33話:合体変形で翼がくっつくのってやっぱり浪漫があって素敵だよね?
クルクルと風を切りながらまい降りて、その勢いのままに誰とも知らぬ鬼のおっさんを蹴り飛ばす。うん、着地成功!みたいな?
分身でニンニンござると不意打ちからの影打ちで、闇討ちまでやって、どんどんどんと相手を雁字搦めてふんじばっていく。うん、殺すのは簡単だけど後のお話を聞けないと困るからね?
「なんでだ!なんでゾンビ共が復活して来ねぇ!なんで火竜が燃えていやがるんだ!火竜だぞ!?炎の龍が何で燃やされてるんだよ!!ああ、そうか……てめぇ、てめぇか!何をしやがった!どんなチートを!?」
「俺に質問するな!と切って捨ててもいいけど、単純至極。アンデットが浄化されたら魂の輪廻に戻るんだよ?冥界に戻らないから帰ってこない。ほら道理じゃあないか」
「そんな、訳があるかあああ!」
自分の知らないことを理解しようともしない誰かさんは発狂しながら分身の俺と刃を交える。
こんな内地まで攻め込んでくるだけの事はあってなかなか強い。剣の腕はそこそこで、使う魔法はかなりのもの。けれども、なんだかつぎはぎだらけのパッチワークで、一つに綺麗にストンと纏まっていない。雑多にスキルや魔法だけを搔き集めるだけくっつけて、一つに丸めて出来上がり!なんてごちゃごちゃっぷりだ。両手剣で剣術なんだかフェンシングしてるんだかナイフ術なんて使ってる訳が分からぬハチャメチャさ。うん、技術はすごいね!技術は?
「なんで、躱せる!なんで当たらねぇ!ああ、何なんだお前のチートは!!」
「え、チート?もらえるなら貰いたかったけど、そんなものはまったくもって貰えなかったから、こちとら必死こいて頑張ってるのにチートだ!って一言で片づけられると、とっても悲しいなって?うん、アンタが使役して強奪してきた能力や技術の方がよっぽどチートだけどね?まぁ全然扱えてなくて技術と能力にブンブン振り回されてるみただけど?」
「うるっせーんだよ!俺が最強なんだよぉ!おらぁ!」
見事な剣の一閃が放たれる、が綺麗すぎて見切りやすすぎる。その後の追撃まで読めるから、わざと引っかかってそのまま足を引っかける。お、見事にずっこけた!
「が、ぐぅう、何だ!何だ!なんで最強の俺が……」
鼻血を無様に流しながらユウシャはこちらを睨む。
「んー、何をもって最強と言ってるかは計り知れない所があるんだけど、今のあんたじゃ自分の使役してる部下にも負けるくらいだだと思うぞ?はっきり言って、そこで鼻を抑えて泡吹いてるちっちゃな柴犬っぽい女の子の方が強かったし?」
獣人の人たちは野生の勘で躱して避けて俊敏で、第六感的何かでニンニンしても躱しちゃうからね?鬼だってそう、彼らは人なんかより発達した筋力と魔力を持っていて、その能力を存分に使った戦い方をやってくる。呪術系が特に得意で呪いをかけて相手に負荷をかけてくるんだよ?うん、俺には効かないけどね?そう、だからそんな彼らのスキルを奪ったところで何になるのかなって?魚のように泳げなくとも、マネ程度はできるかなってくらいだろうけど、鳥の飛ぶ技術だけもらっても飛べるはずもない。だって、人間だもの?
「ふざ、ふざけるなよ?俺がポチより弱いだと?犬っころよりも?頭を踏みつければヒンヒン泣くアイツよりもだと?は、はは、そんなわけ……そんなわけがあるかぁあああ!」
ぶんぶんとやたらめったらにスキルを振り絞りながらユウシャは剣を振りかぶる。うん、だから弱いんだよ?
「スキルを奪う努力はしてきたのかもしれないけど、使いこなす努力をしなければ宝の持ち腐れ。なんの意味も無いんだよ?だからアンタは弱いんだ」
魔力も霊力すらも通わせていない木剣でその剣をはじき飛ばして蹴り飛ばす。うん、きれいに吹っ飛んだな!
「さて、フレイア様の使役を解除してもらいたいところなんだけど――その様子じゃあするつもりも……いや、そもそも解除なんて最初からできないモノなのかな?」
「ぐ、ひひ……。できねーよ。もうアレは俺のモノだ。ついでに大魔王の娘も持って帰ろうと思っていたが気が変わった。ここで死んでもらえるもんは貰って――なんだ、あれ?」
唖然とした表情でユウシャは空を見上げる。
空にはフレアとフレイアと邪龍たち。
紅き二龍はもつれ合うように戦っていたが、一瞬フレアが体制を崩された。それを待っていたかのように邪龍たちが襲い掛かろうと押し迫たる――その時、ソレは現れたのだ!
――それは、大いなる鋼鉄の化身。
――白銀に輝く翼を持つ巨人。
その名は!魔王機人!ネオ・グランブラスティア・エース!!
「く、グレート合体から更に翼を付けるだなんて……!卑怯だ!卑怯だぞ!かっこいいよおおおお!!」
一体全体いつの間に完成させたと言うのだろうか!いや、開発体制はサテラさんの領のラボならばあるはず。ネオ・グランブラスティアが開発されていたのは知っていたのに!合体シーン見れなかったぁああああ……って、あれ?ブラスティアの手の上に乗って、両腕を組んで仁王立ち……つまるところのガ〇ナ立ちをしてるのって――。
「サクラちゃん!!!??」
そう、風を切るその巨体の掌に乗っているのは、見まごうこと無くサクラちゃんだった!
「――私はもう逃げない!私だって、まーくんの隣で戦えるんだから!」
サクラちゃんは声を上げ、おもむろにその魔布を外して素顔をさらす。すると、瞬く間に美しい銀色の髪は高濃度の魔力で輝くブロンズピンクへと色が変化した。あんなサクラちゃん初めて見たぞ!?
『控えろ――!』
それはこの世の全てが逆らう事の出来ない至上命令だった。下された命令に時が止まるかの如く全てのモノが動きを止めた。――白銀の紅き龍を除いては。
「そうか、俺が効かないから絆を結んだフレアも……」
俺がフレアの炎の恩恵を受けたように、彼女にも俺の能力の恩恵を受けたという事か!
フレアはフレイア様を抱きしめて、クルクルと螺旋を描くように墜ちてゆき、瞬間、光が溢れた。
「どうなって、ああ、もう、訳が分かんねぇ……」
呆然と勇者がつぶやく。
うん、俺にも訳が分からん!
――そこにいたのはフレアでも、フレイア様でもない巨大な一体の龍。
火でも炎でもなく焱ですらなく、その姿は全にして燚――神の炎そのものだった。
でけぇ!かっこいい!!
遅くなりましたOTL