10話:刑事ドラマって大体が中盤でボードを使って説明してくれるからありがたいよね?
――さぁ現場検証を始めよう。
スマホ何て異世界で使えないし、地球の本棚なんてチートも無いから現場検証なんだよ!地道だな?
「慌てて走って行ったから何やと思うたら、なんで地べたにはいつくばってるんや?」
「ゾンビがいたから帰ってもらって、現場検証中?」
「ゾンビ!?……って、気配すら無いんやけど……」
そりゃあ浄化して冥界に帰ってもらったからね?気配も何も無いと思う。うん、正直ゾンビだからお肉が残るかなと思ったけど、それすらも残らなかった。つまりはあのゾンビという姿そのものは実態のある虚像だったんだよ!
「うん、意味が分からへん!」
「俺もわからん!だから調べてるんだよ?」
現場百閒。刑事の偉い人は大体そんな事言ってる気がするし?
たぶん、おそらく、メイビー、ゾンビたちが発生している途中で食い止めたから何かしらの痕跡が残ってると思うんだけど、なかなかに見つからない。
「申し訳ございません、遅くなりました」
「ん、ありがとーなぁ」
よっこらせ、とサテラさんが背負ってきた爺ちゃんが大地に降り立つ。どうやら腰の調子の悪いらしい爺ちゃんにサテラさんが気を使ってくれたらしい。流石優しい!
「ご無事で何よりです、真人様」
「うん、にっこりとほほ笑んでいてあんまり心配してくれてなさそうだけどね?可愛いけど!そんな事よりサテラさん、この辺りの魔力反応をサーチしてくれるかな?俺の探知なんてたかが知れててしょっぱいクラスだから中々に目当てのモノが見つからないんだよ」
「なんや、目当てのもんって?」
マネちゃんが可愛らしく小首をかしげる。うん、それは見つけてからのお楽しみ?
「承知いたしました。それではサーチを開始いたします。――アクセス」
説明しよう!サテラさんの体内には大量のナノマシンが注入されており、そのナノマシンたちの力を借りて、大気圏外にあるサテラさん専用衛星にアクセスすることができるのだ!うん、前に使ってた大気圏外からのエネルギー照射にも使ってた衛星さんなんだよ!
「――コンプリート。真人様、そこの敷石に魔力反応があります。反応を鑑みるに魔石、ですね」
「ビンゴ!……うん、あったあった。これを探していたんだよ」
この小石くらいの大きさの魔石がいわばゾンビの呼び水。術式は何か別の者に描かれていたのかもしれないけれども、これが元になってゾンビたちは現れていたわけだ。
「けれどもどう見てもただの魔石やな。誰かが落としたんちゃうんか?」
「んー、それはありえんなぁ」
爺ちゃんがふがふがとヒゲを撫でる。
「ここにはフレイア様が敷いてくださっておる結界が張っておる。何者かに対する敵意や害意をもって力をふるえば、たちまちにはここから弾き出されてしまう。だから落としたー言うのは考えられんのぅ」
「だろうね。俺の頭の上のモフモフはたぶんそのせいで吹っ飛ばされて来たんだろうし」
そうとなれば新たに疑問が湧き出でてくる。ならばこの魔石はどうやってここに来て、そしてどんな魔法陣をつかい、どうやってその魔法陣を消したのか。うん、さっぱりわからん!
「魔法陣を魔力で描く技法も確かにあるのですが、それをするには術者が直接に描く必要があるので、時間がかかる上に本人がこの場にい続ける必要があります」
「つまりは魔法陣は魔力で編まれていたわけじゃ無い訳だ。じゃあ物理的に書かれていたのだろうけど、うん、何もないよなー」
あるのは俺の手の中の魔石だけ。うん、謎だな?
「それもやけど、なしてこないへんぴなとこにゾンビが出たんや?ゾンビといえば生き物を襲うものやん。せやのにここにはいぬっころ一匹すらおらへんやん」
そう、それも謎だ。町の人からの話だと今までもゾンビが現れているのは町のはずれや人気のない川べりだったり、何となく辺鄙なところばかり。うん、なんでだろう?
「何か目的があるにしても計画性があんまり考えられないんだよ。仕掛けてるやつがよっぽど何も考えていないか、もしくは考えてはいるけど計画性が無い行き当たりばったりかかなって?」
もしかするとそう考えるかもしれないと思うのが計画なのかもしれないけれども、これ以上はただの言葉遊びになるので思考は放棄だ!ポイ捨てだよポイ捨て!
「犯人の手がかりがまだこの魔石だけなんだけど、一つ答えは見えた。犯人は魔王じゃなくて勇者、ないしは人だよ」
「え、なして?」
マネちゃんが頭を抱えてぐるぐるしてる。ふふ、可愛いな!
「だって簡単で単純な話。ゾンビなんて使う魔王なんて冥界の人とかヴァンパイアさんくらいなんだけど、こんなものに頼ってゾンビを召喚するわけがないんだよ。あの人たちは自分の魔力で召喚できるって話だし、こんなにまどろっこしい真似はしないはずなんだよ」
「それに、する意味もありませんし」
そう意味がない。ゾンビを使えば疑われるのは必至、なのにわざわざゾンビをいろんなところに出して自分たちが犯人です、なんて言って回っているようなもの。うん、そもそも魔力の無駄だし?
「もし仮に冥界やヴァンパイアの魔王なら、深夜に対応できないくらいのゾンビやグールを一斉に町に解き放って制圧していくはずなんだ。その方が圧倒的に有利だし?なのにそれをしないのは理に適ってないんだよ」
「え、ええと?ほかの魔王がしてるっていう可能性は無いん?」
あるかもしれない、けどほぼない。
「だって、魔法陣を魔石で使うなんて考え方をするのは人間なんだよ?」
「え……あっ!」
うん、大魔王領やそれに属する領はサクラちゃんの開発している魔道具でかなり毒されてるけど、この考え方は人の考え方。強いて言えば勇者の考え方だ。
「だから魔王が魔石で魔法を使うなんてありえない。それこそバアルみたいな変態的な奴位じゃないかなあいたぁ!うん、サテラさんの事は言ってないから!確かにゴーレムさんたち魔法陣を魔石で起動してるんだろうけど!違うから!だから俺の足踏まないで欲しいな!」
「失礼、つい」
頬を軽く膨らませてプイと顔を逸らしてる。うん、サテラさんヒールだから割と痛いんだよ!
まったくもう、と頭を撫でてあげると少しは機嫌がよくなってくれたらしい。うん、本当に女の子って難しいんだよ……。
「勇者、勇者が、龍の墓場を……?」
髭の爺ちゃんが何やら気になることをつぶやいているけど、情報が足りてない。仕方ないから足で稼ぐしかない。もう棒になっちゃいそうなんだけどね?辛いな!!
遅くなりましたOTL