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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第三章:炎の龍と温泉と、勇者な執事でベストマッチ!
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3話:温泉地のキーホルダーのお土産ってどこも大差ないのについつい手が伸びちゃうよね?

 舗装された街並みを抜け、赤やけた山肌の中腹にあるヴァルカス領の王城へと向かう。赤茶色のレンガで敷き詰められたお城と言うよりも城塞という雰囲気だ。

 跳ね橋を渡り、お城の中で車を降りる。うん、春先だというのになんだかムシムシするよ!


「ここ、ヴァルカスは温泉地で常に地面から蒸気が立ち上がっていますので、湿度が高い領になっております」

「ちなみに、温泉バナナとかも名物なんやで!あとマンゴー?」


 なるほど、温泉の熱気を利用して熱帯で育つ果物を栽培しているのか。うん、現実世界でもあったよ!というかその技術向こうから持ってきてるよね!!


「普通に温泉街だった……。ゆかた、浴衣来てたぞ。亜人の人たちが!」


 夏凛ちゃんは頭を抱えてうんうんと唸っている。だから言ったでしょ?ここの異世界は転生者たちの手垢ツキまくりなんだって。そう考えると今日泊る宿が楽しみなんだよ!海が近いからもしかするとお刺身が食べられるかもしれないし?


「異世界……異世界だよな?熱海とか伊豆じゃないよな?」


 硫黄泉だから箱根あたりの可能性も……?


「ちなみに泉質は硫黄泉以外に単純泉に炭酸泉、塩化物泉もあるんや。一番人気は硫黄泉で、独特の香りがすごくええんやで!」


 流石出身者!詳しいぞマネちゃん!ちなみにお土産で人気があるのは……?


「今その話は置いておきましょう。出迎えの方が来てくださっております」

「おっといけない。外交モード外交モード」


 キリリと顔と心を引き締める。


「ええとその、大丈夫なん?」

「問題ありません。お仕事のときだけはまじめですので」


 うん、ひそひそと話してるけど聞こえているからね!


 招かれるがままに赤い絨毯を歩き、奥の奥にある謁見の間へと通されていく。うん、ダンジョンだこれ!外壁と同じ赤レンガに敷き詰められた内装には幾多もの戦いの傷が残されており、あ、なんだかあの黒いシミってこう、ヒトの形に見えなくも?


「焼かれたのでしょうね、跡形もなく?」


 サラリとサテラさんが言ったけど、跡形もなくってやばいな!


「う、うわさだけで聞いたんだが、ここの魔王ってのは炎の大精霊であり、爆炎の魔王龍……赤銅色のヴォルガイアドラゴンって言って。やばいくらいに強くて、勇者の魂すらも焼き尽くす炎を持ったドラゴンだから、た、戦いは挑まないのがて、鉄則だって……」


 プルプルと夏凛ちゃんが震えてる。ん?怖いの?


「こ、怖くねーし!た、ただ、その武者震いだぁしぃ!」


 なんだか涙目でやけくそな感じだ!なるほど、それほどまでの炎を操る龍なわけだ。

 俺も話だけは聞いてるぞ!様々な公共事業を手掛け、敵意のない勇者から様々な情報を得てこの地を開拓し、温泉地リゾートに鉱山の開発、それに伴う製鉄技術の確立を行い、土着していたマネちゃんたちドワーフたちの協力を得て工場産業も発展して、荒れ果てていたこの地を豊かにしたすごい魔王だって話だ。


「なんだか聞いている情報が真逆ですね」

「そりゃあ真逆で話を聞いているからだよ。夏凛ちゃんは勇者側。俺は魔王側だからね」


 なるほど、とロベリアちゃんが納得の相槌を打つ。

 勇者側からしてみれば恐ろしい龍王も、魔王側からしてみれば、領と領民の事を考えている偉大なる龍王となるわけだ。


「それで、なんでこの領に来たんだっけ?」


 ふふ、夏凛ちゃん話何も聞いてなかったね!


「というか、今時の女子高生に難しい話されても分かんねーよ!」


 年齢的には俺と変わんないじゃん!!と言ったらほっぺをつねられた。痛ふぁいふぁ!


「こほん、もともとうちの領には魔鉄鋼の鉱山はあるんだけど、大規模な製鉄技術が発達してないから、別の領に輸出して、そこで製鉄したのちに鋼材とか部品になって戻ってきてるわけなんだよ。ここのヴァルカスはその技術がかなり突出している領で、その技術供与があればいいなと言うのが一つ。無理ならばさらなる協力を仰いで輸出枠の拡大をしたいのが一つ。あと、単純にどこかの馬鹿魔王が結んだ契約が無茶苦茶だったからきちんと契約を結びなおしたいってのもあるかな!」

「なるほど、わからん!」


 むつかしかったかー!仕方ないね!


「要は魔王バアルがこの領と締結していた条約がおかしいから、ちゃんとした条約に直して欲しいと言いに来たんです」

「なるほどなー」


 あれ、サテラさんの説明でわかるの?おかしい、おかしくない?!


「真人様の話は長くてわかりづらいです」

「せやなー。最後だけ言えばよかったんやけどわかりやすく話そうとしてわかり辛くなってるんやな」


 おかしい。俺的にはかみ砕いて話したつもりだったんだけどなぁ。俺たちは戦うことでしか分かり合えないとかそんな悲しい間柄じゃあないはずなんだけど!どこかの大魔王と違って?


「こちらが謁見の間になります」


 お城のメイドさんに促されるままに謁見の間に入る。大きく開かれたそこは、謁見の間、というよりも火口というか、マグマが滾って迸る火口だった!あ、お空が見えるよ!

 うん、というか外と中との気温差がやばいんだよ!あつぅい!!



『――よくぞ参ったな、オウカ姫の使いよ。いや、勇者真人と言った方が良いか?』


 そこには見上げるほどに巨大で、圧倒的な威圧感を放つ鎧のごとき鱗に大きな翼を持つ赤銅色の龍魔王がそこにいた。


 マグマの上だけど熱くないのかな!!

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