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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:解説!ハローなお仕事!
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挿話:開設!ハローなお仕事!

 エルフとは森と共に生き、森と共に死ぬ種族。

 それはルナエルフであろうと、エルダーエルフであろうと普通のエルフであろうとも変わりはない。


 なのに私は森を焼いた。


「あいつらウザい」


 そんな理由ともつかない理由で私は故郷を、愛する家族と友人たちの住むその森に、火を放つよう命じられたのだ。


 魂に根付かされたその男(勇者)の言霊は拒否する私の心を踏みにじり、月明かりの中森の中に森に、村に火を放つ。

 火に追われ、逃げ場を亡くしたエルフたちに私は容赦のない矢を放つ。動けなくなった女と子供はあの男の部下たちが連れ去り、男たちは皆殺しにしてゆく。そして、なぜ?と私に手を伸ばす父の額に――私は弓を射ったのだ。


 私は忘れてはならない。森を殺したその日を。村を焼いたその日を。家族を殺し、奴隷へ落したその日を――。


 燃え上がった復讐の火は消えることなく、例えその身を汚されようとも壊されようとも忘れることはない。例え「くっ殺エルフ」などと揶揄されようとも、私はいつかその男(勇者)を――。


 けれどもその復讐はあっけなく果たされる。

 私ではなく、その男と同じ勇者の手によって。


 炎の邪龍たちを取り込み、不死(アンデッド)となり果てたその男を、爆炎龍の力を纏った勇者が一刀のもとに切り伏せた。

 勇者とは通常、死ねばセーブポイントで蘇るなんていうふざけた存在だ。

 けれども、魂をも焼き尽くすと言う爆炎龍の炎はその男の魂すら焼き尽し、私達にかけられた「使役」という呪縛から解き放ったのだった。


 尤も、解き放たれたのはその男の使役からであり、今まで犯してしまった罪は贖わなければならないのだが。


「ぐす。私達、やっぱり死罪なのかな……」

「良くて奴隷だろうな。男どもは鉱山奴隷、女どもはどうせ色町にでも売られるのだろう」


 家族や友人を立てに使役されてきた獣族、鬼族、エルフ族や冥界族の皆はヴォルガイアから、あの男を殺した勇者のいる領へと移送されることとなった。

 聞いた話によるとあの勇者は氷結の魔王オウカの腹心であり、婚約者であり、人間の裏切者だと言われていた。


――私たちはまた勇者によって弄ばれる。


 そんなある種のあきらめにも似た感情が移送される馬のいないゴーレム式の車の中に広がっていた。


「まぁ、良かったのはあの糞ったれに賛同してた奴や力に溺れてた馬鹿どもが一緒じゃあ無いという事だな」


 虎族のソウガが外を眺めながらつぶやく。


「あちらで即処刑されたという話だ。確かに彼らは特に残虐だったからだろうな」


 ヴォルガイアの事件でも裏で彼らは人を楽しんで殺していた。そんな彼らを氷結の魔王の領に送ることはできなかったのだろう。


「私らは結局戦利品扱いです。故郷も無く、家族も無く、ああ、どうして私たちは生きているのでしょう」


 犬族の少女、名を奪われポチとあの勇者に名付けられた彼女は尻尾を丸め、震えながら頭を抱える。

 彼女もまた、家族を目の前で殺され、使役されたのだという。


「死ぬことで償えるのならば今すぐにでも死ぬべきなのだろう。だが、拙者ら達がやらされてきたことはそんな簡単なことでは償えることではない。例え奴隷の身に堕ちたとしても、その寿命が閉じられるまで己の罪を背負い、生きていかなければならぬ。それが罪人となった拙者らにできることござろう」


 片腕しかない鬼族の彼女は使役され、己の夫を殺させられたのだという。その時に顔に傷を負い、あの勇者にいらないモノだと、使役された中でもクズどもにオモチャにさせられていた。


「どちらにせよ私達は生きるしかないのだ。……処刑されるのであれば、すでにあいつらと共にされていただろうからな」


 その言葉に車の中の雰囲気が重くなる。

 今の私達にとって、死は救いだ。あの男の使役が無くなった今であれば死ねば死後の世界で家族にまた逢えるかもしれないのだから。


「尤も、逢えたとして私たちの罪を赦してくれるとは到底思えないのだけれども」

「エリスさん……」


 不安そうな顔をするポチの頭をなぜか手かせの付けられていない手で撫でてあげる。


「そう悲しそうな顔をするな。生きて罪を贖えば、きっと死んだときには我らの罪も贖える。だから――」

「お、見えてきた。あそこが……あれ、なんだ?横幕?ええと、おい、アレなんて書いてある?」

「え、ええと、人材歓迎!使役されてた皆さん一緒に頑張りましょう!……何あれ?」


 私はぽかんと開いた口がふさがらなかった。え、何?一緒に頑張りましょうって?私達奴隷になるんじゃあないの?娼館に落とされるんじゃあないの?鉱山奴隷とか、そんなんじゃ?


 混乱する頭のまま、私達は車を降ろされ、城の中へと連れてゆかれる。……あれ?何で勇者が分身して働いているんだろう?あの勇者って確か魔王の腹心だよな?なのになんで荷物を運んだり、掃除したり、受付までこなしているんだ!?


「うん、人手が足らないなら分身するしか無いよねって感じ?そろそろ泣きそうだから休んでもいい?あ、ダメ?ダメかー」


 私たちを解放した勇者はなぜか今にも死にそうなくらいにお仕事に忙殺されていた。や、休ませてあげて!??

とってもとってもとっても遅くなりましたOTL

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