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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記
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挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記6

 食後のロイヤルストレートフラッシュ的な?ミルクティーを飲みつつ、天井をカラカラと回るプロペラをボウと眺める。

 満腹感と多好感で満たされて、幸せ心地で還って(帰宅して)自分のベッドでウトウトとしたい。

 けれどもだけどもそうはいかないのが悲しい現実というモノ。

 母様のいうお勉強という名の謎に満ち溢れた花嫁修業から逃れてきたのだから、何かしらの成果を持って帰らなければ更に良くわからないお勉強が待ち受けることになる。そもそも、花嫁の修行なのになぜキュウリをなめるのだろう……。本当に良くわからない。


「キュウリ舐め選手権でもあるのでしょうか?」

「ううん、ど、どうだろうね……?」


 ロベリアは何のことやらわかっていなさそうだが、どうやら苺はそれがどういうモノかがわかっているらしく、頬を赤らめて眼鏡をはずして素知らぬ振りでふきふきしている。うん、そこのところ詳しく?


「く、詳しく、と……いわれ、ても、その、い、苺は……く、(くわ)えるくらい、しか……」

「咥え、る……?」


 ますますもって良くわからぬ。キュウリを咥えるのがいったいどんな花嫁修業になると言うのか?


「あはは、う、うん。そこはまぁ、いずれ?真人に教えてもらえればいいんじゃあないかな?というか、その方が真人も、うーん、も、もしかしたら喜ぶかもしれないし?」


 苦笑いを浮かべた林檎がしどろもどろと目を右往左往に泳がせながら言う。

 とても気になるけれども、知らない方が真人が喜ぶのなら、知らないでおいた方がいいのだろう。


「ああ、そういえば風呂でなぜか胸でシャワーのノズルを洗う練習も……」

「「ぶっふぅー!?」」


 林檎と苺がミルクティーを盛大に噴き出してむせている。やはり何か変なことなのか!?


「え、ええと?その、フレアちゃん。ほ、他にはどんなお勉強を?」


 聞かれたからにはこたえなければならないだろ。そうさな、例えば足でモノを掴む練習だとか?


「あ、足で……!」「ま、マニアックな……」


 食後にはほぼ確実にデザートにサクランボが出て来て、口の中でそのサクランボのヘタを結ぶ練習だとか?


「なる、ほど……舌の……」「またマニアックな練習方法を……」


 どうやら二人にはその特訓がどういう意味を持つかをわかっているようだ。ううむ、気になる。


「あと気になるのは、母様が最近花嫁修業の一環だとトロッとした魚のスープを良く飲ませるのだけど……」

「まさか!?」

「いや、うん。違う……と思う。というか、色々と、うん……うん?」


 やはりこれも何か意味があることらしい。ううむ、一体どこが花嫁修業なのだろうか。普通に美味しいし?むしろ好物だし?


「少しずつ味を変えて慣らしているのかなぁ。いや、流石にそれはどうかと思うんだけども」

「ええと、皆さんいったい何の話をしてるんです?どう考えても花嫁修業じゃないと思いますよ?」


 首をかしげに(かし)げていたロベリアが重大なことを言った。え、やっぱり違うのか?


「だって、私の知ってる花嫁修業って料理とか、洗濯とか、お掃除とか家事一般の事ですよ?その、何をしているかわからないようなことじゃあないです」


 フンス、と鼻息荒くロベリアが主張する。それで、どうなのだ?ちらりと苺と林檎を見やるとなぜか頭を抱えていた。


「そう、そうよね。それが普通よね。うぅぅ、私ったらいつの間にか変な方向に染まって……」

「苺、も……。原因、は……うん、あの(魔王)の……せい」


 そっと、二人が自分のお胎を撫でる。

 そこから感じる魔力は――魔紋のソレだった。それが意味するのは……。


「まぁ、それを乗り越えて今があるんだけどね。向こうで普通に勇者やってた時より今の方が待遇がいいって言うのはありえないわよね」

「うん、こっちの……方が、ご飯も……美味しい。それに……真人さん、がいる……し」


 ポッと二人の頬が朱に染まる。ああそうか、二人は真人の事を――。


「まったくもって皆さんはチョロすぎです。ちょーっと真人様に助けられたりしたくらいで。惚れっぽすぎます」

「そういう……ロベリア、ちゃん……こそ」

「アハハ、ソンナコト、ナイデスヨ?」


 片言で視線を顔ごとそらしている。なるほど、つまるところはここにいる皆が真人の事が好きだという事のようだ。……(オレ)も含めて。


「ふむ、オウカ姫も含めて真人の嫁は五人と言ったところか。中々の大所帯になりそうだな」

「い、いやいや、私達はまだ告白すらしてないからね!というかまだいる……ってあああ!なんで自分も好きだって話してるのよ私ぃ!」


 林檎は正しくリンゴのように真っ赤になって、頭を抱えてテーブルに突っ伏している。

 どうやら林檎は隠していたつもりだったらしい。いや、誰が見ても良くわかると思うのだけども?


「それで気づいてくれれば苦労はないのですけどね。真人さんって、その、鈍感ですし?」

「そう言えばいつの間にかロベリアちゃん、様ってつけるのやめてたの気づいてなさげだよねー」

「うん、は、恥ずかしいけど、抱き……ついて、あ、アピールしても。軽く、い、いなされて……」


 どうやら各々に苦労しているようだ。……そう考えると己は幸運だったと言える。母様が婚約者だと言ってくれていなければ同じように……。


「こうなればやけ食いね」

「やけ……食い!」

「店を食べつくすです!」


 三人が涙ながらに店員にオーダーを通してる。

 ……あれ、今食べ終えたばかりだったような?


「「「やけ食いは!!別腹だから!!」」」


 別腹らしい。それならば己も注文しなければなるまい!


「「「「オーダー!!」」」」

「もう勘弁してくださぁい!!」


 厨房の奥からどこか悲し気な叫び声が聞こえてきたのは恐らく、幻聴だろう。

遅くなりましたOTL

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