆破されてしまった魔王バアルの城、その地下室。朝の散歩がてらに観光して中のことは大体把握済みなんだよ!
アリの巣という名の迷宮のように張り巡らされた地下は、牢屋だけだはなくバアル個人の実験施設、そしてその最奥には城の動力――魔石生成器と化した壊れたユウシャ達の姿があった。すでに機械は壊して、その少女達は大魔王城へと送り出している。エリクシールを使ってみたけれども、残念ながら彼女たちの意識が戻ることは無かった。死しても開放されることのないユウシャの輪廻から逃れるには、大魔王城の下――氷獄結界で永遠に眠り続けるしかないのだ。
そんな、クソッタレな実験施設があった地下迷宮の牢屋前には、初めて見る者ですら悪夢に思えるほどの拷問設備が備え付けられていた。うん、これ趣味だよね?向こうの世界の各地で見たことのある拷問器具が大体そろっている品揃えの充実っぷりなんだよ!とっても趣味が悪いよ!!
「ぷは、そ、そんなこと私が知るわけないじゃないか!」
「そうなの?バアルの娘で暗部の真似事なんてさせられてるのに知らないの?」
猿轡を外すと、開口一番で知らないの一言。うん、その言葉は俺の目を見て話そうね!絶対知ってるよね!
「ふん、わざわざこんなところまで運んでご苦労様なことだ。私を拷問するつもりなのだろうが無駄だぞ?たとえ死んでもお前に何も話すことなど、ない」
殺意と決意の篭った瞳。切れ長な瞳に黒髪に鳶色の瞳。引き込まれそうなとてもきれいで澄んだ色をしている。
「まぁ、聞かなくても大体の予想はついてるんだけどね。俺らが君よりも早くペシテちゃんを連れて行こうとしていたのを見て、慌てて隕石に見せかけて石を降らせて気をそらせて、その間にペシテちゃんを連れ去ろうと考えていた訳だ。うん、連れ去りのダブルブッキング?あれ、連れ去りって言ったら俺も体裁が悪いぞ!」
「……それがどうした。私が素直に答えるとでも?」
うん、思ってないよ?だって忍者だからね!くっころ騎士と同じで、くっころくノ一も一般的なんだよ!じゅるり?
「さ、流石に、意味が分からないのだが?なんで舌なめずりなんてするんだ?!」
「わからなくて良し!まぁ、そう言うわけでくノ一ちゃんの目的はペシテちゃんの誘拐だったわけだ。じゃあ、依頼したのは誰かというのが次の疑問だ」
くノ一ちゃんは顔を背けて聞いていないふりをしている。どう考えても聞いているだろうからそのまま言葉を続ける。
「バアルの子供であり、次代の魔王は自分だと名乗りを上げているのは三人。正当後継者である、ベル。元気いっぱいのアーリアちゃん。そして、どこにいるかもわからないコールと名付けられている少女だ。恐らく、というか間違いなく君はこのコールという子に……いや、その少女を魔王に仕立てようとしている者に送り出されたんだ。――コールの姉妹である君を……ね?」
少女の瞳が揺らめく。うん、割と勘だったんだけど間違いなかったみたいだ。
「だから、どうした?」
少女の声が震えている。流石にそこまで言われるとは予想していなかったらしい。ダメだよ?仮にも忍者なんだから表情に出したら怒られるんだよ?誰って俺のお師匠さんに。だって俺も忍者だし!
「あんなに派手な忍者がいるものか!」
「知らないのかな!忍びだけども忍ばないのも普通なんだよ!たぶん?恐らく?」
国民的に人気な忍者もいるしね!というか、幻術を使っておいてそれは無いと思うんだよ!
「まぁ、それはいいとして。くノ一ちゃんは魔王バアルの娘で、魔王候補に名乗りを上げたコールの姉妹だ。仮定だらけの話だけど、俺の結論だ。君の……ううん、君たちの母親は――ユウシャだ」
たらり、と少女の額から汗が流れた。うん、本当に素直な子だよね、この子!
何とかいつもの時間に……。