15話:焼き鳥は塩もタレも美味しいけど鳥皮はタレが至高だよね?
ヴァルカス城。その佇まいと雰囲気は洋風の雰囲気を持ちつつ和風の意匠を取り込んだ、なんだか明治くらいにタイムスリップしたようなレトロな気分になるお城である。
「けれども中は完全に洋風なんだもんなぁ。個室になれば和室もあるんだろうけど?」
「お城というか仕事場やからしかたないんよな。一般の人もお仕事のために仰山来るし、靴脱いで行く東洋形式は難しいんよ」
なるほどなーとマネちゃんの言葉に相槌をうつ。うん、こっちでも和風は東洋らしい!びっくりだね!
「いや、驚くところそこかいな!椿の故郷である修羅の国は東の果ての海に浮かぶ島国やからな。そら東洋って言われるに決まってるやん」
「そのまま日本っぽいのかー。お米の生産も修羅の国が盛んだって聞くし、ううむ、どうにか一度行ってみたいものなんだよ」
買い付けを沢山しないといけないからね!日本食を再現するのは割とコストが掛かるからね!どうにか貿易をしないと……。うん、海が近ければいいんだけどサクラちゃんの領って内地だからね!海のある隣の領からの陸路もあるけど、やっぱり直接の陸路か空路を確保できればいいんだけどなぁ。サテラさん、線路をどうにか増やせないかな!
「東の国へ向かう陸路の間には多くの人の国を通過する必要があります。ですので線路を通すには地下を通すか大きく迂回する必要があります。現状は一番現実的な迂回ルートを選択しておりますが、莫大な資材と費用が必要になっておりますので、工期は伸びに伸びているところですね」
現実はとてもはかなく厳しいものだ。ううむ、椿さんにもらったお醤油とお味噌の味が忘れられないんだよ!本当に本気で作ったお味噌とお醤油だからね!マジ美味かったんだよ!
「お待たせしました、グルンガスト様、真人様」
現れたのは上だけあるフレームの眼鏡をかけた若々しい兄ちゃんだった。ううん、イケメンだ。異世界ってどうしてこう顔面偏差値高めなのかな!ちょっと悲しくなってくるよ!?
「カノッサス、今の私はおつきのサテラです。どうぞお構いなく」
「はは、ではそういう事にさせていただきます」
名前を知ってるってことはお知り合いのようだ。はっまさかロボ!?
「いや僕はロボじゃあないからね?ともかく初めまして。この領で宰相を務めさせているセネン・フェネクスと申します。以後お見知りおきを」
「こちらこそよろしく?ふむむ、フェネクスというと火の鳥さんだったりするのかな?」
フェニックスが転じてフェネクス。西洋ではよくある精霊や神霊を悪魔とみなした時の名前だ。
「今はこんななりだけど、確かに火の鳥ですね。焼き鳥とは呼ばないでくださいね?」
どうやら散々言われてきたらしい。うん、火の鳥と言われたら日本人なら焼き鳥を思い浮かべちゃうよね!ああ、なんだか食べたくなってきたなぁ。……じゅる。
「僕を見てよだれをたらさないで欲しいな!別の意味に見えるよ!?」
「それはいけない!というか俺もそんな意図は全くないからね!うん、今日は帰りに露店で焼き鳥を買って帰ろうってそう思っただけだから!甘辛のタレっていいよね!」
「真人さん食い意地張っとるなぁ……」
ついて来てくれてるマネちゃんとサテラさんのジトが痛いな!頭の上にずっと載ってたサラマンダーさんもポムポムしてあきれ気味のようだ。うん、ありがとうございます?
「兎も角、書庫を見たいって話だったね。フレイア様から話は聞いてるから案内させてもらうよ」
「フレイア様から、か。お姫様じゃあないのかい?」
そう、俺が今日ここに来た理由はでお風呂に潜り込んできたお姫様が進めてくれたからだ。なのに、なんでかフレイア様ってことになってるんだよ。不思議だな?
「要人を案内するとなると、姫様に頼まれたという風にしていたらうるさい人がいるからね」
どうやら裏の方に七面倒くさい人がいるらしい。うん、どこにでもいるよね!
「ええと、それでその子は?」
その子と言われてフェネクスさんの視線を追うと、俺の頭の上の毛玉さんだった。うん、サラマンダーさんの事らしい。
「昨日墓地で拾ったサラマンダーさんなんだけど、なんでか知らないけど懐いちゃってて、ついて来ちゃったんだよ。一緒にいっちゃダメなのかな?」
「ああいや、構わないよ。ふふ、大事にしてあげてくれると嬉しいな」
なんでかあきれ顔にも似た笑みでフェネクスさんはそう言う。
ううん、この子の事知ってるんだろうか?なんだか気になるけれど、大事にしてくれと言われたらもちろんですと答えざるを得ない。うん、すごく可愛いし、モフモフだし?
「でもこの子何食べるのかな?ドックフードは……うん、売ってなさそうだし。生のお肉とかお野菜とか?うん、虫はさすがに取ってくるのは――うん、ぺしぺししないで欲しいな、サラマンダーさん!なんだかモフモフで痛くなくてむしろ和むけど!」
どうやら今言った食べ物はダメらしい。ううん、それなら何がいいんだろう?果物ならいいのかな?人の食べるものは上げられない気がするけど……え、それがいいの!?この子思った以上にグルメさんだった!
「ぷ、くすす、うん、それじゃあ案内するよ」
なんでかツボにはまってるフェネクスさんに俺は首を傾げつつ、書庫へと向かったのであった。ううん、謎だ……。
遅くなりましたOTL