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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記
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挿話:モフモフドラゴン娘の異国漫遊記2

 それは大魔王の国から帰って数日後の事だった。玉座の間に呼び出した母様は(オレ)にこう言った。


「真人という男、グリム(大魔王)の奴が認めるとはやはり中々の男だ。ふふふ、お前が見初めただけの事はあるという事だ」


 いやいやそういうつもりで彼を選んだわけではなく、ただ彼ならば(オレ)の全てを預けて構わないと思っただけなのだ。彼ならば、真人ならば(オレ)を上手く使ってくれる。母様を助けたいという(オレ)の願いをきっと聞いてくれる。そして、彼は(オレ)を――と言ったところではたと気づいた。なぜ(オレ)はここまで真人の事を信頼してしまったのだろうか、と。


「龍の墓でお主を助けたのが出会いだと言っておったな。そこで一目惚れしたのではないか?」

「母様、流石の(オレ)でもそれはない。……けど、(オレ)がどうして飛ばされてきたのかを瞬時に判断して、(オレ)がやろうとしていたことを何の見返りも無しにやってくれた。それが只嬉しくて、彼に礼を言わねばと」

「裸で温泉に一緒に入った、と」


 未だに縮んだままの母様は、おもちゃを見つけた時の子供のような無邪気さ……とは縁遠いニヤニヤとした目でこちらを見つめる。


「た、確かに一緒に入った。けれどもそれは、彼の周りに常に人がいたから。二人きりになれる場所を探していたらそうなっただけ」


 そう、ただそれだけの話。それ以上でも以下でもないのだ。


「ほう、あれほどに誰かに人の姿を見せるのが嫌いなフレアがか?」

「……それだけのことを彼がしてくれたから」

「では、それをフリート(将軍)がやっても同じことをしたか?」

「え、やだ」


 思わず即答してしまう。この領を護る役目を担うフリートがあの墓地を護るのは当たり前。だのに素肌を晒してまで礼を言いに行くはずも無い。


「つまりはそう言う事だ。たしかに、あ奴はゾンビ事件の犯人を捜すという目的はあった。しかしゾンビたちを倒したり、事件を解決することまでは求められてはおらんかったのだ。そこに打算があったのかどうかはあの時一番近くに追ったお前が良くわかっているだろう?」


 確かにその通りだ。(オレ)は一番近くで真人を見ていて、言葉の伝わらぬあの姿ではダメだとそう思い、素肌を晒した。恥じらいはあるけれども、そんなことは二の次だった。


「それが答えだ。フレア、お前はそれほどまでに真人の事を気に入っておったのだ。今はどうだ?契約……いや、絆を結んで、思うことはあるか?」


 母様にそう言われ、自分の胸に手を当てる。

 思う事と言われると一つだけ。確かに彼との絆はここにある。けれども彼は――ここにはいない。


「……逢いたい。ううん、(オレ)は彼のそばにいたい。真人にギュッとしてもらいながら頭を撫でられたい」

「つまりはそれがお前の気持ちだ。ふふふ、全てを捧げてもいいと思ったのだ。それが愛でなくて何という」


 アイ、愛、つまりはラブ、LOVE。……つまり、己は真人を愛している、と?己は小首をかしげる。上手く言い表せないこの気持ちはそれなのだろうか?確かに真人にならば何をされてもとは思うけれども。


「う、うむ、そうだが、なんだか色々と振り切れているようにも思えるな」

「そんなことは無い。ただ真人にあってスリスリしたいとかそれくらいだし」


 そう言うとなぜは母上は頭を抱えていた。何かおかしいことを行ってしまっただろうか?


「何というか、こうなってしまったのは一重に私がお前の事をしっかりと見ていなかったせいなのだろうが、何ともなぁ。私も恋をしていればこうなっておったのかと空目してしまいそうになるぞ?

「問題ない、母様と(オレ)は一心同体。つまり、己は母様だ」


 ふんす、と少し邪魔なくらいに大きな胸を張る。けれども今は赤いドレスを着ているせいで少し窮屈なのはここだけの話だ。


「まったくお前は。ならば私が真人の婚約者になってもよいのか?」

「それは、その、難しい」

「何故?」


 その問いに私は固まってしまう。だって、そうじゃあないか。己と母様とでは比べるまでもなく、真人は母様をとってしまう。そうなると……。


「お前の居場所がなくなってしまうな。それは嫌だろう?」

「う、とても嫌」

「それが恋というモノだ。だから私はお前と真人の婚約を申し出たのだよ。しかし、真人はまだお主の事を愛しておらん。良くて友人、最悪愛玩動物レベルだ」


 愛玩………………それはそれで?


「いや良くないからな!?きちんと愛してもらえるようにお主もアピールしていかなければならない」

「母様、そうい言われてもどうすればいいか全然わからない」


 そう、まったくもってわからない。アピールとはい、一体……。踊れば良いのだろうか?


「踊るて、求愛のダンスを人間にやっても伝わらぬからの?そうだな、お前の胸にあるものを好きにしていいとでも言ってやればイチコロだと思うぞ?」

「この、邪魔な胸で?」

「そう、それが武器なのだよ!」


 何という事だろうか!不要で、邪魔で、無性生殖するであろう己になぜついているか疑問で不思議だったこの胸が、真人に愛されるのに役立つとは!


「う、うむ。しかしきちんと恥じらいを持つように。単にくっつけるだけだはダメだからな?」

「だ、ダメなのか!?」

「ダメだ!こうなれば一から説明が必要なようだな……」


 そうして、胸を使った真人篭絡計画が秘密裏に開始されたのだった!

遅くなりましたOTL

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