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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第428話:2人組

 

「くッ……エミーナァッ!」


「ひぃッ!? すすすすいませぇん!!」


 リナリアの怒号に、エミーナは宙に浮かんだまま身体を丸めた。

 しかし、エミーナに非はない。

 彼女はやれるだけのことをやったのだ。

 ただ単にバーンの力が、それを上回っただけのことである。


『……落ち着きたまえリナリア君』


「へ、陛下……」


 バーンの登場に多少動揺したものの、既にロバートは平静さを取り戻していた。


『関係ないよ。誰が相手だろうとね。このゴッドロバートに勝てる者はこの世にいない……バーン君! 邪魔するのならば、君も一緒に叩き潰すだけだ!』


「ゴッドロバートねぇ……」


 バーンはそう言ってニヤリと笑ったあと、声を落としてロードへと語りかけた。


「見た感じ……というか、なんとなくデカいだけじゃないように思うが、どうなんだ?」


「はい……アレに魔法は効きません。というより、魔力自体が通らないみたいです。伝説の武具ですら弾かれ、神の盾ですら危うく破壊されそうになりましたから……」


「厄介だなそりゃ……」


「それから、中には捕らえられた人達が大量に入っているようです。迂闊に破壊するのは……」


「ふむ……因みに、一応聞いておくが……その人らは助けられるのか?」


「エクスカリバーの力を使えばおそらく……」


「そうか……だとすると、他のも潰す訳にはいかねぇな」


 バーンはそう言って、周囲にいた人造魔石機兵(ハイゴーレム)達に視線を送る。

 ロードはそれに頷いたあと、再び口を開いた。


「はい。なので、この地下空間が崩れるのも避けないと駄目です」


「この深さ……埋まっちまったらどうしようもねぇしな。だが、アレが派手に動きゃ……」


「あ、いや、バーンさんを閉じ込めた人が、この空間を固定しているらしいので……」


「あー、なるほどな。ここに入った時に感じた魔力は、やっぱりあいつのもんか。つまり、あの浮いてる空間使いと、ついでにあっちの小さいのを無力化し、デカいのの中に入ってる人らを傷付けず、王だけを討つ必要があるって訳か」


「ええ……そうなります」


「なかなかのハンデだな。策は?」


「今のところはっきりとしたものは……バーンさんは?」


「……本気でやれば、あのデカブツに風穴を開ける自信はある」


「ッ! ……本当ですか?」


「ああ……ま、奥の手ってやつだ。魔力が効かねぇとか関係なく、まず間違いなくぶち抜ける。だが、加減が出来ねぇ。ロバート王はもちろん、中にいる人らも"消し"ちまう可能性が高い」


