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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第329話:兄上

 

 ガラドボルグに通ずる道は、彼が生み出した見えない斬撃により、その全てが塞がれていた。

 彼女の言う通り、まさにそれはつるぎの森。

 何人をも阻む"斬気"の結界であった。

 しかし、エクスカリバーはそれを理解して尚、一切臆することなく、立ち並んだ見えないつるぎへ向けて走り出す。


「うぬッ!?」


「勇敢と蛮勇は似て非なるものだ……エクスカリバー」


 途端に鳴り響く、おびただしい数の剣撃音。

 既に"在った"斬撃とは別、新たに生み出された斬撃も加わり、途切れることのない雨音のようなそれが鳴り響き続ける。

 エクスカリバーは空気の流れからそれを察知し、紙一重で攻撃を防ぎ続けていた。

 だが、前に出したい筈の足はその場で止まり、ガラドボルグに近付くことすらままならない。


「あ、あれじゃ近付けないじゃん……」


「ええ……言うまでもなく、あれを防ぎ続けているだけでも凄い……こと……」


 前後左右、いつどこから来るかすら分からない斬撃。

 前方から迫る斬撃をつるぎで受け止め、後方からの斬撃は半身で躱し、足元の斬撃をすくい上げ、その流れのまま右から迫る斬撃を斬り伏せる。

 一連の動作に一切の無駄はなく、まるで全てを読み取っているかのようなその流麗さに、見ている者全ての目が釘付けとなっていた。


「……見事だ」


「はい……ですが、このままでは……」


「あ……っていうか、エクスカリバーはなんで"巻き戻し"を使わないのかなぁ……使えば消せるんじゃないの?」


「無論、一時は消せよう。だが、ガラドボルグの"斬気"には溜めがない。消したところで、すぐに新たな斬撃が来るでな。あの間合いでは意味がないのだ」


「それに、"巻き戻し"には多くの魔力を必要としますからね……連発を避けたいのかもしれません」


「そういう……やっぱりガラドボルグって強いなぁ。本人は腕を組んで立ってるだけなのに、あのエクスカリバーがてんてこ舞いだもん」


「ふふ……まぁ、そう見えても仕方ないが、あれはかなりの集中を要する筈……当然魔力もな。見た目ほど楽ではないと思うぞ。もしこのまま長期戦になるようであれば、苦しいのはガラドボルグの方であろうな」


「我慢比べ……という訳ですね」


「然り。懐に入ればエクスカリバーに勝機が生まれ、入らせずにねじ伏せればガラドボルグの……さて、どちらが先に根を上げるかな?」


 そうトライデントが呟いた刹那、左右から同時に迫る見えない斬撃に、エクスカリバーは身体を沈めて前へと出る。

 受け続けても勝機はないと判断した彼女は、強引に前へと出ることを選択していた。

 だが、その直後、新たな斬撃が正面から迫り、彼女はそれをつるぎで受けつつ、斜め前へと足を運ぶ。


「うッ!?」


 このままでは……そう思っていたのはガラドボルグとて同じこと。

 躱しやすい左右の斬撃は"誘い"であったと、彼女が理解した時にはもう遅い。


「そこには既に……"置いて"ある」


 ガラドボルグは前へと出る理由を与え、更には正面からの斬撃を調整し、そう動くしかない流れを作りあげる。

 結果、エクスカリバーの道は限定され、そうなったのは半ば必然であった。


「ちぃッ……!」


 刹那、彼女の足に激痛が走る。

 まるで、ナイフのように小さな"斬気"。

 地面を覆うように生えたそれに気付いたのは、もう踏み抜いた後のことであった。

 瞬間、エクスカリバーのうなじがざわめく。

 上下左右、全ての方向から迫る見えない斬撃。

 躱す足は既にない。

 防ぎ切れる数でもない。

 故に彼女は――――


「"原点に帰す聖剣の導き(エクスリワインド)"ッ!」


 伝家の宝刀……いや、宝鞘を掲げたのだった。


「ッ!」


 直後、ガラドボルグの刃が、全て彼へと"巻き戻る"。

 それら全てに対処しつつ、エクスカリバーを追っていたその目が……大きく見開いた。


「魔力のッ……!」


「はぁぁぁぁぁあッ!」


 "巻き戻し"を使うことは予想していた。

 故に彼は足を奪ったのだ。

 間合いの外でならば、打ち消されても対処出来ると判断して。

 だが、エクスカリバーには魔力をつるぎに纏わせ、強大な一撃を放つという必殺がある。

 だが、それを彼女は移動に使っていた。

 彼女は"巻き戻し"を使った直後、地面につるぎを向け、魔力を放出することで前へと跳んだのだ。


「くッ……!」


「遅いッ!」


 "巻き戻し"による一瞬の空白。

 更に、予想外の速さで間合いを詰められたことによる焦りが、ガラドボルグの集中を削ぎ、"斬気"の具現化を阻害する。

 瞬き一つが命取りとなるこの戦いにおいて、それはあまりにも致命的な隙。

 そうして、ガラドボルグの手が、己が天剣へと伸びる刹那――――


「……見事だ」


「兄上……実によい戦だった」


 光り輝く聖剣が、ガラドボルグの喉元へと突き付けられていた。


「そこまで! 勝者……エクスカリバー!」



 ―――――――――――――――――――――



「2人とも、お疲れ様」


 勝敗が決し、剣を納めた2人をロードが労う。


「うむ」


「敗れはしましたが、満足のいく戦いでした。このような機会を与えていただき感謝しかありません」


「そうであるな……改めて礼を言わせてくれ主人あるじよ」


 兄妹はそう言って、満足げに笑ってみせる。

 それだけで、ロードはこの大会を開いてよかったと、そう感じたのだった。

 だが、その直後に思い出す。

 ――――まだ終わってはいないということを。


「では、私はこれで」


「あ、ああ……そうだな。また呼ぶよガラドボルグ」


「はい。エクスカリバー……勝てよ」


「……うむ。ありがとう兄上。また会おう」


「ああ。次は共にな」


 微笑むガラドボルグから魔力を抜き、ロードとエクスカリバーはレヴィ達のいる場所へと歩き出す。

 と、その時――――


「つッ……」


「あ、エクスカリバー足……」


「う、うむ……治そうと思えば治せるのだが、この程度で力を使うのもな……」


 エクスカリバーの能力は、同じものに使う度に効力が弱まってしまう。

 今使うには、少々過ぎた力であった。


「うーん……アスクレピオスなら治せるかな?」


「そうであるな……この姿ならばあるいは」


「よし、とりあえず向こうの椅子まで行こう。肩を貸すよ」


「お、すまぬな」


「ん……」


 ロードの肩に手を回し、エクスカリバーはそう言って微笑む。

 その表情と距離の近さが、ロードの頬を赤く染めていた。


「む? どうかしたか?」


「あ、いやっ……なんでもない……」


 レヴィに悟られてはならないと、ロードは強く思ったのだった。


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― 新着の感想 ―
武器だけど美人だからね(笑)これで武器フェチならエクスたんのお尻(柄)最高とか言うかも知れぬ。主人がまともで良かった。
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