41話:ゲームとかで土管からせりあがってくる仕組ってすごく気になるよね?
別れの朝。
旅の終わりとは切なく悲しきもの。後ろ髪を引かれることは多々あれど、後に残るのは楽しい思い出ばかり……あれ、かけらもないよ!おかしいな!
長いアマダム駅。ホームに停まった来た時と同じ列車にサクラちゃんと姫騎士のみんなが乗り込んでいく。トレーラーでここまで移動しようと思ったんだけど、道がガタガタになってたからロボに乗りながらここまで来たんだよ!うふふ、豪華な凱旋だったな!サクラちゃんがも大はしゃぎだったんだよ!
「兎も角短いけどながーい旅行もこれで終わりなんだよ!ああ、やっと帰れるよ!俺、我が家に帰ったらゆっくり休みながらゲームをしながらサクラちゃんといちゃいちゃするんだ……」
「何言ってやがる……」
「ひょ!?」
振り向くとヴォルフ……じゃなかった、ケロさんがいた。んん?何の用かな?俺は今から帰るんだよ?片道三時間くらいで?
「まだ書類のターンは終わっていないぞ?」
「そ、そんなバカな!あれだけ、あれだけやったんだぞ!終わったはず、終わらせたはずじゃ……」
そう、昨日徹夜でお仕事を仕上げたんだよ!明日大魔王城に帰るっていうからがんばったんだよ!だけど、え?終わってないの?
「いや、これから数日間は缶詰ですからね?ふふ、逃がしません、逃がしませんとも。せめてこっちがある程度落ち着くまでは……。書類以外にも各村々でバアルがやっていなかった公共事業の視察と確認と税制の見直しから諸々がモロモロと大量に残されているんですから、貴方だけ帰るなんて駄目です!ダメダメです!」
玲君に長ーいセリフで怒られた。うん、わかっているからサテラさんに丸投げしたんだけどなー。え、ダメ?
「ダメです。せめて各村々の訪問だけはしていただきます。これもオウカ姫様のためですので」
ぐわー!サテラさんにそれ言われちゃったよ!それじゃあ帰れないじゃあないか!確かにその通りだけども!そうした方が各方面の村の人たちの印象が良くなるからした方がいいんだけども!
「そういう訳で出発進行!私・仮頑張ってください」
『おまかせください、サテラお嬢様』
そういって、サテラさんの部下的なAIになったグルンガストさんが列車に乗り込んで行った。……AI!!しかもお話してたよ!
「私の意識を模したAIになっています。そういう訳ですので、お仕事頑張りましょうね?」
サテラさんがにっこりとものすごくいい笑顔だった。そこに板野は紛れもなく屈託もない本当に普通の女の子だった。
「そういう訳で頑張ってください。私は書類仕事はできないのでお茶くみなんかをしてますから」
「にゃ、右に同じく?」
ロベリアちゃんとクロエさんが首をかしげている。名目上、クロエは俺のメイドさん、というか部下になった。メイド服は着せないよ?うん、扱い的にはくっころ三人娘と同じだしね!
「そろそろそのくっころってやめて欲しいなぁ」
「最初に言ったセリフがここまであとを引くなんて……」
「ど……まい?」
気にしたら負けなんだよ!勇者三人娘じゃインパクトが少ないしね?昨日玲君の部下に勇者娘が追加で増加しちゃったから、わかりやすい単語が必要なんだよ!
「そういえば、その勇者っ娘たちはどうしたんだ?」
「あはは……今はこっち側の事情とかをヴォルフさんの妹さんのパティお姉ちゃんにお願いしているところですね」
「確かにおばば様の風詠みを継いだんなら適役なんだろうが、ううん、あいつだからな……。変なこと吹き込んでないといいんだが」
ケロさんが頭を抱えていた。どうかな?俺が聞いた時は玲君の可愛さと格好良さを一生懸命説いていた、というかなんでかサテラさんが撮ってたサテラさん救出シーンを延々と観賞というか鑑賞してた気がするけどな?
「望遠で捕らえていた村のシーンを含めて永久保存版にして欲しいとのご要望でした」
「サテラさん、言い値で売ってあげてね」
「やめろぉ!妹を破産させる気か!!」
そこはパティさん次第かな?頑張れパティさん!うとうと玲君の映像も特典で入れてあげるから!
「いつの間にボクの寝姿なんて……」
「なんだ、その、がんばれ……」
ケロさんがぽんぽんと玲君の頭を撫でてあげている。うん、良いシーンだ。撮っておいたから後でパティさんに見せてあげよう!
「売るんじゃねーぞ?」
「ダメですからね?」
先にくぎを刺された。ダメなの?俺今月ピンチなんだけど?ダメ?……ダメらしい。くそ、なんて時代だ!
ゆっくりとホームから動き出した列車にゆらゆらと手を振って見送る。すぐに帰るからね!きっとすぐに帰るから!
数日後、真っ白になって動かなくなった俺が執務室で発見された。死因は働きすぎだった、との事。うん、疲れたよパトラッシュ……。
「で、ハイパームテキはできたのかの?」
いつもの玉座でいつもの如く膝を組んで大魔王がこちらを見下ろしていた。
「俺パソコンからっきしだから無理!というかお仕事だからね!お仕事してたんだからね!」
「むぅ、そうか……」
大魔王がとっても残念そうな顔をしていた。大魔王もお仕事しようね!と言ったら鼻で笑われた。あとでアリステラさんに言いつけておこう!
というか作れるもんなら欲しいよハイパームテキ!あれば目の前の大魔王とも戦えそうだし?神の恵みでくれないかな?ちょーだい?……返事はない。だよねー。
「そういう訳だから、久々にやろうか?ほら、噂によると蛇とか蛇とか蛇とか?召喚したらしいじゃない?もしかするともしかしてだけど、ユナイトベントからのファイナルベントとかやったのかな?やったんだよな!」
「やりたかったけど、暇が無かったんだよ!というか水が無いと召喚も何もできないと言うか木札ほぼ使い切ってないからまって、待とう!ああ、せめて聖剣を!アンサーさん!!ジ・アンサーさん!や、やっぱり来ねぇえええええええ!」
虚しくも悲しい残響が帰ってきた大魔王城に響き渡り、俺はまたその命を終えた……。死に過ぎだよ!!
これにて2章は完結となります。
ご覧いただきありがとうございました。
次から挿話を幾つか挟んで3章へと参りますですはい。