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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記
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挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記7

 食べ過ぎて胸やけ気味で、それでもやっぱり幸せで。己の領とは違うところばかりだ。


あっちの領(ヴァルカス)は豊かな土壌と人がいて、さらには観光資源まで沢山ある。普通の勇者が攻めてきたところでお金になってなんでか満足して帰っちゃうとかいう摩訶不思議っぷりなところだし?というか、アドベンチャーランド的な感じで割となんでか人気があるってあれかな?勇者ってやっぱりどMなのかな?うん、俺は違うからね!あ、ジトありがとうございます!うん、違うから!」


 とかなんとか真人が行っていた。こちらの領は、と聞くと。


「人はいるけど、正直技術が無い。機械化という名の単純作業化で効率は格段に上がって生産性は高いんだけど、それだけなんだよ。領にある村々は食品の生産は盛んだけど、前にここを収めていた奴のせいで土地がぼろっぼろにされててマジピンチ?みたいな?まぁ、逆転の発想で穀物じゃなくて野菜中心に植えてもらってるところなんだけどね。痩せてる土地の方が割と美味しくなるし。まぁ細かい話は農業チートというか検索チートのサテラさんに聞いてるんだけどね?うん、ググったらしいよ?」


 という話らしい。うん、良くわからない。


「うぷ、そりゃそうですよ。真人様の説明が分かりやすかった事なんてこれまでほとんどないですから」

「うん……。そう、おもう……うぷ」


 ロベリアと苺の二人がふらふらとしている。それはそうだ。昼飯の後にあれだけたくさんのデザートを食べたのだから当たり前というモノだろう。


「くぅ、あんなにたくさん食べたのに何で……」

「ぽ、ぽっこり……して、ない」


 そう言って二人は(オレ)の腹をみる。そりゃあそうだ。己は精霊、本来ならば食事など不要だ。食べたとしてもそれは全てただのエネルギーになってしまうのだから。


「なんて、うらやましい……」

「うう……体、動かさないと……」


 何やら二人は悲し気に自分のお腹をなでなでしている。うん、パンパンだな?


「それで、ここが真人がうちのドワーフたちを集めて作ってるっていう」

「はい、製鉄所になります」


 大きな川に沿って建てられたレンガ造りの建物たちと大きな煙突。これが真人がうちの領に来た理由の一つだという。


「本来ならば海浜に立てるのが通例です。が、この領は海にまったく面していない内地も内地ですので、領の中でも一番大きな川を利用して作るのだそうです」

「熱……や、汚染水……対策もばっち……り。だから、環境にも……いいの」


 確かに輸入材を搬入するのであれば海であることが望ましいのであるが、これだけ大きな川であれば大型の輸送船も楽々と入れるだろう。


「これほぼ一人で真人様が頑張ったんですよね……」

「大きな、蛇さんが……。こう、にょろろって……」


 蛇というとゾンビ勇者事変のときに真人が見せたあの蛇だろう。なるほど、こういう使い方もできるのか……。


「うん、本当ならそんな使い方をするものじゃあないんだけど、緊急事態の非常事態だし使わざるを得なかったから仕方ないかなって?ほら川って蛇に例えられることもあるから親和性が高くて川の水でやると召喚というか形成しやすいんだよ。うん、イメージの問題かな?」


 振り向くとまた真人がいた。本当にどこにでもいる!


「ホンマどこにでもおるよなぁ。振り向けば真人さんって感じやで」


 その隣には赤毛で小さいドワーフのマネッチアがいた。どうやら現場の視察中だったらしい。


「もう完成しているのか?」

「んー、まだ四割弱って所かな。サテラさん設計で割と近代的に仕上げてるんだけど、なかなかに要求レベルが高くってね。ドワーフさんたちも困惑気味だったよ」


 ドワーフを困惑させるレベルってどれだけ難解なものを作ろうとしているのだろう?


「うん、サテラさんも自領で作るのにも苦労したって言ってたから仕方ないね」

「というか、機械が機械を作るために製鉄してるって考えると割とシュールな感じするなぁ」

「まぁ、中身があったんだけどね!」


 ともあれ、出来上がるにはまだ時間がかかるとの事だ。


「それで、三人はこんなところでどうしたんだい?街中見学?」

「観光もある。けれど、今は真人をかん」「わーわー!」「なんでも……なんでも、ないっ」


 なんでかロベリアと苺に口を押えられてしまった。むぅ、言ってはダメなのか?


「ダメですよ。こういうのはサプライズが重要なんです」

「女の子って、思って……もらうため……。他にも……がんばら、ないと」


 いけないらしい。

 でも、頑張ると言われてもこれ以上何をするというのだろうか?風のうわさに聞くジョシリョクというモノが必要なのだろうか?そもそも、己は女の子と思われなくても真人の種さえもらえれば、それで――


「って、あれ?その服どうしたの?雰囲気もフレアに逢っててカワイイじゃん」


 真人が、にっこりと笑ってそう言った。


「ふぇ?え、そ、そうか。それなら、良い」


 それだけで己の胸は高鳴り顔がどんどんと熱を帯びていく。ああ、ダメだ、その言葉はダメだ。なんて、なんて嬉しいのだろう。そう、己はその言葉を聞いただけで幸せのピークに達してしまった。

 何という事だろう。何という事だろう!己はこんなにも真人に女の子だと、可愛いと思ってもらいたかったのか!


「甘酸っぱいなぁ……」


 何とも言えない表情でなんでかマネッチアは遠くを眺めていた。

 うん、真人。頭をなでなでするのも反則だと思うぞ!

遅くなりましたOTL

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