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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第3章:命を懸けなければ

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第76話:タラリア

 

「あ、エアルさん!」


 ギルドから出ようとした時、ティアが言った聞き覚えのある名前に……俺とレヴィは顔を見合わせた。


「エ、エアルさんって……」


「ニーベルグ闘技大会の……!」


「ああ、ティア……って、ありゃ!? あんた達なんでここに?」


 やっぱり間違いない。

 ニーベルグ闘技大会決勝トーナメントで俺達と戦う筈だったあのエアルさんだ。


「や、やっぱりエアルさんですか! イストは俺達の故郷なんですよ。というかエアルさんこそ……なんでここに?」


 大会では急に居なくなってしまったからな……。

 エアルさんは確か3人パーティだったが、一緒にいた人達の姿はどこにもなかった。


「あはは……色々あってさ。大会ではあんた達と戦いたかったんだけど、国の両親が急に倒れたって報せが入ってね……それで急いで国に帰ったんだ。まぁ、間に合わなかったけどね……で、今度は金銭トラブルで仲間割れしちまってさ。他の2人にやられてフラフラ彷徨っていたんだけど、そんな私を助けてくれたのがティアって訳さ」


「そ、そうだったんですか……あの、ご愁傷様です……」


「ああ、ごめんごめん! 暗い話をしちゃったね……今はティアのおかげでもうすっかり元気だから」


 そう言って彼女は笑ってみせる。

 エアルさんも色々と大変だったんだな。


「イストはいいところですから……ゆっくりしていって下さい」


「ああ、そうさせてもらってるよ。ありがとね」


 笑顔で手を振るエアルさんと別れ、冒険者ギルドを後にした。

 そこから家へと戻る間、町の人達は次々と声を掛けてくれる。

 もちろん俺だけじゃなく、ティアやアスナ、レヴィにも同じ様にしてくれた。

 特にティアは人気が高いらしく、すっかり人気者らしい。


「それにしてもティア、大活躍じゃないか」


「えへへ……」


 どうやらティアはもうイストにとって欠かせない人物になっているようだ。

 みんなから好かれているし、そして頼られている。

 どれくらい強くなったのかちょっと気になるな。


「ティアの魔法……後で少し見せてくれよ」


「あ、はいっ! まだまだ完璧じゃないですけど……頑張りますっ!」


 ティアが使う自然魔法……あの時は抑えるのに苦労した。

 あれを自由に使えたなら本当に敵なしかもしれない。

 でも、ティアにはイストに居て欲しいな。

 お母さんと一緒に幸せに暮らして欲しい。

 それにみんな寂しがるだろうし、アスナもきっとティアがいた方がいいだろう。

 この町なら……安心だ。



 ──────────────────



 家に戻ると既にいい匂いが辺りに広がっていた。

 今日はフィンティさんの得意料理であるビーフシチューを振る舞ってくれるらしい。


「もうすぐ出来ますからねー!」


「お母さんのビーフシチューはとびっきり美味しいですよ!」


「楽しみだ。じゃ、その間に見せて貰おうかな」


「はいっ!」


 外に出るとだいぶ日が傾いており、辺りは黄金色に染まりつつあった。

 ティアは芝生がびっしりと生えた広い庭の真ん中に立ち、目を瞑り魔力を練り上げている。

 家の中もそうだったが、庭もかなり綺麗にしてくれているようだ。

 約束を守ってくれているのだろう。


「はぁっ!」


 ティアは掛け声とともに大地を蹴り、風に乗ってぐんぐんと空へ登っていく。

 あっという間に家の高さを超え、そこでピタリと止まった。

 更にティアが空に浮かぶ雲に手をかざすと、その雲がティアの下へと近寄ってくる。

 集めた雲を凝縮させると小さな黒い雲となり、その黒い雲からは雷鳴が轟いていた。


「おお……すごいな」


「今日は晴れてるからこんなもんですねー! 森の中や雨の日ならもっといけるんですけどー! あと、本当はもっと自由に飛び回りたいんですけどなかなかコツが掴めなくてー!」


