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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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19話:温泉旅館のゲームってどんなにレトロでも楽しめちゃうのが不思議だよね?

 ぐふふ、となんだか昔懐かしいオタクさんみたいな兄ちゃんはなんだか怪しげに……じゃなくて朗らかにほほ笑んでいる。うん、勇者だこの人!


「え、ええと、何用で?」

「おうふww何用でときましたかwwwこれは困りましたぞwwwこぽぉwww」


 やばい、何が何かわからないけどなんだかやばい気がする!この人話通じてる?日本人だよね?日本人にしか見えないけど、異世界……異次元の人なのかな!?


「んんふwww申し訳ござらんwwwこうして同郷の人と話すのは久しぶり故www緊ww張wwしておりまするwww」

「笑いすぎて何言ってるかわかり辛いよ!?オーケー落ち着いて話そう。深呼吸!吸ってー吐いてー……」


 頭の上で一緒にサラマンダーさんも深呼吸してる。ああ、癒されるなぁ……。


「失礼、んっふw拙者、今は引退の身なれど以前は勇者をやっておりましたもので、もしや貴方も同じく勇者ではと思い声をかけさせていただきましたで候」

「普通に話してる!?じゃなくて、うん、引退?」

「ええ、その。んふwww愛しき人を見つけましてww身を固めたら、もう知らない誰かより目の前の大切な人を護れたらいいかなってwwwああ、すみません。のろけですwwどうぅふwwどぅふwww」


 薬指についた婚約指輪を兄ちゃんはなんだかうれしそうに見せてくれる。うん、なんで唐突にのろけられてるのかな!?くそう、こんな時マネちゃんか夏凛ちゃんがいてくれればなぁ。突っ込みが足りないんだよ!


「そ、それで、その引退勇者さんがどうして俺に声を?」

「それはもちろん、あなたが方々で今調べられていることに関してです。ビックリしましたよ、同じ人がいろんなところで聞き込みしたり張り込んだりしてるでござるから」


 ばれてる!?いやいや、なんでバレてるのかな?俺ってこれでも隠密かなりできる忍者さんだよ?まさか、感知系のチートを……。


「魔力の流れ、霊力の流れ、気の流れ、そういったものを読み取ればおのずと?妻へのプレゼントとしてここの旅行をしているのですがゾンビやらグールやらが最近現れて物騒だとお聞きして、私も調べていたところなのござる」

「なるほど、自力で。それはまたすごい人に逢えたみたいだ」

「ええ、私もまさか魔王側についている勇者に逢える日が来るとは、思いもしなかったでござるよ」


 うん、完全にこちら側の事を知ってる風だ!本当に何者なのかな、この人。警戒してジィと元勇者だという兄ちゃんを見る。身長は百八十ほどで巨漢。うん、ふと……デ……ぽっちゃりさんだ!


「どぅふww私はただの引退勇者ですよ。勇者でいることにつかれた……いえ、勇者である意味がなくなったんですね。愛しの妻を見つけてしまいましたのでwwwうはwwwまたのろけてしまいましたぞwww」


 急にテンションが高くなるなこの人!けれども、これだけの感知能力がある人ならばもしかすると既に何かつかんでいるのかもしれない。そこの所どうなのかな?


「そうでござるな、まず射手の位置は大体あそこの高台あたり。あそこから目的の場所へ飛ばしていたで候」

「うんん?なるほど、よくわからん!」


 まったくもって要領を得ない。まるで俺の説明みたいなんだよ!……いや俺もここまでじゃなかな?無いよね?うん、顔を逸らさないで欲しいなサラマンダーさん!


「そうですね。今あなたがお持ちになられている魔石、それは矢じりなのでござる」

「矢じり、となるとこの魔石を飛ばしていたのや弓矢と言う事かな?」

「その通りでござる。魔法陣を描いた紙をこよりにして固め、射る瞬間に発動していた訳でござるな。そして、射られたあと魔法陣が描かれた紙は発動熱により焼けて燃えてしまって、残されるのは先についていた魔石のみというわけで候。まさしく完全犯罪でござるな」


 それならば結界の張ってあったあの墓地でゾンビがあふれ出た理由がわかる。悪意を持った者が入るわけでもなく、高威力の攻撃をされたわけでもなく、ただの石ころがカラコロと降ってきただけだったら簡単に入っちゃうだよ?うん、魔石って魔力があるただの石ころだしね!


「でもそうなるとかなりの弓の名手がいるって事になるかな。あと、相当な魔術の実力者とか」

「ええ、そしてゾンビたちを使役できる冥界の者がいると思われるでござる。ゾンビとはたとえ召喚されたとしても、その主の言う事なんて聞かずに好き勝手にかじりついてくるでござるからなぁ。ですが、あのゾンビは同一方向に動くなど一貫性が見られました故」


 でもそうなると諸々がおかしい。冥界の者がいるんならなんで直接行動しないのかな?


