モフモフドラゴン娘の異国漫遊記
戦いとは常に戦う前から始まるものだ。
そう、今のこの戦いは向こうに行く前から決まっていたのだ!
「うん、そうだよね!書類を減らす人がいないと増えるだけだよね!いやできるでしょ!なんでやらないのかな!何でため込んでるのかな!?」
山のようにモリモリと積み上げられた書類の山さんはいくら崩してもどんどんと積み上げられていく。なんでかな!と言うか帰ってきてから倍々ゲームな鼠算式で増えて行ってるよ!?
「それは真人様がドワーフたちの町を作ることにしたからでしょう。自業自得かと」
「んん、サテラさん。書類とか諸々は事前に用意していたんだ!それでも何でこんなに書類があるのか不可思議なんだよ!」
俺の書いた書類に追加に追記でこうして欲しい、ああして欲しい、ああすればよくなると思うとか適当に書き足されている。うん、確かにわかるんだけど予算があるのを忘れてないかな!だからと言って、俺の手は二つだけだからね!安くなるからって俺に公共事業をほぼ丸投げってそりゃないぜ、事務のおっちゃん!!
「確かに手は二つですけどこうして分身してる姿を見せられると普通にできそうですし、というかできるじゃないですか?」
「いいかいロベリアちゃん。できるのと、やるのとは違うんだ。俺また過労死しちゃう!もうゲームオーバーはこりごりなんだよぉ!」
泣きながら書類をガリガリと書き進め、外では分身の俺が公共事業をバリバリと頑張っている。森をギャリギャリと拓いて大地をズドドドドと均して、道路を敷いてエンヤラコンヤラと資材を運ぶ。
いつも言ってるんだけど、分身を操ってるのも俺だからね!沢山いるけど、全部俺だから!分身が意思を持って動いてるわけじゃないからね!ちゅらい!まじでちゅらいよぉ!
「頑張って、お手伝い……するね?」
「とはいえ、一日二日じゃあとても終わりそうにないですけど」
うん、苺ちゃんにサラさんいつもありがとう!あと!サテラさんはPC動かせるんだからもっとお手伝いして欲しいなって!
「もちろんお手伝いはしております。ですが、真人様が取り決めになられた工場の建設にほとんどのリソースをさかせていただいております。そのリソースを削れば他の作業を手伝うことができますが、いかがされますか?」
「うん、大丈夫!サテラさんはそっちをお願い!ああもう、猫の手も借りたいけど」
「呼んだかにゃ?」
ガチャリと扉が開いて、入ってきたのはクロエちゃんだった。うん、ありがとう!ちょうどいいところに!
「クロエちゃん、書類のおしご」「ああ、警備のお仕事手伝うってヴォルフさんと約束してたんだった!それじゃ!!」
とってんぱーのにゃんぱらり!と空中三回転でもしそうな勢いでくるりんと素早く方向転換し、猫なのに脱兎のごとく走り去っていった……。
うん、猫だよね!猫族さんだったよね!兎族じゃないのに何で逃げちゃうのかな!
「頼まれきる前に逃げるとは……。これが野生の勘!?」
サラさん、それはちょっと違うと思うな!ああ、兎も角手が足りない!もう何でもいいから手伝って欲しいなって!とか思っていたら、ポムンと頭にフカフカで柔らかなモフモフが降ってきた。
「んきゅ。きゅー……」
そのモフモフは俺の頭にしがみつきすりすりしてウトウトしてる。
「うん、このモフモフ感はフレイだね?うん、思わず喚んじゃったわけじゃないはずなんだけど、どうしたのかな?」
「きゅ?きゅーきゅぅきゅー」
うん、たぶん次代の爆炎龍になるための訓練をサボりって逃げて来たらしい。と言うかちゃんと話そうよ!話さないと伝わらないんだよ!
「いや、なんでわかるんですか!?というかこのモフモフって一体!?」
「も……モフ!」
あまりの可愛さとモフらしさに苺ちゃんの目がキラリと輝く。そういえばサラさんと苺ちゃんには話してなかったっけ?
「紹介するよ。俺と絆を結んで召喚してくれるようになった火焔龍……うん、火の精霊のフレイだよ。こう見えてヴァルカスのお姫様だったり」
「もふ……も……お姫、様!?」
フレイをモフモフしてた苺ちゃんが固まった。そりゃあビックリするよね!どう見てもモフモフで可愛い愛玩動物的サラマンダーさんなのに、その実はちっちゃいけど一部がおっきいドラゴン娘さんなのだ!あれ?そういえばこの子の服を着た姿ってみたこと無いぞ!裸族?いや、そんな、まさか……ははっ!
「色々と突っ込みどころが満載ですが、フレイア様から通信が入りました。帰ったら書き写し五倍との事です」
「んきゅう!?」
あまりの事に今度はフレイが固まっている。そりゃそうだよね!逃げてきたらそうなるよ!
「そういう訳だから早めに帰った方がいいと思うよ?」
「きゅぅ……。きゅーきゅきゅ!」
フレイはむふんとモフモフな胸を張っている。うん、それは悪手だと思うよ!帰るころにはお勉強が山盛りだくさんになってるんじゃないかなって!
「きゅう……。きゅ、きゅーきゅ!」
ダメだ、この子早く何とかしないと……。
俺ペンを走らせながら頭を抱えたのであった。