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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第二章:古代なロボと勇者な執事。ロマンだっ!
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38話:胡蝶の夢って聞くと幻想的だけどちょっと物悲しいよね?

 壊れ果てたブラスティアカノンは粉々に砕け散り、その衝撃でグランブラスティアは膝をつく。流石巨大ロボは頑丈だな!グランブラスティアの壊れたハッチの中のサクラちゃんもサテラさんも他のみんなも無事だ!うん、本当に良かったよ!マジで。いやマジで!


『くくく、これで貴方たちの手は無くなりました!四方に部下を向かわせていたようですが、その部下たちの努力も全て無駄に終わるのです!』


 勝ち誇ったようにブンブンと魔王バアルは羽を震わせる。んー?よく聞こえないな!やっぱりぶんぶん羽音がうるさいんだよ!


『そう、後は貴様だ。貴様さえ倒せば――』

「うん、俺を倒せば終わるのかもしれないね?だから、援軍を呼ぼうかな!」


 最後の木札をグランブラスティアの後ろに下ろされていた小さいコンテナに最後の木札を投げて突き立て印を切る。


急急如律(きゅうきゅうにょりつ)――!」


 巫術/五芒結界――


 溢れ出した光は五芒の星を瞬く間に描き出し、虫共を一網打尽にその中へと押し込める。木札で作った急ごしらえの結界さんだよ!


『なんだ、これは!』

「うん、俺の故郷で古来からある結界なんだよ。全部とはいかなかったけどうまいこと結界内に虫達を押し込められたかなって?」


 そのためにみんなに散らばって走ってもらったんだよ。いやぁ、みんなよく頑張ってくれたなって?


「疲れた……」

「うぅ、虫汁が、虫汁が!」


 あ、ライガーとサンスベリアさんもサクラちゃんが作ってくれてた転移符で帰ってきたんだよ!虫汁まみれでテラテラでなんだかエロ……くない、くない!ライガーは男、男だよ!


「不憫にゃ……」

「ふふ、ホンマ真人はんはおもろいわぁ」


 クロエちゃんに椿さんもご帰還だ。あれ、なんでジトなのかな?こんなの絶対おかしいよ!



『だがしかし!結界を作ったところでどうなると言うのでぇす!』

「まぁまぁ、まだこれからだよ?」


 バアルからの攻撃を躱して避けて飛び越える。ふふ、当たらなければどうという事はない!さっき当たったけど?痛いな!


「援護を!」

「わかっています!」

『怨――』

「大いなる風よ――」


 移動する俺をミラさんとサラさんに苺ちゃんとエルちゃんの魔法組が魔法と呪を放つ。それでもやっぱり効いてない!流石魔王だ、何ともないぜ?うん、強いな!

 けれどもお陰でたどり着けた。最後の木札を突き立てたコンテナの上に降り立って、先ほど魔王からかき集めた魔力を最後の木剣に込めに込める。


 第弐の秘術/叢雲の剣――


 魔王龍へ撃ち放ったソレとはけた違いに低い威力だが今回はこれで問題ない。だってこれ奉納品だし?


「うん、色々と祝詞もあるんだけど面倒だけど割愛するんだよ!」


 パンパンパンと手を叩き頭を下げて、その名を喚ぶ。


「我が(こえ)に応え賜え、古なる荒振神(あらぶるかみ)――八岐大蛇(ヤマタノオロチ)よ!」


 禁術/奉納の秘儀/八岐大蛇――


 これが俺の今回の精一杯かなって?


 コンテナに詰め込めるだけ詰め込まれていた坑道のアリたちの大量の魔石があふれんばかりに光り輝き、辺りに地鳴りが響き渡く。魔物たちの溢れる五芒星の中心点、。そこに間欠泉の如く幾筋もの水柱が上がり、その形は成してゆく。


『貴様、いったい何を――!』

「だから喚んだんだよ、とっておきの援軍を……ね?」


 あふれ出した大量で膨大な水は坑道の時に呼び出した(みずち)など及ばない巨大な八つ首をもたげ、真っ赤に染まるその眼を見開いた。


『――ほう、久々に呼び出したかと思得ゑば』『げに、摩訶不思議な』『虫はまずいから嫌いなのだがの』『食わず嫌いはいかんぞ?けんこーに良いらしいからなぁ』『真人や、今何時かの?』『そのボケは流石に流行らないかなって?』『ふふ、いい男になったのう』『で、こいつらどうすりゃいいの?』


「全部平らげてって言いたいところだけど悲しいかな依り代は異世界の水だし、持って三分のカラータイマーがピカピカさんだから、思いきり思う存分ストレス発散に暴れまわってくれればいいかなって?」


『ふむ、かような事で吾らを喚ぶとは』『真、ゆかしきことよ』『食べなくても良いのなら』『けんこーの為だ。バリボリ行こう!』『真人や、大きくなったのぅ。ところで、今何時かの?』『伍乃(いつの)がボケて……?』『もう、せっかちなんだから』『とりあえず巻いて行こう!蛇だけに!』


 山をも越える八首の巨大蛇はズルリとその巨体をうねらせ虫共を蹴散らし、食い散らし、蹂躙してゆく。昔も喚んだこともあるけど、相変わらずに姦しい姐さんたちである。


『なんだ、何なのですあの魔物は!?』

「魔物じゃなくて神様だよ。荒振神様だからすんごいあらぶって粗々でアラアラだけど、割と小さいころからお世話になってるお蛇様な女神様だよ?にょろにょろろ?」


 ヤマタノオロチとは洪水の擬神化と言われていて、暴虐に理不尽にその総てを喰らい、奪う。でも女の子だから邪神様とか言ったら泣いちゃうから、言わないであげてね!本当はちゃんと転生して女神になってるから!


