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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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34話:龍とか炎とか暗黒とか邪王とか聞くと耳をふさぎたくなる人って割といるよね?

 紅蓮の炎は天を焦がし、町を空を大地を、その全てを一瞬にして焼き払う。


「う、うわあああ!!」


 ユウシャが驚きの声を上げ、顔を覆う。俺も慌てて木札を切るが間に合わない――ってあれ?熱くない?

 そう、その炎は炎でありながら熱は無く、メラメラと何かを燃やしていた。


「ぎゃあああああああああああああ!!??」


 苦悶と苦痛の叫びを上げたのは邪龍とグールたちだった。メラメラと燃えて、すでに力の弱いゾンビは燃えて尽きて消えてしまっている。冥界の姫様は熱いのに叫び声も上げずに燃えていた。うん、流石に危ないから気絶したところで水をかけたけど!


「これは――聖なる炎!なるほど、俺がフレアにくっつけた属性がまだ生きているのか」


 そうなると、空にいる天燚龍さんとでもいうべき紅蓮と白銀のドラゴンさんはフレアなのかな?


『いいや、どちらでも……だ』『私であり、母でもある。どうやら体も心も一つになっているらしい』


 テレパシーのごとく二人の声が聞こえてくる。なるほど、二人で一人のドラゴンと言うわけだ。これは正しく!エクストリ(究極の極致)ぃぃぃぃムッ!!


「いつもながらに何を言ってるかさっぱりわかんねーけど、うん。あのドラゴンってフレイア様だよな?夢に出てきた時よりでっかくなってねーか?」


 空飛ぶ巨大ロボ、ネオ・グランブラスティアから飛び降りてきたのは夏凛ちゃんだった。うん、お疲れ?というか嫉妬の炎で燃やしていい?


「バカを言わず状況を説明してください。とりあえずフレイア様っぽいドラゴンを助けようとオウカ様がしてくださったらあんなことになったのですが……」

「うん、俺にも全然まったくもってわかんないんだけど、とりあえず俺がお前でお前が俺で的なノリでダブルエックスなエクストリーム?」

「「なるほど、全然わからん!」わかりません」


 二人が首をかしげている。おかしい、きちんと説明しているのにな?


「つまり、サイクロンジョーカー(かくかくしかじか)エクストリーム(まるまるうまうま)な訳ですね!」

「そう、その通り!」


 上からの声にそう答える。見上げると、ふわりと桃色のスカートを翻してネオ・グランブラスティアからサクラちゃんも降りてきた。ナイスキャッチだ俺!……白いのは見えてない!レースもついてた!見えてない!


「えへ、お姫様抱っこ……」


 うん、サクラちゃんが幸せそうで俺も幸せだよ!


「なんで通じるのでしょうか?」

「まさか、何かの暗号……?」


 暗号じゃないよ!わからないからってなんでも暗号という事にしないで欲しいな!


『それで、あれが元凶のユウシャですか』


 ネオ・グランブラスティアがギロリとユウシャを見下ろす。


「はは、ははは、俺は、また奪われた。まただ、全部俺のモノにしてきたのに、また取られた……!」


 なんだか知らないけれどもどうにも壊れたように勇者は笑っている。うん、怖いな!まるでホラーっぽいよ?


『殺しますか?』

「殺したらダメだよ、残念だけどこいつは滅しないといけない。氷漬けでもダメだ。この男は超えてはならない一線を越えちゃったからね」


 そう、殺せばここにいる捕えた者たちは全てアイツのもとに召喚される。恐らくは今のフレイア様ならば大丈夫だろうが、フレイと分離すればたちまちにこいつの元へと跳んで行かされてしまう。それだけは避けなければならない。だから、滅する。


「ふざけるな……。お前は俺から何もかもを奪う気か?」

「何を言っているんだい?奪ってきたのは誰か思い出せないのかな?」


 首をかしげて男を見下ろす。この男は勇者でもユウシャでもない、ただの道化に過ぎない。躍らせていたのは神かあるいは別の何者か気になるところだけどね!


「奪ってきた?違う、ちがうちがうちがう!この世界は俺のモノだ!俺のために用意された世界なんだ!俺は勇者で!魔王を倒し殺して!世界を……救うんだ!」


 キラキラとした目で男は笑っている。えーと、しもしも?俺の事見えてますかー?おーい?


「そうだ、そうだ、そうだ!神が言っていた!運悪くの親父に殺された俺のための世界だって!この世界で魔王を倒す勇者になるための世界だって!ああ、だから俺は勇者だ!何者でもない!俺は――」

「うん、お前は何物でもない、ただの人間だよ」

「!?」


 怒りとも、悲しみともつかない顔をその男は向ける。


「名前も知らない誰かさん。お前は勇者なんかじゃあない。だって、君は何かを護るために戦っているのかい?誰かを救うために戦っているのかい?俺にはお前がそんな風には見えない。ただ自分の欲望のままに奪い、殺し、凌辱している。コレのどこが勇者だ。お前なんてユウシャ(ピエロ)で充分だ」


 言葉を吐いて捨てて、木札を構える。


「はは、ピエロ?ぴえろだと?ありえない、ありえない!俺はあいつにも言われたんだ!これは俺のための物語だって!俺が主役なんだって!だから!あああああああああああああああああああああああああ!!」

「っ!何が!?」


 男が叫んだ瞬間、辺りにいる邪龍たちが一斉に男へと吸い寄せられていく。一体や二体ではない、フレアに焼き尽くされた堕龍以外、その全て。


――そして黒い闇の炎を上げて、()()は姿を現した。


『ああ、これだ。これが、勇者の力だ……』


 恍惚とした、とろけるような声でその男叫んだ。


『我が名は、カース(アンリミテッド)ブレイズ・アンデット・ドラグブレイバー!くく、暗黒の炎を纏いし究極の勇者だ!!』


 黒い鎧からは暗黒の炎が噴き出し、その巨躯はネオ・グランブラスティアと同等。五階建てのビルをゆうに超えるほどの巨大さだった。


 どこまで名前を長くする気なんだよ!?

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