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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第384話:席

 

「おはようございます!」


「はいおはよう! 朝から元気ねぇ」


「取り柄ですから!」


 今は朝の10時。

 ギルド内は既に多くの人で溢れ、昨日の夜とは違い、少し騒がしいくらいになっていた。

 けど、ざっと見た感じ……あまりレベルは高くない。

 中堅クラスがちらほらいるくらいで、あとは駆け出しと都落ちってところだろう。


「いいわねぇティアちゃんのキャラ……私好きよ」


「ありがとうございます!」


「ふふっ! ところで、よく眠れた?」


「はい! おかげ様で! で、あの、早速依頼を受けたいんですけど……」


「分かったわ。えーっと……確か2人はBランクだったわね。あ、でもカレンちゃんとシェリルちゃんは冒険者じゃないのよね?」


「あ、はい……やっぱりまずいですか?」


「一応……冒険者の補助として、一般人が同行することはなくはないわ。ただ、そういうのは私達の知らないところで行われていることで、知ってしまった以上、それを見て見ぬ振りは出来ないかな。やっぱり危ない仕事だし」


 まぁ、そうでしょうね。

 要は、どうなっても責任を取れないってことだろう。

 つまり、自分で責任を取ることを明確にするしかない。

 となると……。


「なら、今冒険者になれは問題ないですか?」


「え? まぁ、そうねぇ……じゃあ登録しちゃう?」


「お願いします」


「シェリル……いいの?」


「ええ。一緒に行動する為に必要だし、いずれそうするつもりだったから」


 本来なら、あまり名前を出すべきではないのだろう。

 ただ、シェリルという名前は珍しいものでもないし、既にムムの千里眼からは抜け出せている。

 これから先のことを考えると、慎重に動くことに越したことはないのだろうけれど、あまり神経質になり過ぎるのもよくない。


「ん、それじゃこれに記入して」


「ほら、カレンもよ」


「あいあい。名前書きゃいいんか?」


「名前と年齢、それから名乗る職業ね」


「職業? ああ、運び屋とか回収屋とか?」


 なんでまた微妙にアウトローよりなものを……。


「ま、まぁなんでもいいけど……あんまりふざけ過ぎないようにね?」


「わぁってるよ。任せろ。さーて、なんにするかねぇ……やっぱつえー感じのがいいよなぁ」


 ……不安しかないわね。



 ―――――――――――――――――――――



 シュメール冒険者ギルドの1階には、依頼を受注、または申請する為のカウンターがあり、それ以外のスペースには、丸机と椅子が所狭しと並べられていた。

 冒険者達はそのスペースを、これから受ける依頼の相談や、受けた依頼の作戦会議、または出発前の腹ごしらえ、更には依頼達成後の打ち上げなど、様々な用途で活用している。

 シェリルとカレンが受付で登録作業をしている間も、その後ろでは、そういった冒険者達の日常風景が流れていた。

 そんな中――――


「……みない顔だな」


「ああ……みない顔だ」


 ギルドの隅にいた2人の男の視線が、彼女達4人へと向けられていた。

 2人が身につけている鎧には多くの傷があり、数多の経験を踏んだ冒険者だということを一目で分からせる。


「なんか書いてるな」


「ああ、書いてる。ありゃ……登録書だな。で、他の2人はBランクらしい。ちらっとギルドカードが見えた」


「ほー……Bランク2人に新人さん2人か。しっかし、お前は本当に目がいいな」


「まぁな。物心がついた頃から、100メートル先のアリンコも数えられたぜ?」


 当然彼は知らないが、それは生まれつき持っていたスキル。

 名は"鷹の目"。

 レヴィが"視"ない限り、彼がそれを知ることは一生ない。


「そりゃすげぇ」


「で? そっちはどうなんだよ?」


「今見てるが……ありゃ本当に新人か? つか、Bランクの方も相当だぞ。特に、短い茶髪と長い赤髪の2人がやべぇ。魔力だけなら中堅以上……ははっ! 俺らも超えてやがるわ」


 彼のスキルは"魔力測量"。

 対象を凝視することで、おおまかな魔力量を測ることが出来る力である。

 因みに、アスナはブロンド、ティアが茶髪、シェリルが赤でカレンは黒髪。

 つまり、彼が指しているのは……ティアとシェリルのことである。


「マジか? こりゃ久々の大物だな……」


「ああ……どうする?」


 もう一方の男からの問いに、もう1人の男は、顎に生えた髭をさすりながら思案する。

 相手は女。

 しかもルーキー。

 だが、向こうが4人であるのに対し、自分達は2人。

 加えて、魔力量からして只者ではない。

 能力も不明。

 万全を期すなら、避けた方がいいかもしれない。

 とはいえ、ここで簡単に諦めるには、あまりにも惜しい獲物であるのもまた事実。


「……とりあえず後をつけよう。まずは奴らの魔法を見る。あとはタイミングだな」


「オーケー……まぁ、俺とお前のコンボなら、大抵の奴は上手く捌けるんだがな……ただ、今回はマジで気を引き締めねぇとやばい。女だからって油断してたら、下手すりゃこっちがやられちまうぞ」


「お前がそれだけ言うってことは……マジだな」


「ああ。今日1日でどうこうするのは避けた方がいいかもな。奴らは階段を降りてきた。つまり、ここに泊まってたんだ。ミュンのやつとも親しそうだし、まず間違いねぇだろう。んで、今登録してるってこたぁ、恐らく町に着いたのは昨日の夜……まぁ、いつまでもここに泊まっちゃいねぇだろうから、やるなら奴らが別の宿に移動してからかね。で、また依頼を受けたらそん時に……どうだ?」


「ふむ……だが、あまり余裕ぶっこいちまうのもまずいぜ? いついなくなるか分からねぇし」


「そこがな……まぁ最悪の場合、奴らが町を出た瞬間を狙うしかない。街道を通られたら終わりだが」


 町と町を結ぶ街道には、常にそれなりの人間が行き交っている。

 そこを外れない限り、いかにプロである彼らとはいえ、おいそれと手を出すことは出来ない。


「大抵町を離れるのは朝か昼……明るい時間じゃ、流石に手は出せねぇ」


「そういうこった。まぁ、チャンスがありゃ今日やっちまおう。このままだと……俺らが処分されちまう可能性だってある」


 真顔で、そして一段と低い声で、顎髭が生えた男がそう呟く。

 そう……彼らもまた、決して安全な場所にいる訳ではない。

 彼らを雇っているのは、頂点に立つあの男からすれば、下の下のそのまた下。

 彼らはなんの為に人を攫っているかも分かなければ、それが誰の指示かも全く知らない。


 というより、それを下手に知ろうとすれば、消えるのは自分達の方であると理解しているのだ。

 だから探らない。興味も持たない。

 むしろ、これだけ闇が深い仕事である以上、いつ口を封じられてもおかしくはないのだ。

 利用価値がなくなれば、その瞬間に死が待っている。

 それでも、彼は金の為に命を懸けていた。


「……だな。多少のリスクはつきものだ。ま、こんな生き方してる以上、そうなっても仕方ねぇやな」


「まぁな……おっ? 移動するぜ。依頼に向かうみたいだな」


「じゃ……俺らも行くか」


「ああ」


 そうして、彼らは同時に席を立った。


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