 上空からティアが大きな声を出す。

 コツか……あの人なら何か知っているかもしれない。

 よし、試しに呼んでみるか。


「タラリア!」



 ──────────────────



 タラリア 有翼の靴


 神が創り出した伝説の靴。

 英雄ペルセウスはこれを使い、戦場を自由に飛び回り首を狩っていったという。


 あくまで1人用であり、誰かを抱えて飛ぶことは出来ない。

 また、あまり長い距離の移動は不可能。


 武具ランク:【SS】

 能力ランク:【S】



 ──────────────────



 白くて小さな翼の生えたタラリアに生命を与えると、白い光の中から男性が姿を現した。

 白く短い髪に茶色の目。着ている服は絵画などでよく見る天使の服の様だ。

 そんな彼は俺達に向け丁寧にお辞儀をした後、いきなり空へと舞い上がった。


「いやっほーぅ! これこれぇっ! こうしたかったんだよねぇー!!」


 どうやら自分で飛ぶことが夢だった様だな。

 嬉しそうにティアの周りを飛び回っている。


「タラリアー! よろしくー!」


「よろしくー! んでー? この子に飛び方を教えればいいのー?」


「ああ! 頼むよー!」


「任せろー!」


「タラリアさんよろしくお願いします!」


「うむ、苦しゅうない。感覚さえ掴めばすぐさ。ロードも一瞬だったからね」


 その後、日が暮れるまでティアの特訓は続き、見事空を自由に飛び回れる様になった。

 ティア……本当に逞しくなって……よかったよ。



 ──────────────────



 フィンティさんが作ったビーフシチューは本当に美味しかった。

 いやー……幸せだなぁ。


「「「「ごちそうさまでした!」」」」


「はい、みなさんよく食べました」


 食後の紅茶を飲みながらみんなで話していると、フィンティさんが布に包んである何かを持ってきた。


「ロードさん……これはお返しします」


「あ……これ……」


 それは内緒で包んだあの時の100万ゴールドだった。

 どうやら全く使っていない様だ。

 余計なお世話だったかな……。


「すいません……余計だったみたいですね」


「いえ、これのおかげで……ロードさんへの感謝の気持ちを持って毎日過ごせましたから」


「でも、もういりません。もう忘れませんから」


 そうか……。

 なら、少しは意味があったのかもしれないな。


「ティア……フィンティさん……よかったです」


 その時、家の扉がノックされる。

 というか……なんだか外が騒がしい。

 急いで玄関まで行き扉を開けると、そこには親方や土木ギルドのみんな、ガガンさんやエリーさんにエアルさん、商店通りの人などびっくりするぐらい多くの人が立っていた。


「み、みなさん……!」


「おかえりロードくん……また会えて嬉しいよ。またすぐ行っちまうんだろ? 今日挨拶しとこうと思ってよ。ほらこれ」


 そう言って、親方はにんまり笑って酒を取り出した。


「あはは! 親方……みんなも……元気そうでよかった」


「おかげ様でね……ありがとうロードくん」


「こっちこそ……ティアとアスナをこれからも頼みます。俺達は……やらなきゃいけないことがあるんで」


 俺の言葉にみんなが頷いてくれた。

 みんなに任せておけば大丈夫だろう。


「さ、ロードの帰郷祝いしようぜ! 庭借りるぜー!」


「みなさんどうぞどうぞ! レヴィ、何か敷くものを」


「はい、ロード様」


「私も手伝うよレヴィちゃん」


「これつまみー! とりあえずサラミを大量に持ってきたぜ!」


「酒はこっちな! 灯りある?」


 こうして楽しい宴は夜遅くまで続き、俺達は束の間の安らぎを得た。

 今は休もう。

 また新たな戦いの為に。



 ──────────────────



「ん……あれ……寝ちまったのか」


 どうやらいつの間にか床で寝てしまったみたいだ。

 みんなを見送ったまでは覚えているのだが、それ以降の記憶がない。

 アスナは机に突っ伏して寝息を立てており、家の中を見て回るとティアとフィンティさんが寝室で寝ているのが目に入った。


「あれ……レヴィ?」


 レヴィの姿がない。

 家の中にはいないようだから……外かな?

 玄関から外に出て辺りを見渡すが、レヴィの姿はどこにもなかった。


「んん……ひょっとして墓か?」


 レヴィの性格ならなくは無い。

 見に行ってみるか……。

 暫く林の中を歩き、墓まで辿り着いたのだがレヴィの姿はどこにもなかった。

 その時になって初めて……俺の心臓が微かに痛んだ。


「……嘘だろ」


 俺は林の中を全力で駆け抜け、もう一度家の中をくまなく探した。

 しかし、レヴィの姿はない。


「はぁっ……はぁっ……あ、通信魔石っ……!」


 急いでレヴィに繋ぐ……が、目の前にあるソファーの隙間からそれが光っているのが見える。

 俺は勝手に震えて止まらない手を必死に伸ばし、隙間にねじ込まれる様に入っていた魔石を取り出した。

 心臓が痛い……痛くてたまらない。

 レヴィが何も告げずにいなくなる訳がない。

 まさか……いや……俺はなんで───


「レヴィが……攫われた……?」


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