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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第二章:古代なロボと勇者な執事。ロマンだっ!
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39話:黒歴史って振り返ると黒く塗りつぶしたくなるから黒歴史っていうんだよね?

 結末。終局。終焉。

 物語に必ず終わりが来るように、文明にも、世界にも終わりがある。

 どんなものにも死という確実な終わりがあるように、生き物には必ず死と言う終わりがあるのだ。

 では、終わる事が出来なくなった勇者とは何なのだろうか?


「んん、おもちゃ何だろうね。終わりのない神様の。ほら神様ってながーく生きてるから暇なのよ。だから自分と同じ終わりが無い勇者なんてものを作ってずーっと楽しもうとしてるんじゃあないかな?」


 真人様はため息をつきながらそう言った。

 なるほど、それは確かに一理あるかもしれない。では、私はどうなのだろうか?


 すべてが終わり、古代遺跡に今一度立ち返って私は自分を顧みる。

 結論から言えば、私は勇者だった……らしい。


 記憶はなく、記録でしか残っていないがノイズだらけの映像データに私が手を振っていた。


『このデータが流れていると言う事は、私が新しい私として目が覚めている頃だと思います。今あなたは幸せですか?それとも不幸せですか?もしくはそのどれでもなくただの人形になり果ててしまっていますか?私は幸せであってくれたらと思います』


 自分であって自分でない。まるで生き別れの姉妹を見つけたような気持になる。


『私の生きた文明は滅びました』


 けれど、その顔は泣きそうで。


『だから、次の文明が起きるまで。私は眠りにつきます』


 悲しそうで。


『私が私でなくなることを覚悟するのはこれで二度目。戦争で死ぬのも二度目』


 私は彼女につられて涙を流していた。


『新しい私。新しい貴女。きっと幸せになって。残した力でまた勇者になってもいい。魔物たちの味方をして魔王になってもいい。ただ、貴女のしたいように……生きて。私をこの世界に召喚した神は滅びました。だからもう、ナニモノにも縛られることはないから――』


 最後に彼女はこう残した。


『そして、幸せになって、幸せに死んでください。もう、貴方は死ぬことができるから』


 勇者であるというのに死ぬことができる。そう、言い残して。


「つまり、私たちがまた死ぬには、私たちを召喚した神様を殺さないといけないって事?」

「サテラさん……この映像の勇者が言うにはそうなんだろうな」


 林檎さんと夏凛さんが神妙な顔で映像を繰り返し見ている。彼女たちにとっては重要なこと。何せこの時代に召喚されてしまった勇者なのだから。


「勇者なんて言ってみればゾンビだからね。ゾンビなのにぴちぴちで生命活動のためにご飯食べないといけないのに背が伸びないのはいかんともしがたいのがどうもね」

「体重は増えるけどな!なんで背は伸びないのに体重は増えるんだよ!」

「夏凛の場合、胸が……」

「むね……せいちょうき……ぐすん」


 髪も爪も伸びるのに老化だけはしない。全くもって生命という輪から外された存在である。勇者をやめたらしい私はナノマシンで勇者と同じように老化をすることはない。けれども死んでしまえばそれで終わり。いわば、疑似勇者と言えるだろう。勇者をやめたと言うのにどうして疑似勇者となる必要があったのだろうか?


「きっと、願いだったんだよ」

「願い、ですか?」

「そう。きっと前のサテラさんはどう足掻いても幸せになれなかったんだ。だから、自分じゃない自分に幸せになって欲しくて自分の持てる技術の全部を注いで次の自分に繋いだんだ」


 だから君は君の道を行けばいい。そう言って真人様は私の頭を撫でる。

 私の幸せとは何だろう?疑問は尽きることはない。私の幸せのために技術を遺した。つまり、私を起点に急速な技術の発達が起こるようになっていたのだ。

 そう考えるならば、今のこの体が目覚める前に意識だけがグルンガストとして起動したのも納得がいく。


 つまりは文明発展のトリガーが私だったのだ。


「確かにそれなら今のちぐはぐな技術の発展も納得が行くんだよ。サテラさんがいる大魔王の周りは全力全開全速力で発展しまくってるけど、林檎ちゃんたちに聞く人の国は俺の国で言う産業革命に毛が生えたような世界観で、同じ世界なのに別世界の異世界観なんだよ!うん、こっち側で良かったなって!」

「魔導……家電、便利……。オウカ姫さん、ぐじょぶ……」

「頑張って設計しましたから!」


 えへんとオウカ姫様が胸を張る。確かに彼女の助力はとても大きい。私の趣味の魔術的な設計の手伝いを手伝ってもらうついでに便利な家電の案をだすとさらさらつらつらと便利なものを生み出してくれた。

 まだ世に出ていない魔導家電はいくつもあるがどれもきっとヒットするに違いない。特に魔導レンジは素晴らしいモノだ!まさか今回の最後に放ったサテライトバスターの技術を応用転化したとは思えないなって。


「電子レンジ……。なるほど、だから余波でビームの周りの虫達が吹き飛んで言ってたのかぁ。こう、すぱぱぱーんて」

「なんだか僕が小さいころに見たアニメでありましたね……。さい、サイコロだったかな?」

「あれ?玲君……?いや、まさか、そんな……アレは俺の小さいころのアニメのはずだし……」


 真人様が頭を抱えて目を白黒としている。そんなに驚くことだったのだろうか?


「それで、この遺跡はどうするんだい?」

「真人様のお役に立てるために再建します」


 今自分が持っている技術よりも更に上の技術が使われているのは間違いがない。自分の記憶が頼りだけども、記憶が無いから手探りだけども!


「なるほど、実験していくんだね!ボトルを用意しないと……はっ!壁を作るのかな!」

「まって、まーくん!その前にこの世界に火星もパンドラな箱もありません!」


 うん、何を言ってるかいまいちわからないけどもオウカ姫様と真人様が楽しそうならそれでいいだろう。けれどもこれからが大変なのは私だけではない。というか、真人様が一番大変じゃないかな?

 バアルがやってきた諸々の処理とか、後始末とか、再建とか?


「大丈夫!玲君(優秀な文官)を俺はゲットしたからね!」

「え?ええ!?」


 かわいらしい少年は目を白黒させてあわあわしている。

 頑張れ少年!だけど、きっと、たぶん、というか、間違いなく?少年だけでは手に余ると言うか潰れて流れてあふれ出ちゃうだろうから、結局は真人様が大変になるのだろう。

 うん、私もできる限り手伝うとしよう。どうやら私は天っ才!美少女物理学者☆のようであったらしいのだから。映像記録データのファイル名にそう書いてあったそうなのるけど、ううん……美少女はいるのかな?ねぇ、どうなの昔の私!

おそくなりましたOTL

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