魔王姫と姫騎士たちと女子力と7
時間をかけて顔に描かれた化粧を洗剤で流し落として、湯船につかって息を吐く。ああ、やっぱりこの露天風呂は最高に気持ちいいなぁ。
……あのバカに裸みられて普通に接されたのはいまだに、うん、少しトラウマだけど!
ふふ、どうせあるはずのものが無いよ!いや、少しはあるんだよ!少しは!ぐすん。
「ん、なんやライガさんもお風呂に来てたんか」
入ってきたのはマネッチアと椿さんだった。
うん、二人ともスタイルがすさまじくいい!というか、マネッチアはボクよりもかなり背が低いのに毬玉が二つくっついていた。ぺたぺた。ふふ、いいんだ……。
「でも獣族のライガはんがお風呂好きってもいまさらやけどビックリやなぁ。」
「そういわれても好きなものは好きだからいいんだよ」
小さいころからちゃんと入ってたから習慣なのだ。ちなみに獣族がお風呂や水浴びが苦手な種族が多い理由は耳にお湯が入ることがあるからそれが嫌だからという理由だそうだ。ううん、ボクからしてみれば注意すれば入らないし、そもそも毛が深い種族なんだから入らないと、その、匂いが……ね?
「そうなると脱衣室にあったあのフリフリって、ライガさんの……?」
「それまたびっくりやなぁ……」
「うん、あのルナエルフ母娘に弄ばれた結果だからね!ボクの趣味じゃないの!」
可愛い服だったけど!確かに真人に可愛いと言ってもらえたんだけど!
「え、気づかれなかったんか?そらありえんなぁ」
「それなのにお父様は見た瞬間に気づくし。はぁ……ぶくぶく」
ぶくぶくと湯船に沈みながらため息をつく。なんだって気づいてくれないんだよアイツは。ボクだってちゃんと女の子なんだぞ!そろそろちゃんと気づいてくれないと、その、悲しいというか、寂しい。
「んー、つまるところライガはんは真人はんのことが好きなんやね!」
「は、はぁああ!?な、なんでそうなるんだよ!どうして、ボクがあんなやつのことなんて」
そう、そんなことあるわけがない。アイツにはいっつもひどい目ばかり味合わせられるし、まぁ、その、格好いいところとか、頑張ってるところとか、いいところはたくさん知ってるけど、それ以上にムカつくところだらけだし!
「それがラブ以外の何なのでしょう!ああ、愛とはなんと素晴らしいのでしょう!」
「だから違うって!というか話にスッと入ってこないで欲しいな!」
お風呂場にルナエルフ母娘が追加で入ってきた。サラはそこまでじゃないけど、ミラさんはかなり大きい。ふふ、どちらにせよボクよりも大きいんだけどね。いじめかな!!
「お母様、ライガさんが困られてるじゃないですか」
「ええ~。だって、恋する女の子は応援しないと!それで、その様子だと真人さんに逢えたみたいねー
。反応は、反応はどうだったの?」
鼻息が荒いよミラさん!うん、えっと、その、かわいいとは言ってもらえたんだけどね……。
「え、ライガさんだって気づかれなかったんですか?」
「言わないで。とっても悲しくなるから!」
化粧を少しして、エクステを付けたくらいなのになんで気づかれなかったのかな!
「んー、それだけさっきのライガさんが可愛かったってことね~。ふふふ、問題は次ね、次!」
あれ、なんだかミラさんが話を聞いてくれてないぞ!それ以前にボクだって気づかれてないんだよ?
「ふむ、そうですね。確かにその通りです。ですが、そのままで押し通して、行くところまで行ってみるというのも一つの手かもしれません」
「え、どゆこと?」
ボクの頭にはハテナだらけ。え、つまりあの姿で真人にまた会うってこと?はは、いや、まさか。
「なるほどなぁ。話の流れを聞く限り、別人やー思われてるみたいやし、うまいこととりなして側室に入るわけやなぁ。そんで、行くところまで行ったところで……」
「おまえ、ライガだったのか……的な?ええやん、素敵やん!」
ううん、まって、待とうか!それって行くところまで行ってってところが気になるかな!それってその、恋人になった後の後のところまで行ってないかな?
「だって~、そうじゃないとライガさん後戻りするじゃないの」
「真人さんもですね。後戻りできないところまで来たところで気づかせるのがミソです。ふふふ、どこまでだませるのか、腕がなります」
ふふふ、みんな話を聞いてくれてないな!ボクはそもそも真人のことなんて何とも思ってないんだよ?まぁ、その、悪友というか、気の許せる友達って感じ?
「んーそれなら女だって気づかれない方がいいんじゃないん?女の子だったーってわかったら真人さん、きっと今まで通りじゃなくて線引きすると思うで?」
「え、で、でも……」
マネッチアの言葉にボクは思い淀む。でも、だって、ボクと真人は……。
「それでも女の子だって思われたいー言うんやったら、それは間違いなく恋やー思うえ?ライガはんの気持ちはどうなん?」
大きな胸をぎゅうと抱えて椿さんがにっこりとほほ笑んだ。
ボクの気持ち……。
「まぁ結論は急ぐことは無いと思うけどなぁ。うまいこと恋人か婚約者になれるんやったらあとからいくらでも何とでもなるやろし?ライオネル様にお願いすれば上手いことねじ込んでくれるんとちゃうん?」
「いや、それは、最終手段だし……。その前にちゃんとボクを女の子って認めさせて、それで……」
「「「「それで?」」」」
にやにやと四人がにやにやとボクを見つめている。
そのあとに紡がれる言葉をきっと、おそらく、勘違いしたんだろう。そんなんじゃないから!だから、ボクは、ボクは……アイツと……あれ?なんか、目がぐるぐると……?
「あ、ライガさん!?」
「大変~!お水!お水!」
「それよりタオルを!」
「あー、いっぱいいっぱいになってもーたんやなぁ……」
ボクは、ただ、アイツのそばで、バカ言って笑えれば、それ、だけで――
大変、とっても遅くなりました。
販売業のGWは地獄だなって!申し訳ありません!!OTL