第288話:魔導兵器
「黄金世代……」
それって確かズィードさんと同じ……。
んー、私がバーンさんやズィードさんと知り合いだってのは、まだ今は言わない方がいいかなぁ。
なんでベルグさんがその人を探してるのかが分からないし、まだこの人のこともよく……悪い人ではないと思うけど……。
「んで? 嬢ちゃん達は誰を探してるんだ?」
「え? ああ……」
それくらいは言っても大丈夫……かな。
「んと、シェリルって女の子を探してるの」
「シェリル……?」
「うん。私達の友達。北の方に行ったのは分かってるんだけど、どこにいるかが……って、どうしたの?」
なんか凄い顔してるけど……。
「あ、いや……どっかで聞いた名前だと思ったんだが……どうにも思い出せなくてな。この歳になると、人の顔も名前も1回会ったり聞いたりしたくらいじゃ覚えられなくてよ。まぁ、珍しい名前でもないし、多分気のせいだろう」
「そう? てか、ベルグさんって何歳なの?」
「今年で43だ」
「あ、もうちょっと若いかと思ってた」
「お、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。嬢ちゃん達は?」
「あら! レディに歳なんか聞くものではなくってよ?」
「だははっ! 面白い奴だなぁ……ま、17、8ってとこか」
「ふふっ! まぁ、そんなとこだね」
「それにしても、お互いどこにいるかも分からねぇ奴を探してるとは……不思議な縁だな」
「しかも、こんな場所でこんな風にね」
「だははっ! ちげぇねぇ……なぁ、よかったら途中まででも一緒に行かねぇか? 助けてもらった礼もしてぇし、ぶっ倒れておいてなんだが、多少は役に立つと思うぜ?」
「そだねぇ……」
断る理由もないし……っていうか、ほっといたらこの人また遭難しそうだしなぁ。
でも、確かにこの人……かなり強い。
さっきまでは気を失ってたから分からなかったけど、今身体から滲み出てる魔力が半端ないもん。
それにベテランだし、私達より経験も知識も豊富な筈……いてくれるのはありがたいかも。
「……うん。私はいいよ。あとはうちのリーダー次第だね」
「そっか。リーダーさんにも気に入られるといいんだが……」
「ティアー! ちょっと手伝ってー!」
「あ、はーい! じゃ、聞いてくるね」
「ああ、頼む」
私は馬車の中で調理をしていたアスナの下へ行き、ベルグさんと話したことを伝えた。
「……って感じなんだけど、どうかな?」
「いいんじゃない? 悪い人じゃなさそうだし。それに、ほっといたらまた遭難しそうだもん。あの人」
「はは……だよね」
やっぱりアスナもおんなじこと考えてたみたい。
「それにしても、ベルグさんはなんでスカークさんって人を探してるんだろうね」
「さぁ? 聞いてみよっか」
「んー、答えてくれるかなぁ……ベルグさんさ、なんか隠してると思わない?」
「え? なんで?」
「さっき名前聞いた時、一瞬だけど間があったでしょ? 最初はまだ頭がはっきりしてないからかなって思ったけど、そのあとは普通に話してたし、冒険者ですかって聞いた時にも変な間があった。だから、何か人に言えない事情があるんじゃないかなと思ってさ」
「あー……」
確かに……そう言われるとそうかもしれない。
まぁ、私達もベルグさんに隠していることはあるし、向こうもまだ私達を信用してないのも当たり前か。
「ま、とりあえず今は食事にしよ。早く元気になってもらわなきゃだし、せっかく一緒に旅するんだから仲良くしたいしね。いきなりぐいぐい聞かない方がいいよ」
「だね! さっすがリーダー!」
「何がさすがなんだか……っていうか、いつから私がリーダーになったの?」
「いいからいいから! さ、お鍋運ぶよー!」
「もー……」
「ベルグさーん! オッケーだってー!」
「おー! そいつぁよかった!」
「ふふっ……もう仲良くなってるし」
その後、私達は野菜スープで乾杯し、焚き火にあたりながら親睦を深めたのだった。
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「お、見えてきたぜ」
「わぁ!」
「雪で真っ白……綺麗な町だね」
「あれが今使える北の玄関口の一つ、フロストだ」
ベルグさんとの出会いから一週間。
あの後も何度か吹雪に遭った所為でなかなか進めなくて、予想よりかなり時間が掛かってしまったものの、なんとか無事にその町を見ることが出来た。
山頂から見えたフロストの町は、これまでの景色と一緒で真っ白だったけれど、久しぶりに人の息吹を感じることが出来たからか、とても綺麗に輝いて見える。
