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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第四章:勇者な執事と海と水着とバカンスと。バカンスはお仕事と見つけたり?
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4話:ドリルと言えば男のロマンだけど女の子に装備するとツンデレになるのは不思議だよね?

 眠りに沈む暗闇の中、空には三つの月が空高くに昇る。

 深い深い森を抜け、荘厳にそびえたつ城へとたどり着いた。


――それは魔王バアルの居城。ユウシャたちを絶望へと落とす魔の城である。


 しかし、その城はかつての主を失ったからか、かつての繁栄が嘘のように廃墟とまではいかないながらもボロボロになり果てていた。まるでバアルという支柱を失ったこの領の現状を表しているかのようである。


 まるでやる気のない門番たちの間を潜り抜け、襲い来る魔物すら、夜回りの警備すらない城内を駆け抜けて、目的地へと至る。


「――どうぞ」


 ノックを軽く鳴らすと鈴の音のような可愛らしい声が聞こえ、導かれるままに扉を開く。


「そして、死ねぇ!!」

「ほぁあ!?」


 振りかぶられた巨大な剣を寸でのところでひらりと躱す。あ、危ないなぁもう!!


「ちぃ、外した!」

「うん、助けを求めてきてみたのにいきなり殺されそうになるのは想像だにしなかったなって!」

「こうなった原因が目の前に入れば誰だってそうする!私は!そうする!」


 重そうな大剣を重そうに振りかぶり、肩くらいまでにそろえられたはちみつ色のドリルな髪を揺らして襲い来る。危ないな!危ないよ!?


「殺そうと!しているの!ええい、なんで当たらないのよ!この!え、えい!」


 一生懸命ガコンガコンと振ってはいるけど型も足さばきもなっちゃいない。力任せの運任せに剣の重みに任せて振り回されている。かわいそうだしそろそろ止めてあげよう、うん。


「あっ!」


 足を引っかけてコケる手前で剣を取り上げる。倒れてもいたくないようにベッドの方にこけたから大丈夫だろう。


「んみゅぎゅる!?」


 よし、無事だな。って重いなこの剣!どうやって持ってたのかな!?


「ぐ、ぅ、ぐす、そんなの魔力を使えばよゆーだしぃ。うぅ、なんでおとーさん殺したのよぉ……」


 ふぇぇ、と枕を抱えて泣いている少女。彼女の名前を俺は知っている。というかサクラちゃんを呼んでた本人だしね?


「それで、これはどういう意図かお聞きしていいですか?」

「ぴっ!?」


 にっこりととってもいい笑顔でほほ笑むと、なぜか怯えられた!ううん、不思議だな?


「ど、どうせ私も殺すのでしょう!い、いーですよ!殺しなさいな!で、でも、ただでは死にません!死ぬのなら、ふ、ふふ、お城諸共に……」

「いや、なんで殺すって話になってるのか摩訶不思議なんだけど。うん、殺さないからね?ほら、俺ってば今回偵察(休暇)でこっちに来てるんだし?」

「休暇……え、んん???」


 首を可愛く捻って何だかとっても不思議そうだ。


「ともかく改めて挨拶をば、知ってるとは思うけど俺の名前は水無瀬真人。サクラちゃん……オウカ姫の執事で勇者をさせてもらってるよ」

「……しってる。私のお父様を殺した男、それが貴方――」


 鼻をすすり、少女は気丈にこちらをにらむ。


「やっぱり恨んでるよね?まぁ――」

「いえ、だいぶせいせいしているのだけど。浮気ばかりでお母さまを悲しませてばかりだし、お仕事とかこつけて趣味の機械いじりばかりして、お城のお仕事なんてほとんど部下に丸投げだったし」


 ケロリと彼女はそう言った。う、うん。最後の最後は娘さんと奥さんの事を想っていたんだけどなぁ……。


「それこそ今更よ。このお城だって、私とお母さまのために立てた城だって言って結局ほとんど顔を出さなかったのよ?それでいてたまに逢ったら父親面するのだからたまったものじゃあないわよ」


 フンスフンスと鼻息荒く少女は語る。うん、父親として色々とダメダメさんだったらしい。じ、自業自得かな?


「それなら何で俺を殺そうとしたのさ?」

「そりゃあ殺すわよ。だって、貴方がこの領の混乱の原因で、お城がこうなってる原因で、貴方さえ私が殺せば私が魔王として君臨できるのだし!」


 えっへんと彼女は腰に手当てている。うん、えっとね?俺、勇者だから殺されても生き返るんだよ?


「え?」

「えって知らないの!?」

「し、知らないわよそんなこと!そ、そう、生き返るんだ。勇者なんてゾンビみたいなものだーってお母さまが言っていたけれど、そういう意味だったのね……」


 勇者の風評被害も甚だしいけど事実だから仕方ないね!生きているけど死んでるんだし?


「そういうわけだから、俺を殺しても魔王にはなれないし、そもそも魔石が体の中にないから経験値にもならないと思うよ?」

「そ、そんな!私の華麗なる計画が……!」


 うん、華麗でもカレーでもカレイでもなく、絵に描いた餅のような彼女の計画はものの見事に砂の城のごとく儚くも散ったのだった。


「あ、ああ!」

「今度はドシタノカナー?」


 なんだかドジっ子な彼女を生暖かな目で見てしまう。うん、可愛いんだけどね!


「ど、どど、どうしましょう。わ、私、領を庇護してくれる人に攻撃をしたことに……!」


 今更だよ!?気づくの遅いよ?!というかそんなガタガタの計画をよく実行しようとしたよね!


「だ、だって、それ以外に方法を思いつかなかったんだもん!」


 もん、と来たものだ!


 バアルの娘こと、ベル・ゼブルという少女は世間知らずの箱入り娘。父親と母親と周りのみんなにとっても大事に育てられてきた金髪ドリルで我がまま可愛い女の子だった。うん、それとドジっ子だ!!

いつも通り遅くなりました!!OTL

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