10話:捨てる神がいれば拾う神もいるっていうけど神様って本当に気まぐれだよね?
リゾート街のはずれのゴミ捨て場。
海での騒動を遠めに見ながら俺は観光がてらに気になる場所に立ち寄っていた。
異世界なのに機械がゴロゴロと捨ててあり、どこかで見たことがあるようなゴーレムがいくつも転がっている。
うん、これはどう見てもサテラさん作成のゴーレムさんだ!破壊というより分解されて、解体されて並べられている。ロボの解体というのは一種のロマンだけども、その古さが尋常ではない。さびさびでボロボロだよ!
恐らくここにあるものは発掘物。遥か昔、サテラさんが勇者だった時代に作られたゴーレムなのだろう。
それを誰かが解析し、分解して並べていた。
「誰だ、そこにいるのは」
ゴミ捨て場の傍にポツンと佇む小屋から出てきたのは白髪交じりのおっちゃん。いかにも頑固そうなおっちゃんだ!
「こんにちわ。ここに並べられてるのはバアルの研究の残りものかな?」
「なんでぇ、あのバカの知り合いか?まぁ、そんなもんさ。もういらないからとこっちに流れてきてな。俺の孫がこういうのが好きでいつもいじっていたんだが――もう無用の産物さ。欲しいのなら持って帰ってもいいぞ?」
うん、流石に俺が貰っても困るだけだから流石にいらないかな!男の子としてとっても気にはなるけれども、もって帰ったらたぶんロベリアちゃんあたりに捨てられちゃうからね?
「はは!おめえさんも孫と同じで女に苦労してやがるのか!」
「それはちょっと語弊があるから違うと言い張っておこう!って、も?」
「おうさ、俺の孫も女には苦労しやがってだな、ついこの前刺されて死んじまったんだよ」
がはは、とおっちゃんは笑ってはいるが、目じりには涙を浮かべている。しかしながら女の人に刺されてって、なんだか人ごとに思えなくて怖いな!
「ついこの前にあのバカが死んじまって、もう遊びに来ないのかなんて落ち込んじまってたのになぁ……。はぁ、きっと知らないうちに親父の後を追っちまったんだろうさ」
そう、ここはバアルの作った子供の一人、アダト・ゼブルの住んでいた場所。彼と彼の父親の思い出の場所だ。
「バアルは……いい父親だったんですか?」
「いい父親なもんか!女をいろんなとこで作って、俺の娘も不幸にした!自分の子供のアダトですら、こんな!……こんなゴミ置き場に置きっぱなしにしやがって……」
おっちゃんはベンチに座って空をじっと眺める。
「でもよぅ、アダトの奴はそれでもあのバカになついてやがったんだ。いつか俺は魔王に慣れずとも妹たちの役に立てる奴になってやるんだと、バアルが捨てた機械をずっと弄ってやがった。ここに持ってきてくれるのは俺にプレゼントしてくれているんだと、喜んで……な」
恐らくは少なからずその意図はあったのだろう。そうでなければ貴重な古代兵器を野ざらしに捨てるだなんてありえないだろう。それが機械いじりが大好きだったという魔王バアルならなおさらに。
「世の中、ままならねぇなぁ。あのバカ、古代兵器にロマンを求めすぎちまったんだ。勇者に何言われたかしらねーが――」
「ん?勇者?なんで勇者がそこで出てくるのかな?」
バアルの息子であるアダトの話を聞きに来ただけなのに思いもよらないところからユウシャの話がポロリと出てきた。うん、流石にちょっと予想外なんだよ?
「アイツは、この領を守ろうとして他の領を……よりにもよって大魔王様の娘の領に勇者を送り込んでやがったのさ。それも奴隷狩りの連中を、だ。自分が代理統治していることをいいことに好き放題にやっていたんだ。――いや、それすらも勇者の奴らの入知恵だったのかもしれねぇ。あのバカは機械いじりにしか興味のねぇバカだったはずだからな。だのに、なんで、あんな、馬鹿なことを……」
頭を抱え、おっちゃんは大きなため息をついた。
つまるところ、バアルは自分の領可愛さの為にユウシャの奴らをうちの領へと送り出していたらしい。そこは予想通りだからマジで激おこだよ!けれども気になるのは勇者の入れ知恵と言うところだ。どこからが入れ知恵なのかな?
「んなこと俺にもわかんねぇよ。だが……そうだな。アイツがおかしくなっちまったのは、宮廷魔術師のモル……なんちゃらが来てからだな。妖精族だって言う触れ込みだが、それだって本当かどうかわかんねぇ。何せその姿を見たやつなんて城の奴らしかいねぇって話だからな!」
宮廷魔術師リリア・モルファ。モルファ蝶を思わせる巨大で美しい蝶の羽をもつと言われる妖精族の女性だという話だ。尤も、おっちゃんの言う通り彼女の姿を見たものはほとんどいない。調査してみたけど、目撃者も少ないんだよ?不思議だな!
「まぁ、だからと言ってもう何もできることなんてねーんだけどな。……アダトの奴も死んじまったしな」
おっちゃんは白髪交じりの髪をかき上げてまた空を見上げる。
「……そういうわけだ。勇者の兄ちゃん。何を調べに来たかわかんねーが役に立てたかい?」
「堂々と来てたし、流石にバレバレだったかな?」
「なに、こちとら昔は兵士やってたんだ。兄ちゃんが只者じゃあねーことくれぇ一目でわかるさ」
あれれ?最初からバレてたの?あー……うん。一人語りしてくれてたあたりで気づいてたけどね!ホントウダヨ?
「それじゃあ教えてくれたお礼は何がいいかい?俺ができることなら……うん、多少なら?」
「ち、何でもじゃあねーのかよ」
ははは、おっちゃん?そういって俺のお尻を見ないで欲しいな!なんだか怖いからね!?怖いからね!!???
「それじゃあ、アダトを殺した奴を見つけてくれや。殺さずともいい、捕まえなくてもいい。ただ……そう、なんで殺しやがったかだけ聞き出してくれや」
「うん、できるだけ努力してみるよ。あんまり期待しないでね」
ああわかってる、と軽く手をふるおっちゃんを横目に俺はそこを立ち去った。
殺したのが女だと言う事以外は何もわからないけれども、なんとなくは犯人がどんな奴かはわかる気がする。うん、きっとバアルのことが好きで好きで堪らない奴なんだろうね!
それはもう、若いころのバアルの姿をしているアダトを殺したいくらいに……。
遅くなりましたああああ!OTL