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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第5章:それぞれの戦場で
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第245話:復興

 

「いけるか? エクスカリバー」


「うーむ……我もこれだけ巨大なものを戻したことはないのう。まぁ、やってはみるが……」


「頼む」


 あのいくさから今日で一週間。

 世界は一応の平穏を取り戻し、皆それぞれの日常を取り戻し始めていた。

 あの後、俺達は一足先にアディード様の下へと行き、何があったかを全て話した。

 全てを理解してくれたアディード様は、俺達に一旦ケルトへ向かうように指示を出し、その後フリードリッヒ様と共に全世界へ向けて戦が終わったことを宣言。

 ケルトでオーランド様やジークさんとそれを聞いた俺達はそのまま少し休養を取り、ジークさんと一緒に村人達を送った後、再びこのギリシアへと戻ったのだった。


「し、しかしなぁ……」


「ん?」


 エクスカリバーはきょろきょろと辺りを見回している。

 ああ……なるほど。


「ははっ……そういうことか」


「こ、こう見られると……」


 今俺達は、崩壊したギリシア城の目の前にいる。

 そして、多くの人々が俺達を囲うようにしてじっとこちらを見つめていた。

 みんなギリシア復興の為に駆けつけた人達で、もともとギリシアにいた人はもちろん、手助けをする為に他国から無償で来てくれた人も大勢いる。

 普段はみんな各々復興作業をしているのだが、城を一瞬で直す魔法があると聞いて集まってきたらしい。

 どこで漏れたんだか……。


「伝説の聖剣でも照れるんだな」


主人あるじは顔を隠しているから平気なのであろう!? 我だって照れることくらいあるわ!」


 俺はフード付きの黒いマントを羽織り、グラウディさんがくれた予備の黒いマスクを付けていた。

 まぁ、がっつり魔法も使ってるし、こんなんじゃすぐバレるかもしれないが……ないよりはマシだろう。


「エクスカリバーが顔を赤らめているのなんて初めて見たよ。なぁ、レヴィ」


「ふふっ……はい、ロード様。これはよく見ておかないといけませんね」


 いつかの仕返しだ。


「む、むぅ……2人してからかうでない! えぇい! 速攻で終わらせてくれるわッ!」


 まるで戦う前に言うようなセリフだな……。


「いくぞ……!  "原点に帰す聖剣の導き(エクスリワインド)"ッ!」


 次の瞬間、聖剣が眩いばかりの輝きを放つ。

 直後瓦礫が次々に浮き上がり、まるで積み木を重ねるかのように城が元の形へと戻り始めた。


「おおっ!?」


「す、すげぇ! あっという間に戻ってくぞ!?」


「マジかよ……」


 周りから感嘆と驚愕の声が聞こえてくる。

 確かに……何度見ても凄い。

 しかも、これだけ巨大なものだと尚更だ。


「ぐぬぬッ……こ、これはしんどいな……!」


「だ、大丈夫か?」


「いけそうだがッ……魔力が全部持っていかれそうだ……!」


 結構多めに魔力を入れたんだが、さすがにこれだけ大きいと厳しいか。

 他の武具達にも動いてもらっているし、エクスカリバーの力は日に数度が限界かもしれない。

 直す建物の優先度を決めとかないと駄目だな。


「おー……こりゃすげぇ」


「あ、ヴォルクスファング様。お疲れ様です」


「こんにちは。ヴォルクスファングさん」


 ヴォルクスファングさんも無償で来てくれた人達の1人。

 粉砕魔法で瓦礫を粉々にして、他の人の魔法でそれを建材へと再利用しているらしい。

 また、町の中にそびえ立つ、石化したファーブニルの身体の撤去も行なってくれている。


「おう。なんかすげぇことになってるって騒いでたからよ、休憩がてら来ちまったわ」


「そうでしたか。お紅茶でよければございますが、お飲みになられます?」


「ああ、いただくとしよう」


「ロード様は?」


「うん。貰うよ」


「かしこまりました」


 城が戻るのを見つめながら、俺達3人は適当な瓦礫に腰掛け、レヴィの淹れてくれた紅茶を飲む。

 うん……やっぱり美味い。


「あ、ヴォルクスファングさん。そういえばヴィヴィアンさんって……」


「まだ目覚めておらぬようだ。今回は……ちと長いかもしれんな」


 ヴィヴィアンさんは戦が終わった後、戦場から少し離れた位置で眠っているのが見つかった。

 もう一週間経つが、まだ起きていないのか……。


「そうですか……でも、無事でよかったです」


「うむ。あ、そういや……お前宛てに手紙が来てるぞ。この光景と美味い紅茶で忘れておったわ」


