魔王姫と姫騎士たちと女子力と4
女子力。それは女の子が結婚するときに必要になるといわれているもの。
恋人のまーくんは、きっと、それを、求めているんです!
「とか姫さんは言うてるけど、実際のところはどうなんやろ?」
「せやなぁ、うちもそのジョシリョク?いうんは気になるけど、真人はんがそれを姫様に求めてるかー言うたら……微妙やろなぁ」
焼きたてのサクサククッキーを片手にマネッチアちゃんと椿さんがうんうんと唸っている。ちなみにもう一人同席しているエルゥーシーちゃんは両手にもってサクサクと子リスみたいにクッキーをほおばっています。お砂糖たっぷりのミルクティーがお気に召してくれたようで、お昼過ぎにお茶会を開くときは大体参加してくれます。うん、マスコットみたいでとってもかわいいんです!
「そもそもな話、姫様にジョシリョクっているんか?」
「い、いりますよ!私だって女の子です!女の子の力と書いて女子力です。ちゃんとできなければまーくんの立派な奥さんになれませんから!」
ふんす、と胸を張って私は答えます。お料理はそれなりにできますし、お洗濯とお掃除はアレですが、裁縫は得意ですし!おしゃれは、うん、こう、漫画とか、アニメ的なので……?
「い、いろんな意味で奇抜な恰好になりそやから、あにめとかまんがを参考にするんはやめときや。せやのうて、姫様はいうて将来は魔王となってあのお城に住むんやし、真人はんは執事やで?なにも姫様がジョシリョクを鍛えんでも真人はんやうちらみたいな部下が全部こなしてくれるんとちゃうんか?」
「た、確かにその通りですけど、それでは私がこんな風にクッキーを作ったりできないってことじゃないですか。それは嫌です。せっかく、誰かに食べてもらえれるようになったんですから」
そう、やっとこうして女子会を開けるようになったんです!いつも独りぼっちで中庭で食べていたクッキーも全然味気なくないんです!毎日とっても楽しいんですよ?パリポリ。
「うん、食べながらしゃべるのはアカンな。しっかし女の子らしさなぁ。アタシは代々鍛冶屋の家計だったし、お父ちゃんの仕事の手伝いとかしてたからそういうのとは縁遠いなぁ。可愛いものとか持ってるのは……ストラップくらいやな」
「ん、可愛いの持ってるやん。けんど、それどうしはったん?近場の土産屋では見かけんけど」
「ああ、これは自作なんよ。種族柄というか父ちゃんの仕事を手伝ってたせいか細かい仕事は得意なんよ」
ここをこうしてと、どうやらその可愛いストラップはギミック付きらしくスイッチ一つでいろいろと遊べる仕掛けになっているらしいです。あ、表情が変わるんですか!?私も欲しいです!
「ふふふ、これはアタシが作った一点ものなんよ。作ってもええんやけど、今度でええから姫様のこのクッキーのレシピを教えてくれへん?」
「それくらいでいいならもちろん!」
「ああん、ずるいわぁ!うちかて姫様のクッキーのレシピ知りたい!あ、でもこの前のパウンドケーキも美味しかったし、ううん、どちらも捨てがたいわぁ」
『うま……えへ……』
うふふ、そんな風に言ってくれると照れちゃいます!あ、これドライフルーツをチョコで包んでみたんです!どうぞ!
「ふぁああ!これもおいひい!」
「これすごいわぁ!ドライフルーツなのにサクサクや!」
「ふふふ、魔法でフルーツの水分を抜いてサクサクにしてるんです」
実は漫画で見たフリーズドライという手法が気になって魔法で再現できないか色々と試していたんですよね。氷魔法は得意でしたし、実は思わぬ副産物だったりするのはここだけの話だったりします。
「でも、これだけできるんやったらジョシリョクなんていらんとちゃうん?」
「やなぁ。こんなに可愛いお菓子作ってるんやし、気にせーへんとええと思うんやけど」
二人はそういうけど、違う。違うんです!女子力ってもっとキラキラしてないといけないんです!というか、お掃除とお洗濯は苦手ですし、ファッションとかお化粧とかはメイドさん任せでしたし、そもそもこの魔眼があるせいで目のメイク関係は、その本当にまったくしたことが……。
「ううん、その魔布も可愛いん作ってくれたらええんやけどなぁ」
「布っちゅーか皮ベルトに近いしみたいやし、魔法陣だらけでおしゃれとは、ううん……」
困った顔で椿さんもマネちゃんも頭を抱えています。はっ!つまり、この魔布が可愛くなれば一気に女子力が……!
「それはあるかもなぁ。でも真人さんとは面と向かえるわけやし、まずは普通のメイクができればええんやけどなぁ」
「普通の……」
それはきっと理想。だけど、まだ魔眼を使いこなせていない私の顔をフルでメイクできる人は今のところ、いない。うん、お父様じゃメイクできないですし……。
「でもいつか見てみたいなぁ、姫様の素顔」
「せやなぁ。真人はん曰く、超ぱっちり目でひとめぼれするレベルで可愛いー言う話やからな」
「そ、そんなこと無いです!普通、普通ですよ!」
そう、きっとまーくんが私の事を過大評価しすぎてるんです。だから、少しでもその評価に見合えるようになれたら私は幸せなんです。
それが、私の求める女子力の一つなんですから!
「たすけてぇえええ……」
あれ?どこからかライガさんの声が、聞こえたような……?
ううん、気のせい……でしょうか?