「しないのではなく、できないからと考えると辻褄が合うでござる。あの場所で冥府の者がゾンビを発生させるにはそこにその冥府の者がいる必要があるでござる。が、それは結界に阻まれてできない。入ろうとした時点で害意があると認定されてはじかれるでござるし。だから先ほどの方法だったというわけでござる」

「なるほど、悪意のないゾンビさんを結界の内側に放ってしまえば後はどこかから命令すればいいわけとしたわけか。ううん、七面倒くさいことを……」


 内側からの攻撃に弱いのはよくある話だけれども、ここまでの情報を持っているとなるとやはり内側の者が絡んでいる可能性がとても高い。目的もそのあたりにありそう?


「つまるところ、その弱点を突けるのは貴方の想像通り内側からの要因が考えられるでござる。私は結界なんかは詳しいでござるから察知できたでござるが、私ほど解析できる勇者は今はまだいないはずでござるし」

「兄さんがあちら側とも考えられるけど?」

「どぅふwwそれならこんな話はしないでござるよwwというか、妻とのいちゃらぶタイムを邪魔されてこちらとしてみましたら、正しくはた迷惑なのでござるから」


 つまりは、解決をこちらに投げて自分は奥さんとラブラブしたいわけだ!くそう、なんて奥さん思いなんだ!


「でもその奥さんは何処に?」

「ああ、そこのアイスが美味しいんだってガイドブックにあったから買いに行ってるでござるよ。どぅふふww甘いもの好きのうちの奥さん!かwwわwwゆwwすwww」


 だれか、壁を!壁をください!なんかムカつくんだ!腹の底から何かを殴りつけたい!!

 ぽむぽむと頭の上でサラマンダーさんが俺をなだめてくれる。ぐすん、俺の癒しはサラマンダーさんだけだよ。


「あなた~!アイス、買ってきたわよ~!」


 どこからかそんな声が聞こえて振り向くと、可愛らしいフリフリの淡い色のワンピースを着た女の子がとてとてと走り寄って来ていた。年齢はロベリアちゃんよりも下くらいだろうか?うん、小学生になりたてくらいかな?どう見ても幼女だ!


「おおww愛しのハニー!どぅふww紹介しますぞ。彼女が我が愛しの妻でござるwww」

「どうも初めまして」


 この子が彼が言っていた奥さんらしい。ふふ、可愛い奥さんですね。よし、通報かな?通報だよね?うん、衛兵さんの詰め所は何処だったかなー?


「ま、ま、待つでござるよ!?彼女は成人!成人でござる!小人族、ミニアスでござる!」

「聞いたことがあるような無いような?確か辺境に住む酪農部族だったかな?」


 前にアークルの書庫をあさっているときに見たことがある気がする。魔王たちの領の辺境にいる、かなり数の少ない一族だ。愛好家がペットとして買うために奴隷狩りが横行したこともある、とかなんとか。


「この人ったら、私たちを護るために勇者をやめちゃったんです。そこまでしなくてもって言ったのに……」

「どぅふw愛しき人の為なら肩書なんていらないでござるwというか、勇者の依頼として奴隷狩りがある時点で頭がおかしいんでござるよ」

 

 それでこの人は勇者を見限ったわけだ。奴隷は文化として昔からあるらしいけど、それは犯罪奴隷や借金奴隷に戦争奴隷なんかの話。うん、狩りに行ってる時点で色々と間違えてるんだよ?


「まぁ、魔王側にもそれは言えるんだけどね。うちの領ではやるつもりも予定もないけど?」

「魔道ゴーレムがいる次点で労働力問題はかなり解決してるらしいでござるしなぁ」


 だけど何度も過労死が頻発してるけどね!主に俺が?というか、この兄ちゃんどこまで俺のこと知ってるのかな?


「どぅふww知っていることだけ知ってるんでござるよ」

「うん、なんだかデンジャラスな首の角度になっているから、やめておこうね?」


 首を四十五度傾けようとすると逝っちゃうんだよ?こう、コキっと?


「兎も角、情報ありがとね()()の兄ちゃん。おかげで調査が捗るよ。んー流石にあの高台にはもう犯人さんはいないみたいだけど、足跡くらいは見つけたんだよ」

「おうふww流石ニンジャ!仕事が早いでござるwwっと、あと最後に。もう気づいていると思うでござるが、犯人は勇者でござる。恐らくは使役系のチートを持っていると思うでござるから」


 想定はしていたけど、やっぱりあったよ使役チート!発動の条件もあるんだろうけど、警戒しておくに越したことはない。


「ん、わかった。それじゃあ」

「どぅふww頑張るでござるよー」


 ひらひらと手を振って凸凹夫婦と別れる。うん、はた目から見たら犯罪者と誘拐された小さい女の子だよなぁ。やっぱり通報されそうだ!しちゃダメかな?我慢どころだ!

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