表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:魔王姫と姫騎士たちと女子力と
123/554

魔王姫と姫騎士たちと女子力と

 青空の下で美しく咲き誇る大魔王城の桜は今日も美しく咲き誇り、塔にある空中庭園の中央にある東屋からもよく見える位置にあり、塔の下でよく開かれる花見と比べるとやはり迫力が全く違うように思える。

 うん、姫様がこんな調子じゃなかったらもっと楽しめるんだけどなぁ……。


「まーくぅーん……」


 テーブルに突っ伏したまま目を隠している魔布から涙をほろほろと流しながら大きな、とっても大きなため息をついている。うん、すでに真人の奴が領にこもりきになって一週間ほどが経っているから、そろそろ姫様も我慢の限界が来ているらしい。でも今アイツが領を抜けると言う事は即、領の運営が立ち行かなくなると言う事になる訳で、残念ながらもうしばらくは缶詰してもらわないと困る。


「オウカ姫様、気持ちは分かりますが我慢されてください。真人が領に残ってくれなければ今の領は立ち行かないのですから」

「それではその、私が行けばいいのだと思うのですがライガはどう思うんですか?」

「それは、その……」

「元々あそこは私の領な訳ですし、そう!あそこに私が住んじゃえばいいんです!ふふふ、そうすればまーくんと毎日逢えますし、私もお仕事がはかどりますし、それがいいと思います!」


 確かにそう、その通りではある。けれど、だけど、姫様自身もわかっている筈。


「姫様、年齢が二十になるか、姫様がその眼帯を使わずに過ごせるようになるまではここで過ごすようにというのが大魔王様とのお約束でしたよね?」

「そう、ですけど……その、この前少しだけは、使いこなせました、し……」


 ぶぅ、と口を可愛らしく尖らせてオウカ姫は言葉尻が小さくなりながらブツブツと呟く。


「確かに戦いに使えていました。けれどもあれは使いこなしたという訳ではなく、単に使っただけです。それではダメなのですよね?」

「ふぅぅ、そう、なんですけど、なんですけど!うぅー」


 また机に突っ伏してサラサラの長い銀髪がテーブルに広がる。

 ううん、この人は本当に子どもっぽい。まぁボクや真人がここに入るようになるまでは、ほとんど一人で過ごしていたのだから、話しやすいボクや真人にわがままを言いたくなるのは仕方ないのであるけれど。

 うん、ボクの話すことはちゃんと聞いてくれるし、愚痴みたいなものだから全然気にならないし、可愛いし、親しみやすくていいんだけどね。はぁ、本当に女の子らしくてすっごくうらやましいなぁ……。


「え、なんでライガが落ち込んでるんですか?」


 オウカ姫様は小首をかしげて頬に手を当てている。うぬぬ、仕草から可愛い!


「いえ、その、姫様は女の子らしくてすっごく可愛くて羨ましいなーと、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ思いまして……」


 騎士としてのボクの格好は騎士の服装にサクラ姫様の紋章の描かれた魔鋼でできたプレートアーマーを付けた軽装。戦士としては立派なのだけど、うん、起伏が少ないせいか、自分でもああ、男の子かな?という出で立ちだ。


「そうですか?私から見ればライガも可愛いと思うのですが……」

「そう言ってくれるのは姫様くらいです。はぁ……椿さんからは可愛らし男の子みたいやーっていつもからかわれますし、サンには弟ができたみたいだとか言われるし、そもそも真人なんてボクの事未だに男だと思ってますし!!」

「ああ……」


 納得したのか姫様はそっと顔を逸らした。

 ううん、普段の服装もダメなのかなぁ。可愛い服とかに合わない気がして大体スパッツとシャツで過ごしてるし、外に出る時はほとんどジャージだし?料理はできないことはないけど、大体は社食ですませて、洗濯に掃除は……。


 ……はっ!ぼ、ボク、まったく女子力が、足りてない……?


「じょしりょく。そういえば漫画なんかで見たことがありますね。ええと、エステとか、ネイルとかやる事ですよね?」

「基本的には健康に気を使っていて、家事一般ができ、身だしなみが清潔で部屋の掃除までが完璧にできていて、可愛いものが好きだったり、ファッションなんかにも気を使っているのが女子力と言われるものです」

「……は、ハードルが高くないですか!?」


 あ、そういえばオウカ姫様も掃除が……。


「あれは、その、どこに何があるか私は把握できてるからいいんです!その、お洗濯ものはきちんとまとめて出してますし……。自分で洗ったことはありませんが……」

「まぁ、姫様に洗濯はさせられませんしね」

「そう言われるとそうなんですが、まぁ、お料理とお裁縫は得意ですよ。これはお母様が教えてくださいましたし」


 確かにそうだった。この前もボクら姫騎士のみんなに差し入れとして美味しいカップケーキを作ってくれていたし、姫様の入れるオリジナルブレンドのハーブティーはかなり美味しい。あれ、姫様も女子力高くないかな?


「とはいうものの、ですよ?私、お化粧もできないし、ファッションなんて全くわからないので……。今まで見てきたものなんて、異世界の漫画かアニメかゲームか特撮くらいですので」

「それも色々とアレですけどね!」


 異世界のモノは参考にしたらヤバい気がする。うん、前にみたティーン向け雑誌はヤバかった!なんで、なんで真っ黒な顔にケバケバしいメイクをしてるのがおしゃれと言えるんだろう!ボクにはどうにも理解ができないよ!


 兎も角、早急な女子力の上昇が必要なようだ。

 あの莫迦(真人)にボクが女の子だって認めさせるためにも!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