「八岐大蛇を召喚ってねぇ、なんだかこっちが悪っぽくない?」

「ううん、蛇の時点でねぇ……」

「にょろ……ニョロ……」


 ううん、くっころ勇者三人娘には不評のようだ。姫騎士のみんなはお口あんぐりだし、サクラちゃんも苦笑いしてるよ!おかしいな、格好いいよヤマタノオロチさん!女神さまだけど?


『ふ、ふふ、ふざけるな!たかが勇者ごときに私の野望を、理想を、踏みにじられてたまりますか!そうだ、お前をお前を殺せば!!』


 魔王の魔力が更に膨れ上がり、空中を素早く軽やかに飛び回りながら必殺の一撃を構える。あー、後ろ後ろ!


『なに――』


 ヤマタの一、壱乃(いちの)から放たれたのはただ、一撃。大量の水を圧縮し、一筋の線として解き放つ。その速さはマッハを軽く超え、ありとあらゆるものを切断する。うん、超巨大ウォーターカッターさんだよ!やばいな!


『がぁあああ!!??』


 寸でで躱したようだが、それでも体の三分の一を持っていかれたらしく地面へと叩きつけられていった。それでもまだ生きてるみたいだ!ううん、しぶとい!


『――刻限のようだ』『備えよ、吾らは酒を求むる』『あと美味しいものを頼む。虫はやはりだめだ……』『中々行けるのに。パリパリ』『やめて!』『真人や、達者でのう』『次はお姉さんと二人きり、ね?』『お供え楽しみにしてるねー!』

「あ、お疲れっすー!」


 手をぶんぶんと振って彼女らを見送る。きっかり三分、取り零しもそこそこにあるけど何とかなったかな?

 暴虐でにょろにょろなお姫様たちがあらん限りの力を振るった跡は、一つの巨大な湖が生まれていた。ひゅう!流石、神!スケールが違うぜ!やべーい!



『――まだ、だ!』


 湖の中、大量の魔石と無残な虫たちの死体が浮かぶその中で魔王がその巨体を持ち上げる。半身は消え去り、羽もボロボロになり、もう飛ぶこともできないだろう。それでも尚、魔王は立ち上がる。


『私は、負けるわけにはいかないのです。妻が、娘が、私の躍進を願っているのですから!』


 魔王はこちらをにらみ吠え叫ぶ。

 素晴らしい家族愛だ!感動した!――だが、無意味だ。


「先に剣を振るったのはお前だよ、魔王バアル。やられたら、やり返す。これは自然の摂理だ。お前が、俺の大切なサクラちゃんとサクラちゃんの大事なモノに手を出した。それが最初の失敗なんだよ」

『ふざけ、るな!私は、負けない。まだ……まだだ!我が眷属たちよ!集い来たれ!我に、勝利をおおおおおおお!!』


 バアルの領から更に虫たちが集い始める。うん、結界さんももう切れてるから追加発注が通っちゃったみたいだ!湖面を更に大量の虫たちが押し寄せて来る。


「――さて、サテラさん。準備はできたかな?」

『つつがなく完了しております』


 ブラスティアカノンは確かに砕けて散った。だが、武装はそれだけじゃあない。そもそもな話、あの武装は古代に作られたボロボロの骨董品。一度使えば壊れる可能性の高い一品だった。だから、あの装備自体がブラフだった。まさしく、こんなこともあろうかと!である。……はっ!言うタイミングを逃したんだよ……。


『なんだ、その武装は――まさか!』


 そして、これが最新装備。本来ならばロボであったグルンガストさんが装備するはずの最終兵器、サテライトバスター!同じく、軌道上の衛星からエネルギーをかき集め、現在の技術の粋を集めたサテラさんご自慢の一品である。本当ならコネクターが違うんだけど、そこはガッツで補ってもらった。熱いぜ!


「うん、サクラちゃん。大変だけど頼めるかな?」

「任せて、まーくん」


 そう言って、グランブラスティアの壊れたハッチから身を乗り出してサクラちゃんが自らの目の封印を解き放った。


『―― () () ()


 サクラちゃんの澄み渡った声が響き渡り、その魔眼の力で見える限りの虫達が意識を閉じて落ちてゆく。バアルも膝をついて崩れ落ちる。けど、まだ意識は落ちてないみたいだ。流石魔王だ!

 だからトドメを刺させてもらう。無常だろうが無慈悲だろうが、こいつがいるとまた同じことを仕掛けてくるから望みの物をプレゼントしてあげる。


「応えよ――聖剣、ジ・アンサー!!」


 光が溢れ、魔を討つ剣がその姿を現す。回収班がいるからね!やっと使えるよ!


『サテライトバスター、充填百二十パーセント。――撃てます』

「フィナーレだ!解き放て!」


 無限流/刃/奥義ノ壱/武御雷――


 光り輝く剣線は尽くを切り裂き、更にその後をサテライトバスターの収束されたエネルギーが駆け抜ける。


『私は……私は、ただ、しあわせに――』


 呆然と空を見上げていた魔王バアルは眷属の魔物たちと共に、聖剣の光とサテライトバスターの熱線に飲まれ、その姿をこの世から消し飛ばされたのだった。

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