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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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28話:子供のころのにお母さんが貯金してくれると言っていたお年玉が今どうなってるか気になるよね?

 炎が舞い、暗黒が散る。

 ドロドロのグズグズの骨と朽ちた肉でできたドラゴンゾンビ共は、己の肉が散るのもお構いなしに縦横無尽に私の張った結界の中を飛びまわり、冥府の炎を吐き散らす。


『おおおおお!!』


 真正面からそ奴らの横面をけたぐり、吹き飛ばし、切り裂き、焼き尽くす。十や二十では済まないその数に辟易としてしまいそうだが、そんなことは言ってられない。全力です全てを叩き潰すのみ!


『そのような姿になり果てて尚、力を望むか!』

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 理性すらなく、魂すら朧気な龍のゾンビ共は己が本能のままに牙を振るう。

 同じ魂が別れた者たちのなれの果て。己の欲に駆り立てられ、邪悪に身と魂を染め上げた者たちのなれの果て。ああ、見ているだけで何と胸の締め付けられることか!


 鱗に覆われた翼で空を切り、牙向くドラゴンゾンビ共を、牙で尾で薙ぎ払いながら駆け巡り、炎を(はし)らせ幾度も幾重に木っ端を蹴散し吹き飛ばす!

 それでも奴らは湧いて湧いて湧き出でる。焼き消えた瞬間にいつの間に描き出された巨大魔法陣から、先ほど焼き尽くした同じドラゴンゾンビ共が顔をのぞかせていた。

 なるほど、一度こちらに喚べさえすれば冥界の姫君がいる限りは無尽蔵(何度も喚べる)と言う訳か!


『ならば、そちらから叩けば良いだけのこと!』


 体の中に炎を滾らせ、魔法陣の中心にいる悲痛な叫びを上げ続ける冥界の姫君を見やる。


 ――あのユウシャがいない?


「よそ見をしたな?」


 ケケケ、と後ろで声がした。


『な、後ろ――!?』


 瞬間、巨大な何かに体を押さえつけられ、追随して群がるドラゴンゾンビ共に体をむさぼられながら諸共に大地へと叩きつけられた。


『が、ぐぅ!?な、何が――』


 頭を巨大な何者かに押さえつけられる。だがそれでも抵抗して首をもたげると――そこにいたのはかつて私の手で殺したはずの妹の姿だった。……ああ、そうか、お前まで。


「はは!感動の対面というやつだな!ん?覚えてなかったか?薄情な姉だなぁ!!」

『貴様!よくも妹を、プラムを――!』


 ゲラゲラと笑うユウシャの姿を探すも見当たらないいったいどこに――。


「わからないか?わからねーよな?ほらここだ、んん、見えねぇか?おまえの妹の中だよ」

『なっ!?」


 にやにやと笑うその男は、あろうことかドラゴンゾンビと化した妹、プラムの体に同化してそこにいた。腐敗した体の胸のあたり、そこに顔だけをのぞかせて。


「俺のチートは使役って言ってな。直接手を触れていれば自分のモノにすることができるんだよ。そう、体も、心も、魂すらな!」

『ならば、その姿は――』

「けけけ、本当なら操るだけなんだが、勇者教の実験の成果でな!使役さえできればそいつを俺の体に同化するも武器にしちまうのも、そしてさらにはその能力を奪う事も思うがままなんだぜ!はは、まさしくチートだろう?」


 あまりにもチート(規格外)過ぎる!何なのだ、こいつは!


「そして、ああ……。ここからが本番だ。さぁ!お前ら、やれぇ!」

『ぐ、ぅ!?』


 ガクンと体の奥底から吸い上げられる感覚で思わず声を上げる。これは、エナジードレイン!


「お前は炎そのものだ。だから普通のゾンビやグールなんかのエナジードレインじゃあ吸いきれねーんだよな。吸っちまえば最後、炎に焼かれて燃え尽きちまう」


 そうか、だから――。


「だからこいつらだ。このゾンビ共はお前と同じ炎から分け生まれた存在。はは!ならお前の炎の力を吸えないはずが無いだろう?」

『最初から狙いは私だだった訳か。ならば、なぜ町にゾンビを放った!』

「ああん、そんなの決まってるだろう?」


 にやにやと笑いながらそいつは言う。


「絶望したお前の顔を見るためだよ」

『この、外道がっ!』


 龍の体を動かしあらん限りの炎を巻き上げる。だが、その抵抗は龍たちに押さえつけられ、炎はすべて吸い取られてゆく。ダメだ、このままでは!イグニア、そうだ、イグニアは――!


「ん?ああ、食いごたえのないトカゲか。もうただの肉人形になってるみたいだぜ?」


 視線の先、そこには意識なきイグニアを弄ぶ獣人たちの姿がそこにあった。着ていたものはすべてはぎ取られ、無残にも食い散らかされていた。


『貴様!貴様らぁああ!!』

「はははは!ああ、いいね!いいねその顔!だが、まだまだこれからだぜ?」

『があ、があああああ、あっ――』


 ついぞ、私は龍の姿を解かれ、竜人の姿へと戻る。最早私に抵抗する術など残されていない。


「まさか、こんなことが――」

「ブレイズ・カース・アンデットドラゴンって所か?はは、無駄に長ったらしい名前だな!」


 私の炎を吸いつくしたドラゴンゾンビ共は、その力で新たなる肉体と姿を生み出していた。それも一体や二体ではない、そこにいたすべてのドラゴンゾンビ共が、新たな肉体を得てしまった。


『ああ、ああ!なんと素晴らしきことか!』

『ようやっとだ!ようやっと我らの復讐が成される!』

『姉さま、ごめんなさいね?ああ、なんて甘美な力……』


 冥界の力を得た堕龍たちは翼を広げ、己が姿に酔いしれている。形は違えどその姿はまさしく爆炎龍たる私そのもの……。こんなものたちが世に放たれるというのか!


「さて、仕上げだ」


 プラムの体から抜け出したユウシャが降り立ち、堕龍(いもうと)の腕に押さえつけられる私へと歩み寄る。まて、まさか、まさか!


「ああ、そうだ。今のお前なならできるはずだ。魔王たるお前であれば無理だっただろうがな?さぁ、お前はどんな風に……鳴いてくれるのかな?」

「やめろ、やめろ!やめろおおおおおおおおおおおお!!!」


 私の叫びは木霊となって消え、無情にもその手は振り下ろされた。






「うぉりゃあああああああああああああ!!!」


 聞き覚えのある誰かの叫び声と共に熱風が奔り、プラムの体が吹き飛ばされる。それに巻き込まれて何体か吹き飛んだようだ。い、一体なにが……。


「うん、俺!参上!……みたいな?」「んきゅ!」


 にやり、と何やら陽気でご機嫌な勇者の執事が白いモフモフを頭にのせてそこにいた。

 モフモフまで何やらポーズを決めている。

 うむ、そうか。お前は出逢えたのだな。お前の――

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