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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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23話:火の鳥ってすごく格好いいけど実際にいたら色々とヤバいよね?

「はは、はははは!なぜ、わかった?姿も、声も、態度も同じだったのに?」


 将軍の姿をした宰相さんは、その巨碗を振るい俺の通った後をガンガンと周囲を焼き潰してゆく。うん、そんな戦い方をしているからだよ?


「動きに無駄が多すぎ?大ぶりだし?炎をただぶっ放すだけってどうかなって?確かに熱いし当たるとヤバいんだけど、当たらなければどうということは無いくらいだし?うん、自分の体のはずなのにその姿に慣れていない感じがして、とっても違和感だったんだよ」


 将軍とも呼ばれるものであるならば武に秀でているのは当然の事。だのに目の前にこのおっさんにその武の欠片すら感じない。つまり、ヤンチャな兄ちゃんが粋がってる感じ!イエーイ?


「はぁ、まったく。まさかそんな事で気づく者が現れるとは。これだから勇者というのは!」


 炎が巻き上がり巨躯の体が解けて崩れる。――そしてそれは姿を現した。


 絢爛たる不死の象徴。


 炎から生まれ出でし者。


 不死鳥――フェニックス!


「予想通りと言えば予想通りだけどやっぱり不死鳥さんか!切った瞬間再生するし、どんな攻撃を受けても瞬時に再生してしまうっていう話だから困りものだよね」

『ならばここで灰燼に帰すがいい。ふふははは!見ろ!お前が賢明に防いでいた矢はあちら側で放たれているようだぞ?』


 ああ、そんなことは分かってるよ糞ったれ!黒煙が上がり、悲鳴が木霊する。阿鼻叫喚のようそうを呈している温泉街――。ああ、だけど一つ兄ちゃんは勘違いをしている。


『なにを――』

「勇者ってのは俺一人じゃあないんだ。だからあっちはあっちで任せておくんだよ。きっと奥さんにおしりを蹴ってもらえるだろうしね」


 彼が俺の思う()であるならばきっと自分から行こうとしてくれる。見た目はアレだけど?ドウフフとかグフフとか言ってたけど?うん、きっと何とかしてくれるだろう。


「だから俺は目の前のあんたをぶっ飛ばして、サクラちゃんのところへ向かわせてもらう。本当は無視していってやりたいけど、このままじゃあ将軍のおっちゃんに汚名がそそがれちゃうからね?うん、そのつもりで変身していたんだろうけど、明かしてくれたからこちらも思う存分にやれるんだよ」

『ははは!何を言っている!貴様自身で言ったではないか!ボクは不死身のフェニックスなのだと!そんなボクにたかが勇者一人に――』

「うん、殺せないよね?」


 そう、どうあがいても殺せない。きっと原初の炎を操るくらいしないと殺しきることは叶わない。けど、俺ってそういうのばっかりと戦ってきたんだからね?


『なんだ、地鳴り――』


 瞬間、大量の水が大地から噴き出した。やーっとここまで水を引いてこれたんだよ!


「中々に長々と話してくれてありがとう。おかげ様で予定通りに水を引いてこれたなって。うん、結構固い岩盤をゆっくり掘削してたから大変だったんだよ!」


 ここは温泉地だからね、色々と諸々に気配りをしてできる限りやりたくなかっただけど、悲しいかなそうは言ってられないのっぴきならない事情というやつで、緊急にお湯を引かせていただいたわけだ。


『が、がああああ!こ、この程度でぇ!!』


 音速で噴き出す大量の湯を圧倒的熱量で吹き飛ばし、あたりに爆裂した水蒸気がまき散らされ、そのモヤから逃れるように大空へと舞い上がる。うん、それを待っていた!


「ドゥフフの勇者さんが言っていて、今更ながらに気づいたんだよね。魔方陣を発動させるには始動する呪文を呪符や木札に書いたり刻んだりする必要があるとばかり思いこんでいたんだけど、それは使ってる俺の思い込みだったんだ。結局のところは魔力でも炎でも水でも地面にでも、ともかく何でもいいから呪文さえ描かれていればそれでいいんだって。俺ってね、あっちの世界の水の神様に愛されてて、水の操作だけならこれだけで行けるんだよ」


 扇振るい、まき散らされた水蒸気が結露となって小さく見えない文字となってあたりに散らばる。


『空の上ならば――何が?』

「下へ参りまーす!」


 しゃなり、しゃなりと舞い踊り、水の精へと願い賜る。まき散らされ、上空へと上がっていた水はすべて水蒸気になっている。うん、上がったものは落ちるんだよ?空に刻んだ水の呪が水蒸気すべてがひと塊の水の蛇として不死鳥へと食らいつく。


 ――巫術/奉納舞/(みずち)


『があああ!!?こんなもの――ごぼぼ!!』


 相克。そんな考え方でいえば炎とは水に打ち消されてしまう関係性だ。けれども、それでもあの不死鳥さんは煌々と輝きながら自らを飲み込んだ蛟を焼き払おうと炎を吐き出す。しかし、密閉された莫大な水の中ではその炎は瞬く間に消えてしまう。不死鳥ってば炎から生まれるけど炎そのものじゃあないからね!死にはしないけど、短い間位なら閉じ込めることくらいならできるんだよ?


「その短い間というと数分くらいなのが困りものなんだよね。兄ちゃんが疲れきるまでやってもいいけど、いい加減俺も時間が無いから、うん。サヨナラだ」


 首塚だった岩の塊。それに水で穿って呪文を刻み、さらに扇を振るって蛟の周りに水の呪を浮かべてクルクルクルルと舞い踊る。兎のように跳ね回り、その歩みすらも呪へと変える。


『まざが、や、やべ――』

「急急如律令。うん、お休みなさい?」


 水蛇が霧散し、中に閉じ込められていた不死鳥がその首塚だった岩の塊へと吸い込まれ――その炎はついと消えた。


「いつか誰かがその封を壊してくれる日まで、ずっと眠っているんだよ。いつになるかはその時のお楽しみだけどね」


 最後に岩に封印の紋を刻んでその場を後にする。

 うん、そろそろ川の水が戻ってくるんだよ!鉄砲水さんは……ヤバイ!


「きゅい」


 くるくる、ポスンとどこからか頭にモフモフの何かが降ってきた。……あれ?サラマンダーさん!ここに来る前に危ないから置いてきたのに、何でいるのかな?ついて来たいの?もう、仕方ないなー。

 さてはて、目的地まではダッシュでジャンプで飛んでいこう!着地は――後で考えよう!

大変遅くなりましたOTL

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