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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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36話:事故って思わぬところから起きるから注意しようもない時もあるよね?

 空高くに舞い上がり、舞い上がって、落ちてゆく。そう、かの昔の偉い人も言っていた。リンゴも木から落ちる、的な?

 加速度的に駆け上がって、駆け上がりすぎて落下しながら巨大な黒いナニカにかかとを落とす。うん、あまり効いてはなさそうだけど不意打ちだし、残り少ない木札を切ったから何とか威力は出ているかなといったところ。うん、ふらついたくらいかな!


『この、くそがぁ!』


 語彙のかけらすらもなくなったユウシャというか魔王的な黒くて大きくてなんだかテカテカしてる何かはブンブンと黒い炎をまき散らし、自分の味方のゾンビも燃やしている。見境ないというか攻撃が大雑把でおざなり過ぎる。

 ううん、もしかすると急激な体の変化についてこれていないのかもしれない。まぁ、全く知らない誰かの体に急になったら動きづらさマックスだよね!


「ごめん、ちょっと遅くなった」


 くるくるスタン、とアクロバティックに白銀と紅い巨龍の頭に降り立つ。

 しかしながらに、格好いい!流線形のボディ。白銀と紅の鎧のような鱗はまさしく伝説の炎の龍と言って過言では無いだろう。名前……名前はどうするかな?セイントヴォルガイアドラゴン・アルティメイタム、とかいいんじゃないかな!な!


『う、ううむ、名前を付けられても次にこうなる可能性は皆無だからな?』

『長い』


 バッサリとフレイア様とフレアに切り捨てられた。ううん、格好いいと思うんだけどなぁ?ダメ?ダメらしい……。


 さて、ともかくふざけている場合じゃなくて時間がともかく足りてない。あと五分と言われて二分程。あって三分、良くて二分といったところ。ぺちゃくちゃ喋っている間にも、黒くて巨大で羽まで生えてるユウシャと言うか化け物になり果てた巨大なソレはこちらを追って空を舞う。無駄に格好いいのが腹立つけれども、黒くて禍々しいその姿は魔王そのもの。どういう理屈でユウシャってるのかがいまいちわかんないな!


 たん、と龍の頭を蹴り下りてユウシャを眼前に手に持つ(鼓草)を振りかぶる。


――無限流/刃/奥義ノ壱/武御雷


 閃光のごとく煌めくそのひと振りで巨大な黒いユウシャの腕を切り落とす。


 が、すぐに焔となって戻ってしまった。ふふ、キレテナーイ!


『無駄無駄無駄無駄!俺には貴様の攻撃など通じない!俺は!無敵だ!もはや死すらも超越した!神にすら匹敵する究極の勇者だ!!』


 黒く、昏いその炎を周囲にまき散らし、町を、山を燃やしてゆく。神とかいうならもっと周りを気にしてほしいな!


『真人、時間がない。もう少しで合体が解ける!』

『こうなれば、諸共に!』


 言ってセイントヴォルガイアドラゴンアルティメイタムは黒いユウシャの体を抑え込み、空高くへと運び去る。

 おそらくは被害の出ない空高くで自爆覚悟の炎を上げて燃え尽きるつもりなのだろう。うん、やっぱりこの名前は長いな!


「だけど、それはダメだ。他の誰がいいと言っても俺がそれは許さない!」


 残った木札を全部切って巨大な二つの影を追いかける。全力疾駆、音すらも追い抜いて、空の上、雲の上、そのさらに上へと昇り詰める。


『ははは!その炎で燃やしたところで俺は死なない!死んだところで蘇るだけだ!何せ勇者だからな!だから、お前が死んだと同時に娘ごと俺の支配下に置いてやる。ふふ、死んでお前らは俺の一部になり果てるんだ!』


 黒い炎があふれ出て、紅と白銀の肌を焼く。炎の龍であるのに焼けている。地獄の炎ともいうべきその炎は同じ炎であったとしても蝕んでいるのだろう。


『だが、それでも!』

『この街だけは護って見せる!」


 紅と白銀の光があふれ出てその全てを投げ打った聖なる炎を上げる。けれども、それではダメだ。表面の邪龍は焼けても中に篭ったユウシャにまでは届かない。届かなくて、分離して()()()()()()()()。それではダメだ。


「だから、その全てを俺に託してくれ!」

『ならば!』

『全部を、真人に――』


 二人の炎は(いち)となり、光となって溢れ出で、その全てを受け止める!


――第参の秘術/八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)


 力を誰かに受け渡すための秘術。そして、受け取るための秘術――!

 受け取った二人の総てを(鼓草)に乗せ、放つは一突(ひとつき)


『そんなものが――!』


 包み込む二人の炎を纏い、風を纏い、纏えるものは全部纏って、巨大な黒いユウシャのガードごとその胸部を突き抜ける!


――無限流/刃/奥義ノ参/加具土命(かぐつち)


 炎があって完成するその奥義は俺の習得に至っていなかったモノ。それは命を確実に奪い取る焔の一撃。


「燃えて散れ」

『が、がああああああああああああああああああああ!!??』


 聖なる炎は突き抜けた胸部を内側からその全てを焼き尽す。

 加具土命の炎とは、神をも殺す原初の炎。根源たる炎はいかなるものをも焼き殺すのだ。


「だからお前も燃えて死ぬ。――けれども神のもとへは帰れない」

『な、なにを、言って――』


 そう、こいつを滅するにはアンデッド化させる必要があった。そして、そこから分離前に聖なる原初の炎で焼かなければならなかった。


「そう、ずっと不思議だったんだ。どうしてユウシャは死なないのか。簡単に言うと、冥界に行くのと同じで根源という名の輪廻に還っていなかったんだ。詰まるところは解脱してたんだね!仏様だったんだよ!」


 生き物は死ねば輪廻に還る。還った後でゼロになって新しく生まれ変わる。そこから神に無理やり離されたのがユウシャと言うわけだ。


「だからお前が()()()()()()()()()()()()()()()その算段が付いた。輪廻から外れて、解脱したのに、わざわざ輪廻に戻れるアンデッドになってくれたんだ。これはもう、戻してあげるしかないでしょう?」


 だから邪龍たちとくっ付いてくれていなければ詰んでいた。本当に俺は運がいいなって?


 ボロボロと、ぐずぐずに燃えて、黒いユウシャは空から墜ちてゆく。


『ああ、どうしてこんなことになったんだろう?俺はただ、奪われたくなかっただけなのに。ユウシャになってやっと奪われないと思ったのに――』


 燃え尽きながらユウシャはつぶやく。恐らくこいつも理不尽に死んでユウシャとなったのだろう。


「それは来世に期待しな」

『来世――。ああ、そうか。やっと俺は、死ねるのか――』


 その言葉を最後に肉を、魂を、その全てが燃え尽きて、ユウシャだったモノは地面につく前に消えてなくなっていた。

 ……まるで最初からそこには何もいなかったかのように。






『その全てを薙ぎはらえ!ネオ・グランブラスティアキャノン!』


 サテラさんの声が響き、高火力、高威力のビームが空へ向けて放たれる。

 衛星からもたらされた莫大で膨大なエネルギーを、一塊にまとめ上げたその威力は絶大。

 輝くその一閃は巨大なアンデッド達を一瞬にして塵と変えてゆき、俺も一緒に薙ぎ払われた。


 そりゃないぜ!あふん!?

遅くなりましたOTL

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