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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第426話:掌握

 

「なッ!?」


『思ってた通りッ……ハハハッ!! 思ってた通りだッ!』


 鋼の巨人が、王の笑い声とともに一歩を踏み出す。

 それだけで、まるで近くで大砲が放たれたかのような衝撃がロードを突き抜けた。


「うッ……くッ!?」


 手足に繋がれていた数多のコードを引き千切り、巨人はロードに向かって更に一歩を踏み出す。

 振動とともに鳴り響く轟音が、ロードの心臓の鼓動を否が応でも早めていた。


『今まで何人も試したッ! とにかく魔力が強い者を核にしてね! でもコイツは動かなかった……あのコスモでもだ! となると、もう魔力だけの問題じゃあないってことさ! つまり意思だよッ! コイツを動かすには、何よりも強い意思が必要だったんだッ!』


 今までこの巨人に入れられた者は、全てリナリアの魔法によって精神を制御されていた。

 意思を持たぬ……人形として。

 だが、それでは駄目だったのだ。

 手足に入れられた数十の人間達。

 彼らを操り、巨人の一部として機能させる為には、核となる者が脳としての機能も果たさなくてはならなかった。

 そして、その条件を満たすのは……この世にただ1人。


『もちろん!? ただ強い意思があるだけじゃ駄目さ! ただ、僕は魔力だけは人一倍あるしねぇ!?』


「魔力だけは……や、やっぱりあなたは!」


『なんだいなんだい!? 気付いていたのかい!? そうさッ! その通りだッ!』


 王の声が狂喜に彩られていく。

 追い詰められ、逃げ込んだ鉄の塊の中で、やっと見つけたその光明。

 夢にまで見た全能感が、彼の精神状態を振り切らせた。

 だから叫んだ。

 かつて、彼の父しか知らなかったその事実を。


『僕はね……"無能"なんだよッ!!』


「ッ!」


 纏っていた王の衣が、狂喜によって剥がれ落ちていた。

 誰にも話せなかった絶対の秘密。

 唯一その事実を知っていた前王である彼の父は、既に彼自身の手で口を封じている。


『しっかしどこで漏れたのかねぇ……あのクソ親父からは絶対に出ない筈なんだけどな。母親さえ知らなかったからね! 気付かれた時は酷かったよ! "1人息子でさえなければ殺していたものを"……分かるかい!? 実の親に面と向かってそう言われる恐怖と絶望ッ……それが何十年だよ!? 表面状は取り繕って、2人きりになれば罵倒の嵐さッ! 毎日死にたかった……けどね! 僕は負けなかったッ! そして……奴を超えたんだ! いや、今は奴だけじゃない……この世の全てを超えたんだ! 君達のおかげでね!』


「あなたはッ……!」


『君が優しい人間でよかったよぉ? 話を聞いてくれる……優しい馬鹿でねぇッ!』


 そう、全ては時間稼ぎの為。

 長く"無能"であったロバートは、魔力を放出することはおろか、練り上げることすら出来ない。

 だから繋いだ。

 大量のケーブルを身体中に刺し、無理やり魔力を巨人に送る。

 そして、巨人を操る魔石を飲み込んだ彼は、まさに一体となったのだ。

 大地を揺るがし、天を衝く巨人と。


『そして、馬鹿だけど君はラッキーだよ! 僕の新たな天地創造……その最初の一撃を受けるがいいッ!!』


「まずいッ……!」


 巨人の拳が振り上げられる。

 ロードはすぐさま黒い手帳を開いた。


『死ねぇッ!!』


「"女神の絶対防御(アイギス)"ッ!」


『ぬぅッ!?』


 全てを防ぐ光の壁がロードを包み、巨人の一撃を受け止める。

 だが――――


「くッ……うッ……!」


 神の盾をもってしてもその全てを防ぐことは叶わず、ロードは押し潰されるような感覚を覚える。

 100メートルを超える鋼鉄の巨体は、それだけで最強の矛となり、神が創りし伝説をも越えようとしていた。


『す、すごいね君はッ! まさか受け止めるとは……けどッ! コイツの力はこんなもんじゃないよぉッ!』


 続けざまに放たれる左の巨拳。

 轟音が表すその衝撃に、女神の絶対防御に亀裂が走る。


「まず……いッ……!」


『まだまだいくよぉッ!』


「くッ! フェブズルングッ!」


『あッ!?』


 奇術の神靴がロードの足を包み込んだ刹那、彼の姿が忽然と消える。

 更に、気配も匂いも魔力も消え去り、シュメール王は完全にロードを見失った。


『……逃げたか。まぁいいや。どうせ地下からは出られない。んっふっふっふ……いやぁ……楽しいなぁ! これが強者の目線ってやつかぁ! いろいろ予定は変わっちゃったけど……今はいい……今はいいさ! それじゃッ……!』


