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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記
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挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記5

「こんなところでどうしたのって、え、何この状況!?」


 町の大通りに面したカフェでケーキを食べていると、見知らぬポニーテールの少女が話しかけてきた。

 むぅ、己は今食べるので割と忙しいのだけれども。モグモグ。


「お疲れ、様」

「お疲れ様です林檎さん。まさかフレアがこんなに大食いだとは思わなくて……」


 どうやら二人の知り合いらしい、と言いうよりも林檎……という名前になぜか聞き覚えがある気がする。

 もちもちと十皿目のお代わりのパンケーキを頬張りつつ首をかしげる。


「ええと、初めまして。私は秋風林檎。真人の部下で、今はこの町の治療院で働いているわ」

「林檎さん、治癒のチートが……すっごいの」

「怪我や病気を一瞬で治せちゃうんです。本当に勇者ってチートですよね?」


 それは確かにすごい。というか、そんなチートが軍勢にいれば無敵なのでは……。もぐもぐ……ごくん。


「残念ながらそうでもないのよねー。確かに病気やけがは治せるんだけど、例えば腕が無くなったりとか呪いとかは治せないの。だから、ふふふ……エリクサーもどきって、エリクサーもどきって」

「お、落ち着いてください林檎さん!普通に考えてすごいですからね!?エリクサーまでじゃなくとも」

「そう、林檎さんの……チートはすごい。エリクサーまでじゃ、ない……けど」


 気が付けば林檎はカフェの片隅で膝を抱えていた。うむ、どう考えても二人がとどめを刺した気がする。ああ店員、アイスカフェオレのお代わりを。


「あ、あれ?どうしたんですか?林檎さん?林檎さーん?」

「ふふふ、どうせ一日充電しないと使えない子よ……。しかも範囲指定型だから誰でも彼でも人でも虫でも魔物でも治しちゃうからこうして町以外じゃ使えない子だし。ぐすん、戦いじゃ使えないって一体何回言われたことか!」

「確かにそれは使えないな。戦場で敵もまとめて回復されたのではたまったものではない」

「ぐふぅ!?」


 あ、倒れた。もぐもぐ。


「ああ、林檎さんが頭を抱えて悶絶してる!大丈夫です、林檎さん!皆さん林檎さんがいてくれてとっても感謝してますから!」

「うん、いなかったら治らなかった人、沢山……いた」

「それでも、私じゃ治しきれない人も……」


 治しきれない、それは恐らく部位が足りていないから戻せなかったという事なのだろう。


「林檎、それは違うぞ。奪われたものは帰らない。確かにエリクサーであれば戻せるのであろう。しかし、エリクサーでは数が足りない。量が足りない。あれは高価なものだ。民草では中々……いや、買える者はいないだろう。だが、見劣りはすれど、それに迫るほどの治療ができるのは誇るべきことだ。決して、そのように卑下するべきではないと己は思うぞ?」

「そ、そうなのかなぁ?」


 無論であると腕を組んで胸を張る。もぐもぐ。


「まぁ、謙遜しすぎなところが林檎さんらしいと言えばらしいですけどね」

「でも、しすぎ……よくない」

「ぐすん、二人ともおぉ……」


 なんだか涙目になっているが、そもそも落ち込ませたのは二人なのでは……いや、良そう。これは言わない方がよさそうだ。


「でもフレアちゃんってたしかこの前真人が行ってたヴォルガイアのお姫様だったわよね?もしかしてお忍びで真人に会いに来てたり?」

「大体あっていますね。お忍びというか堂々とお勉強から真人さんのところに逆召喚してきた感じです」


 失敬な。逃げて来ていない。そう、単に休憩をしているだけだ。……数日くらい?十五皿目のお代わりを食べ終え、そろそろ別の商品に狙いを定めるとする。次は……アイス、いやパフェだ!


「うん、この領を楽しんでるわね。というか、いまフレアちゃんが来てる服って最近できたお店の服じゃない!うう、いいなぁ。私まだ懐が寂しくて見に行けて無いのよね」

「何といいますか、この方裸族でしたのでどうしても服が必要だったんです」

「裸族!?」


 いやいやいや、待てロベリアそれは語弊がある。確かに己は獣の状態では裸である。だがしかし、決して裸であることを良しとはしてはいないのだ。というか、人の姿で裸でいることはとても恥ずかしいことであるのだぞ?それなのになぜそう言い切れるのだ。


「だって、裸でしたし?」

「召喚……されたのなら……。魔力で、召喚したときの服も……形成される、筈」


 つまり、逆召喚で己がこちらに来るまで裸で逢った証明であるわけか。なるほど正しい!何せ己は風呂場から逃げ出したのだからな!


「やっぱり!」「らぞく……?」

「だから違うと!」

「ふふふ、なんだか三人とも仲良いいわね」


 くすくすと林檎が笑い、それに釣られて苺とロベリアも、そして己にも思わず笑みが零れた。こうして誰かと笑いあうのはいつ以来だろうか?


「あ、因みにです。フレアは真人さんの婚約者なのです」

「や、やっぱり真人ってロリコン……」


 林檎が頭を抱えうんうんと唸っている。ううむ、ろりこん、とは何なのであろうか?


「お待たせいたしました!ニチアサの破壊者?的なパフェでございます!」


 ドン、とテーブルに置かれたのはパフェと言うには大きすぎる代物だった。(イチゴ)(チョコ)の縞々のアイスを主に彩られたパフェの量は、正しく胃袋の破壊者……!


「なんでオノレ、パフェ!!って器に書いてあるんでしょう?」

「うん、わかる人には分かるんじゃないかなぁ……。まぁ、真人の趣味入ってるネーミングだし。素直にチョコストロベリーサンデーとかにしておけばいいのに」

「意味……不明?」


 どうやら真人が名付け親らしい。四人でつついて破壊者を何とか倒し、己たちの胃袋は破壊されずに満足できたのであった。

遅くなりましたOTL

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