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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
エピローグ
63/63

異世界転生なのです、お姉さん! 《3》

いよいよ本編最終話となりました!o(^o^)o

 お母様の結婚式も、つつがなく終わったよ! 領民の皆もお祝いに教会に来てくれて、あまりの人の多さに思わず花畑のフラワーシャワー用の花が無くなるかと思ったね!


「お嬢様」

「はい……」

「これは何ですか」

「色打掛(うちかけ)(かんざし)?」

「なぜ ? なんですか」

「そ…、それは……」


 アレ、またなんかやらかしたかな私。お母様のウェディングドレス作りと平行して “フラワーマーケット” 中に結婚式を挙げるぺルルと、その次の日に結婚式を挙げるグレーノの結婚式の衣装も作ってただけなんですけど。


 ぺルルはお屋敷を辞め、街でレジンアクセサリーの専門店を開いている。そのアクセサリーはコルポールティス商会からも注文を受けていて、それがきっかけで隣国のコルポールティス商会の見習い君の一人と知り合いになり、その見習い君と結婚することになったの。

 見習い君もぺルルと同じで孤児院育ちらしく、これからはぺルルと一緒にこの領地のコルポールティス商会で働きながら生きて行くと言ってた。だから、二人の門出に頑張ってウェディングドレスとタキシードを作ったよ!

 ぺルルのウェディングドレスは、前世映画で見た実写版シンデレラのウェディングドレスを参考に作ったの。ドレスの裾の小花の刺繍がすごく素敵だった。だからせっせと花の刺繍を入れて、肩を出さないようにオーガンジーのボレロも作って、それにも刺繍を入れたの。とっても可愛いウェディングドレスが出来たと思う! うん、可愛い!


 グレーノは、隣国の先のそのまた先にある国の商人の娘さんと結婚するの! なんでそんな離れた国の人と? って。そんな離れた国の商人さんがフィーディさんと知り合いだったからだよ!

 商談で隣国に来た時に、フィーディさんがコーメンツ辺境伯領に行って帰って来ないと言う話を聞いて、クンルダント領から船でこっちに来たのが出会いなの。グレーノは今、私付きの従僕(フットマン)だからね!

 でね、私はその商人さん達を見て大騒ぎしてしまったよ。だってその商人さん達、黒目黒髪で和服みたいな服を着てたんだもの!

 グレーノのお相手はその商人さんの三女、ヴェルマさん。長男さんがお父さんのあとをつぎ、お姉さん達も商人さんに嫁いだらしく、 “この領地には面白い知らない物がたくさんあるから、私はこの国で暮らします” と、こっちのコルポールティス商会で働き始めたのが出会い。

 ヴェルマさんの見た目が日本人みたいだったから、調子にのって婚礼衣装を作らせてもらったのがいけなかったのか? 生成(きな)り色と赤色の反物をお国から取り寄せてもらい、生成り色の反物はそのまま引き振り袖に。赤色の反物は色打掛にして、裾には “ふき” と言われる綿を入れて厚みを出した部分があるから、せっせと綿をいれた。裾周りに厚みのある部分を作ることで足に衣装がまとわりつくのを防止すらから、この “ふき” の部分は重要なの。


「お嬢様、まずこちらから」


 私の前のソファーにはフィーディさん、フィーロさん親子のほかに、ヴェルマさんのお父さんとお兄さんとお姉さん達もいます。皆でいなくても、よくない?


「こんな装束は初めて見ますよ」

「ふぇ」


 えぇー、お兄さんマジですか! 和服着てるのに色打掛ないのー!


「この柄には、何か意味があるのかしら」


 えぇー、お姉さんまでー。


「鶴は千年、亀は万年。鶴は夫婦むつまじい老境のしょーちょーなの。菊も、長寿やむびょーそくさいのしょーちょーなの」


 色打掛だから、おめでたい吉祥紋様(きっしょうもんよう)の鶴を刺繍して、大輪の菊の花を刺繍した。そして色打掛に合わせるように、赤い小花のつまみ細工を中心に、たくさんの小花をつけた大きな簪を作ったの。

 小花がたくさん集まってて、とっても可愛いのよ。そして、ゆらりと垂れる藤の花のような房下がりが華やかさをましているの。あっ、やらかしてるのはこれだ!


「おわかりのようですね、こちらを登録です。もちろん、色打掛も登録します」

「はい」


 フィーディさんにきちんと商品説明するよ!