 ヴォルクスファングさんはポケットから何枚かの紙を取り出すと、それを俺に手渡した。


「こ、こんなに? なんでヴォルクスファングさんを通して……」


「念の為だろうな。儂を通せば、奴らにバレるリスクも減るだろう」


「なるほど……じゃ、ちょっと読ませてもらいますね」


「おう。しっかし美味いなこの紅茶は……おかわりを貰ってもよいか?」


「ええ、もちろんです」


「ありがとう。むおっ!? あんな巨大な瓦礫が……!」


「わぁ……凄い光景ですね……」


 そんなやり取りを聞きながら、俺は貰った手紙に目を通す。

 まずは……あ、ズィードさんからだ。


 "よう。とりあえずお前の存在は隠しておいたぜ。ヨルムンガンドは逃げたが、かなりのダメージを負って再起不能ってことにしといたわ。ただ評議会の連中が若干騒ぎやがってよ。ドラゴニアに行けとかぬかしやがったから軽く脅しといた。そしたら黙ったから、まぁ心配すんな。俺はもともと受けてた依頼が溜まってて力を貸せねぇが、ギリシアのことをよろしく頼むわ。んじゃ、またな"


 評議会……確か、冒険者ギルドの第三者機関だったな。

 各国の政府関係者や豪商、貴族、引退した元高ランク冒険者などから構成されているもので、冒険者ギルドが私利私欲の為に動かないよう監視する……ってのが役目なんだけど、何かと黒い噂がある。

 高ランクの冒険者をそれこそ私利私欲の為に使ったとか、冒険者ギルドの金を横領したとか、他にもいくつかある……全部噂だけど。

 それにしてもドラゴニアに行け……か。結構無茶言うんだな。

 まぁ、ズィードさんが心配するなって言うなら大丈夫だろう。

 次は……ディーさんとルカさんからか。


 "やっほー。まずは身体を治してくれてあんがとね。おかげで助かったよん。あ、記憶が戻ってよかったね! レヴィちゃんにも笑顔が戻ったみたいだしよかったよかった。んで、俺はルカちゃんと一緒に北の方にいるからさ、なんかあったら声かけてよ。あと、ソロモンにもよろしく。んじゃ、またねー"


 "ロードさん、傷を治してくださってありがとうございます。私はディーさんと一緒に北の戦を止めるべく動くことにしました。北に来るようなことがあれば連絡ください。ではまた"


 ディーさんとルカさんは北に行ったのか。

 確かにこっちの戦は終わったけど、北の戦乱はまだ……。

 俺にも何か出来ればいいのだが、その前にやることもあるし、出しゃばっても仕方ないか。

 もし声が掛かったら、その時は全力を尽くそう。

 さて、次は……え? こ、これ……!


「バーンさんから……! 確か、北の戦乱の中心になっているレアに潜入してるんじゃ……」


「ん……ああ、バーンのやつからも来ておったな。どっからどう何を聞き、どうやってこれを儂に送ったかは知らぬが……あやつは通常の秤では測れない男よ。考えるだけ無駄無駄」


「そ、そうですか……」


「そういえば……ズィード様も同じようなことを仰っていましたね。心配するだけ無駄だと……」


「うむ、無駄だ。物凄く無駄だ」


 ……多分、みんな心配して損したことが多かったんだろうな。

 と、とにかく読もう。


 "久しぶりだなロード。色々あったのは知ってたんだが、手を貸してやれなくて悪かったな。ま、お前ならなんとかするだろうと思ってたよ。それでな、少し暇が出来そうだからそのうち会いに行くわ。同封してある魔石を近くに置いといてくれ。んじゃ、またその時に"


「ひ、暇って……あ、魔石……これか」


 封筒の中から小さな青い魔石を取り出す。

 何に使うんだろうこれ……。

 会えるのは嬉しいけど、暇なんかあるのか?


「ん? あ、まだある……えっ?」


 ブ、ブランスさんから?

 あの人から手紙……なんか意外だな。

 ええっと……。


 "頼みがある。暇な時で構わないから俺の国に来てくれ。場所は地図に書いてある。よろしく"


「……なるほど。あの人らしい」


「これは依頼……ですかね」


「あやつめ……すまんなロード」


「あ、いや、全然大丈夫です。頼みか……なんだろう?」


「急いではいないようですね。恐らくギリシアが復興してから来てくれ、ということなのでしょう。とりあえず、地図は私が預かっておきます」


「ああ、頼むレヴィ。そうだな……ギリシアの復興が済んだら行こう。それ以外にもやりたいことがあるけど……まぁ、それはどこでも出来るかな」


「やりたいこと?」


「うん。武具達の望みを叶えながら、ちょっとゆっくりしようかと思って……レヴィと」


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30.3.25より、書籍第2巻が発売中です。 宜しくお願い致しますm(_ _)m
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