「今のってことは、他にもあるんですか?」
「ああ、昔はニーベルグ領から北に行く場合、首都から北に真っ直ぐ進むルートを通るのが一般的だったんだ。山をいくつか超えてな。んで、その先にコールドシューズって町があって、前はそっちが北の玄関口であり中継拠点だった。ただ、そっちのルートは魔物や竜が多いし、道もかなり険しい。そこで、ニーベルグとオリンポスが共同で新たな道を探し、今ある二つのルートを開拓したって訳だ。アスナ、世界地図を開いてくれ」
「ん、はい」
「ありがとな。で、今通ったのはここ。町の名前をとってフロストルートと呼ばれている道だ。多少時間は掛かるが、一番楽なルートだな」
そう言いながら、ベルグさんはフォッケンの真北にある山脈を指差す。
シェリルの痕跡を辿って北上していた私達だったが、その途中で完全に彼女を見失ってしまう。
そこで私達はとにかく北を目指すことにし、道中にあった村でこのルートを聞いたのだった。
「んで、ここがコールドシューズルート。首都ニーベルグの真北だな」
ベルグさんの指が、今度は地図の真ん中右寄り辺りを指し示していた。
そこにも山脈の絵が描かれていて、その先に小さくコールドシューズという文字が見える。
「で、これがヒョルドルートだ」
最後に指は左へと向かい、オリンポスから北西にある山脈を指す。
「ふーん……その三つだけ?」
「他にもあるっちゃあるが、今挙げた三つより遥かに険しいルートになっちまうんだよ。北の大地はこの山脈群に守られていて、平坦な場所はほぼ無いと言っていい。僅かにある平坦な道も、魔物や竜の巣窟になっててな。冒険者が依頼を受けて護衛することもあるようだが、かなりの確率で命を落としてる。だから、大体の奴がこの三つの内のどれかを通って北に行く訳だ。まぁ、今でも最短距離で北に入れるのはコールドシューズルートだが、安全面や利便性を優先するのなら、今通ったフロストルート、もしくはオリンポスから北西に向かうヒョルドルートになる。ただ、ヒョルドルートは今使えない」
「なんで?」
「レアの軍勢とティーターンの軍勢がこの近辺で睨み合ってんだよ。コールドシューズ辺りまでなら平気だが、それ以上西には行かない方がいい。最前線に行っちまうと、あらぬ疑いをかけられて追われる羽目になるからな。因みに、今見えてるフロストも、かつての玄関口であるコールドシューズも、元々はティーターンの属国が治めていた町だ。だが、両方とも今はレアの属国になってる。つまり、それだけティーターンが押し込まれてるって訳だ」
「やっぱり……もう戦争は始まってるんですね……」
「……ああ、そうだ」
アスナとベルグさんの声が、私にはやけに悲しく聞こえていた。
遠くに感じていたそれが、今は現実としてそこにある。
この寒さとは別に、少し身体が震えた。
「といっても、軍が正面からぶつかってる訳じゃない。もちろん小さな小競り合いは毎日起きてるが、死傷者の数もまだ数えられる程度……レアは直接的な攻撃ではなく、ティーターンの属国を武力と財力で味方につけ、徐々に領土を拡大しているってことだ。だが、ここにきてそれが止まり始めている」
「侵攻をやめたの?」
「いや、やめた訳じゃなく、ただ単純に上手くいかなくなってきたってだけだ」
「それって、他の5大国家が出てきたからですか?」
「それもあるな。既にオリンポスやケルトは北に軍を派遣し、中立な立場で戦争を止めようとしている。ギリシアも参加してたんだが、アルメニアが滅んだことで竜族に備えなきゃいけなくなっちまってな。今は軍を引いている。ニーベルグは表立って行動をしていないが、刺激しない程度に水面下で動いてる感じだ。ただ、恐らくレアが止まったのはそれだけが理由じゃない」
「うーん……お金がなくなっちゃったとか?」
「ああ、それも可能性としてはあるな。だが、今考えられている理由は大きく二つ。一つは今残っているティーターン近辺の属国が、他の属国と違ってレアに寝返らなかったことだ。鞍替えした属国達より付き合いも長いし、よっぽど忠誠心が強いのか、それとも何か弱みを握られてんのかは分からんが……まぁ、他の5大国家が出てきたからってのもあるかもしれねぇな。んで、もう一つが……魔導兵器だ」
「魔導兵器……って何?」
「魔石を使った兵器の総称だ。もちろんレアも使ってるし、ギリシアなんかには"バリスタ"っていう対竜魔導兵器がある。で、ティーターンが使ってんのは魔石人形……所謂ゴーレムってやつだ」




