表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
141/554

9話:モフモフがモフモフでモフモフって何言ってるかわかんないけどモフモフだよね?

 おどろおどろしくも清廉で美しく整えられた場所。それがこの墓所だ。

 町のはずれ、ゾンビやらグールやらが現れるのがここからだと町で噂だったから来てみたけれども、かなり清潔に整頓されている。うん、土葬じゃなくて火葬されてるからゾンビもグールも現れようもないんだよ!


「以前は土葬が多かっただけどなぁ、今は衛生的に問題があるー言うてな、送別した後は火葬してしまうのが今の風習っつーやつだなぁ」


 白髭もふもふの墓守の爺ちゃんがモフモフともごもごっている。うん、真人探偵、最初から行き詰りました!どうしようマネちゃん?


「そんなに簡単に解決していたらまず、兵の人たちが気づくと思うで?」

「ですよね!知ってた!」


 けれどもまずは見に来てみないと何とも言えなかったというのが一つ。うん、霊的にも安定してるからゾンビを連れて来てもグールになりようもないんだよ。これは墓守のじっちゃんがしっかりと管理してくれている証拠に他ならない。ふつう霊場ともいえる墓場には、少しくらいはおどろどろどとした雰囲気があるものだけど、ここにはそれが無い。理由は単純。綺麗に掃除してるだけではなく、ご遺骨へのお参りという名のお祓いを常に欠かしていないからだ。あっちの世界でもここまで見事に管理された墓所はそうは無かったんだよ。仕事人だね、じっちゃん!


「ふぉふぉ、そらそうだぁ。儂は代々ここの墓守をしておるでのぉ。誇りをもって墓守をやっておる。仕事人で当たり前だぁ」


 もふもふのお鬚を朗らかになでながらじっちゃんは、ふがぶがしている。


 だからこそ、奇妙だ。


 この町でまず一番に霊が集まっているはずの場所のここがこんなに安定しているのに、なぜゾンビが、グールが現れるのだろう?


「謎が謎を呼ぶんだよ。こういう時ににそ地球の本棚さんとかあればいいんだけど、よく考えたらここ地球じゃなかったよ!どっちにしろ使えないよ!」

「うん、たぶんドラマかアニメか何かのやと思うけど、現実と区別しよか?」


 異世界にそれを言われたらおしまいだと思うんだ、ぼかぁ!っと突っ込みを入れたところでキラリと空が光った。んー十時の方向から何か飛んでくるんだよ。……ちっこいオレンジのモフモフだ!もふん!よし、キャッチしたぞ!モフモフだよ!ねぇ、マネちゃんモフモフしてるよ!


「うん、わかったわかった。って、その子、幻獣のサラマンダーやん」

「サラマンダーと言うと火の精霊の?」

「せや、精霊たちの上位種が幻獣。フレイア様はさらにその上位の聖獣って感じやなぁ。まぁ、魔王やけど」


 なるほどなーと言いながらサラマンダーをモフる。うん、俺の知ってるサラマンダーさんは普通のトカゲさんだから、ここまでモフモフじゃあないんだよ。流石異世界!俺の想像を超えてくるモフさだ!


「もふ……」


 サテラさんまでモフモフしたそうにしている!サラマンダーさんや、いいかな?


「きゅいっ」


 ぷい、とそっぽを向いてサテラさんの顔を見ようともしてない。ああ、サテラさんが見たこともないほど落ち込んでる!?可愛いの好きだったんだなぁ……。


「ん?おめぇ、どしてあっちから出てきた」


 もふ爺……じゃなかった、墓守の爺ちゃんがもふい眉毛を上げてサラマンダーを睨み見る。


「あっちって言うとこの先の山の上?」

「んだ、ここは一般の共同墓地、そんで、奥の方に精霊様たちのご遺骨を祭ってある神殿があるんだぁ」


 うん、確かにこの子が吹っ飛んできた方向はそちら側だった。あれ、ふふふ、何かモノすっごくイヤーな予感がするんだよ。


「だから、ちょっと先に行くね?振り切るぜ!」

「あ、ちょ!?何で振り切るんやぁああ!」


 マネちゃんの声を後ろに聞いて、風に乗ってダッシュでジャンプで走って走る。長い山の階段を翔け抜けて、()()()()()()()()()()()()()を抜けて、境内へと行きつく。そう、境内だった。お墓と思ったら神社だったよ!

 いいや、そんな事よりも――いる。いた。もやもやとぐつぐつと地面の奥底から這い出るようにそれらは次々に姿を現している。

 生きし者の姿を模った(かたどった)何か。死んだ肉に無理やり魂を継ぎ足された化け物。うん、ゾンビさんだよ!


「ううん、どうしてこんなにこんなところに、ワラワラとぞろぞろと湧いてきてるのか知りたいけど、うん、目的地はこの奥っぽい?まぁ、結界さんに阻まれてバチバチって焦げてってるけど」


 どうやらこのゾンビたちはこの結界をどうにかしたいらしい。まぁ、奥に何があるかはさっき墓守の爺ちゃんが言ってた通りなんだろうけど、今は目の前の事だね!


「んきゅ!」

「そう言えばもふもふのサラマンダーさん頭の上に乗ったままだった!うん、大人しくしててね?」


 言って桜の巨木の枝で作った扇子を広げ、舞う。


 トントントンと華麗にステップを踏んでゾンビの間を駆け抜ける。適当に跳んでいるようだけどちゃんとこれも意味がある。点と点を結んだその形は北斗七星。禹歩(うほ)とも呼ばれる魔法陣なんだよ!


 霊力を編んで纏めて、さようなら?


 がうがう、うがーと鳴いて泣いてたゾンビたちは、誰かを襲うなんて悲劇を起こすことなく速やかにご退場していただく。死んでも誰かを殺すだなんて悲劇を通り越して喜劇だからね!頭の上のモフモフサラマンダーさんも何やらご機嫌のようで俺の頭をポムポムしてる。うん、この子癒されるよ!連れて帰りたいなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