 再び巨拳が唸りを上げ、轟音とともに大穴が開く。


『あははッ! すごいすごい! さぁ、進撃だッ!』


 大量の瓦礫が崩れ落ちる中、巨拳が繰り出す衝撃音と王の笑い声がこだまする。

 壁を粉砕しながら、巨人はゆっくりとその穴の中へ消えていった。

 そして、その背後で――――


「……エクスカリバー」


 姿を現したロードは手帳から聖剣を引き抜き、生命の魔力を彼女に与える。

 やがて人の姿となった聖剣は、ロードに寄り添うように肩を並べた。


「どう……思う?」


「う……む……」


 ロードが彼女を呼んだのは、戦力としてはもちろんのこと、何か助言を求めてのことであった。

 しかし、聖剣もその答えを持ち合わせてはおらず、2人の間に沈黙の時が流れる。

 打ち倒すには、あまりにも巨大過ぎる相手。

 加えて――――


「実は……生命を……感じられなかったんだ」


「ぬ……生命を?」


「ああ。あの口ぶりだと、外で操っているってことはないだろう。だから、確かに中にいる筈なんだ。なのに生命は感じられない……つまり、あの巨人には魔法が……」


「……意味をなさないと?」


「多分……」


「ますますもって厄介な……」


「うん……あ、手帳の中は?」


「うむ、皆で見てはいた……が、とにかくあの巨体だ。御するにはあまりにも……ふと思ったのだが、アレは打ち倒すというよりも、他の方法を考えた方がよいのではないか?」


「他の?」


「うむ。例えば、アレは魔力で動いているのだろう? それが切れるのを待つというのは……」


「いや、それは駄目だ」


「な、何故だ?」


「あれは確かに魔力で動いてる……でも、さっきティアから聞いたように、その動力源は人間だ。つまり、あれの魔力が切れるということは、中にいる人達が多分……」


「……理解した。ならばどうする? 物理的にとなると……恐らくヘラクレスでも不可能だろう」


「かもね……けど、やるしかない。とにかくいろいろ試してみよう。みんなの力を合わせればきっと……」


 聖剣は無言で頷き、ロードはそれに頷き返した後、前へと足を踏み出した。



 ―――――――――――――――――――――



「い、今の揺れはまさかッ……!」


「よそ見とは余裕ですね」


「ッ! がッ!?」


 レヴィの拳がリナリアの腹部を捉える。

 小さな身体は跳ね上がり、そのまま数メートル吹き飛んで地面に叩きつけられた。


「ぐッ……お、おのれぇ……!」


「そろそろ降参されてはいかがですか? あなた様では……私に勝つことは不可能です」


「ふざッ……けるなぁッ!!」


 リナリアは倒れたままに手刀を振り下ろす。

 もちろんそこにレヴィはいない。

 だが、彼女の魔法はそれでも意味を成す……筈だった。


「……無駄です」


「ッ! また……!」


 レヴィは目に見えないそれを躱《かわ》し、悠然と前へ進む。

 もはや彼女には、全てが"視え"ていた。


「確かに、恐ろしい魔法です。ですが、種が割れればどうということはありません。あなた様の使う……"掌握魔法"は」


「ッ!?」


 "掌握魔法"。

 それは、魔力を送り込んだ周囲にある全てを、己の意のままに操ることが出来る魔法。

 体内に魔力を送り込めばその身体を、空中に放てばその空間を、自身の支配下に置くことが可能となる。

 魔力が見えない限り、この魔法から逃れることはまず不可能。

 だが、レヴィは違う。


「な、何故私の魔法をッ……!」


「私の魔法は"鑑定魔法"……あらゆるものを、見抜く力ですので」


 レヴィには全てが"視え"ている。

 リナリアの身体の状態も、その能力も、そして……流れる魔力さえも。

 漂う魔力を避ければ、リナリアの攻撃は永遠に当たらない。

 そして、身体能力はレヴィがリナリアを圧倒している。

 故に勝てない。


「か、鑑定……!」


「はい。では、そろそろ終わりに致しましょう」


 物事には相性というものがある。

 そういう点では、先に対峙したミルミルの方が厄介であった。

 小手先ではない、純粋な格闘能力と圧倒的な身体能力。

 レヴィはそういった相手を不得手としていた。

 鑑定魔法が意味を成さないから。

 しかし、リナリアのような搦手を使う魔法は別。

 弱点さえ分かれば、レヴィはそこから勝利への道筋を辿るのみ。

 つまり、現状が表している通り、リナリアは……絶対にレヴィの上を取ることは出来ない。


「う……くッ……!」


 リナリアの視線が、エミーナに助けを求めるように移動する。

 しかし、彼女は彼女でスカークで手一杯となっていた。


「いやぁぁぁぁあッ……こないでぇぇえッ!!」


「なっはっはっはっ! 揉ませろよねぇちゃん!」


「ちぃッ……!」


 能力的に言えば、エミーナのそれはスカークを凌駕するだろう。

 だが、こちらも相性が悪い。

 それは魔法というよりも、人としての相性。


「ご安心を。私が掛け合いましょう……同じ牢の中で、と」


「ふッ……ふざけッ!?」


「ッ!?」


 レヴィとて、その揺れには気付いていた。

 しかし、先に向かったのは、他の誰でもないロードである。

 故に、リナリアを仕留めることのみに集中していたのだ。

 主人《あるじ》のことを信じて。

 だが、その揺れは間隔を狭め、尚且つすぐ側まで迫っていた。

 いや、それはもはや――――


『うぇいやぁぁぁあッ!!』


「なッ……あッ……!」


「おいおい嘘だろッ!?」


 円状の空間の中央を通る円柱を粉砕し、その巨人が……レヴィ達の前へと現れていた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 話の流れが若干、マンネリ化してきてるかな 主人公にやらせたい事もやり終えたのか 物語にポツポツと出る程度だし
2020/04/06 10:46 退会済み
管理
[気になる点] 更新楽しみに待ってます(´;Д;`)
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