「"消す"……」


「そういう技なんだ。だから俺はサポートに回る。あのデカブツはお前に任せるぜ。まぁ、俺も試しちゃみるがな」


「……分かりました。なんとかやってみます」


『作戦会議はもういいかな?』


 聞こえてきたロバートの声に、2人は視線を上へと向けた。


「ずいぶんとお優しいじゃねぇか」


『なぁに……僕は神だからねぇ。それくらい許してあげるさ』


「そらお有り難いこって。さて、んじゃ……」


『「「ッ!」」』


 瞬間、地面に降り積もっていた土埃が再び舞い上がる。


「こ、こんなッ!」


「くッ……!」


 大気の鳴動に呼応するように、リナリアとエミーナの身体が震え始めていた。

 バーンから溢れ出す、人ならざる尋常ではない魔力によって。


「状況が状況なんでな。死なない程度に……軽く本気を出してやるよ」


「ッ! 上等だッ! 陛下の御身に近付く者は、その全てをッ……我ら七影が駆逐するッ! 行くぞエミーナァッ!」


「は、はいッ!」


「ロード……こっちも行くぜッ!」


「分かりましたッ!」


 ロードの返事を聞くや否や、バーンの姿がそこから消える。


「いぎッ……!」


「え……はぐッ!?」


「おめぇらは……俺が相手をしてやるよ」


 時空魔法で消えたバーンは、地上にいたリナリアに大剣の腹を叩きつけて吹き飛ばすと、再び消え、宙空にいたエミーナにも一撃を見舞う。

 そのあまりの速さに、二人は何も出来ずに王への道を明け渡していた。

 そうして、そびえ立つ巨神を前に、ロードは思考を巡らせる。

 まともにぶつかれば勝機はない。

 人が虫を踏み潰すが如く、あまりにも簡単にロードは死ぬだろう。

 だが、彼はただの虫ではない。


「ブリューナク! タラリア! ウィガール!」


 彼の呼びかけに呼応し、朱の槍が手に、翼の生えた靴が足に、白銀の鎖帷子が身体を覆う。


『ほう……君の魔法は本当に不思議だねぇ。いったいどういう能力なんだい?』


「……」


 ロードは応えず、黙したままに宙へと浮かんだ。

 答えは未だに見えない。

 だが、状況は待ってはくれないのだ。


『……まぁいいか。どうせすぐに……死ぬんだしねぇッ!』


 巨神の瞳が赤く輝く。

 ロードはブリューナクを握りしめ、強く宙を蹴った。



 ―――――――――――――――――――――



「はぁッ……はぁッ……こ、この野郎……マジでバケモンじゃねぇかッ……!」


 肩で息をするゲイボルグの視線の先に、ほとんど無傷のままに立つボッグスの姿があった。

 再三にわたり打ち込んだ致命の筈の一撃。

 だが、それら全ては彼の魔法の前に打ち砕かれ、彼女の魔力と心を徐々に削っていた。


「ふむ……さて、どうするかな」


 その隣に立つバハムートもまた、焦りこそ見せないものの、無敵とも言えるボッグスの能力に手を拱いていた。


「あんたのおかげでやりたい放題出来たけどよぉ……刺さんなきゃ意味ねぇし……!」


 バハムートが使う"一瞬の永遠"。

 単体を対象とすれば、数分間に渡りそのものの"時"を止めるという恐ろしい能力。

 しかし、止めたところで、とどめを刺せなければ意味がない。


「そうさな……お主の力で貫けないとなると、今あれを殺すのは不可能に近い。まぁ、我らの力との相性が悪かったと言えばそれまでだが、まったく……どれほどの代償を払っているのかは知らんが……大したものだ」


「おい! 関心してる場合かよ!」


「いやいや、ここは素直に負けを認めようではないか。明らかに奴の方が上なのだ。残念だがな」


「ざ、ざけんな! だったら尻尾でも巻いて逃げろってのか!? 冗談じゃねぇぞ! 逃げんならあんただけにしてくれや! あたいは一人でも……!」


「勘違いするな、魔槍よ」


「あぁ!?」


「確かに負けだとは言った。だが、策はある」


「さ、策って――――」


「……!」


 その時、立ち尽くしていたボッグスの身体がピクリと動く。

 そして、視界にいた二人を認識すると、王の怨敵を駆逐する為、再び前進を開始した。


「ちッ!」


「術が解けたか……聞け、魔槍よ。残る魔力からいって、"一瞬"が使えるのはあと一度……だが、私の推測が正しければ、それで十分奴を討てる」


「なッ……なんでんなことが……!」


「あれだ」


「あれって……」


 バハムートの指差す先。

 それは、ボッグスの腕にあった微かな傷。


「あ、あんな傷がなん……っていうか、あたいはあんなんつけた覚えが……」


「そうだ。あれは我らがつけたものではない。我らの前に戦った者がつけた傷だ。そして、それは恐らく……とにかく、破れるのだあれは」


「……あたいは、どうすりゃいい?」


 即座に気持ちを切り替えたゲイボルグに、バハムートは微笑を浮かべたあと――――


「まずは推測を確信に導く。お主はまず……」


 ボッグスがゆっくりと迫る中、バハムートはゲイボルグの耳元で策を語る。

 ゲイボルグは頷きながらそれを聞いていたが、バハムートが考えた最後の策を聞くと――――


「おまッ……大丈夫なのかよ!?」


 そう言って、驚愕の表情を浮かべて彼女の方を見た。

 バハムートはニヤリと笑ったあと、静かに首を縦に振る。


「恐らくな。とにかくやるしかあるまい。さぁ、さっさとやれ」


「あー! もう! どうなっても知らねぇぞ!」


 次の瞬間、漆黒の魔槍が……バハムートの身体を貫いていた。


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