「それにしても、こちらの簪は豪華ですね。うちで取り扱いがあるつまみ細工は、ピンに小花をつけただけですよね」


 それはねフィーロさん、思わずヴェルマさんの黒髪を見て作ってしまったんだよ! 着物も懐かしかったし!


「お嬢様!」

「はい」

「私を、お嬢様の弟子にして下さい!!」


 ヴェルマさん、意味わからないよ? ヴェルマさんは商人だよね。私の後ろに立っていたグレーノのその横にいたヴェルマさん。いったいどうしたの?


「私、こんな素晴らしい簪を初めて見ました。お嬢様がおっしゃる通り、私の国の服にも黒髪にも合うと思います。このつまみ細工を、ぜひ私の国にも広めたいのです。私がお嬢様の弟子になってつまみ細工を作って、国に送ります!」

「ヴェルマ、頼んだぞ!」

「はい、お父さん!」


 ヴェルマさんとヴェルマさんのお父さんがやるきです!


「お嬢様。専門学校があると聞きましたが、私の国の者でも入ることはできますか?」


 ヴェルマさんのお兄さんが聞いています。うちの専門学校は、洋裁ですよ? まぁ、その中で編み物とかレジンとかつまみ細工とかも教えてるんですけども。


「できるけど、つまみ細工だけの専門学校じゃないですよ。あっ、和裁の専門学校作ろうかな? 着物とかつまみ細工とか水引とか組紐とか、和物の学校作ってみようかな?」


 話が大きくなってきたな。結婚式が終わってから考えようっと。









 ぺルルとグレーノの結婚式も終わり、“フラワーマーケット”もあと四日です。お屋敷の使用人さん達も “フラワーマーケット” の期間中には必ずお休みがあり、街に遊びに行っていますよ。

 今日はキャメリアもお休みで、グレーノも有給休暇中。と言うことで、私は一人で庭園へゴー♪ 庭園を抜けると、この領地で一番最後に造られたメイドさん達の女子寮と、従僕達の男子寮がある。

 ちなみに、お屋敷から老人ホームと孤児院がある場所の間には家庭を持つ使用人さん達の住宅があって、以前は街に住んでいた御者のアガトや庭師のシィリンゴや厩番のベトゥーロなどが暮らしているの。グレーノ一家もここに暮らしているよ。

 野菜畑を抜けると柿畑と葡萄畑、そこをさらに通り抜けるとナラの木がある。ナラの木は、“街びらき”の時からさらに大きくなった。今は、木の周りを大人が2人で手を繋いでも互いの手が届かないほどに大きい。

 今日はナラの木の下でちょっとお休みなの♪ 最近結婚式が多くて頑張ってきたからね! 頑張る8歳児にも、お休みは必要ですとも! ナラの木の下で、ゴロゴロするんだー。


「ふみゅ?」


 あれ? 最近じっくりナラの木を見てなかったからか、なんかナラの木の幹がひび割れてない?


「た、大変ーー!!」


 急いでナラの木にくっついて、手でガサガサの幹に触れて確認。縦にくっきりとした傷みたいなものがある。傷をたどって上を見上げると、まっすぐ上に伸びていた傷がアーチを描きながら横に伸びていく。そして、その傷は今度はまっすぐ下の根元に向かって伸びていて、少し離れて見るとその形はまるで上が半円アーチ形のドアみたい。

 何、これ? 首を傾けつつドアみたいな傷の真ん中に少し体重をかけ手を置いた時


「ほぇーーー!!」


 突然木の幹の感覚がなくなって、木の中へダイブ!


「いたたたた……」


 何よこれ! と顔を上げれば、目の前は真っ暗な空洞? 横を向けば、木の幹の一部が半円アーチ形のドアを押し開けた時のような形になっていて、後ろを振り向けばいつもの畑が見えた。

 “えぇーーー!!” 思わず、前、横、後ろを二度見三度見。何度かそれを繰り返したあと、目の前の真っ暗な空洞の中に、扉が見えた。私は “ひゅー” と息を飲む。

 あれは、見知った扉。あの時、何度も施錠を確認してバイバイした扉だ。私は “ハッ!” としてポシェットから鍵を捜す。見つけ出した鍵を鍵穴に差し込んで、“カチャリ” と音がした。

 ギギギィと扉を開ければ中は真っ暗だけど、後ろの畑から射し込む光で中がうっすらと見えたの。中には、あの日と同じように農機具があって、自転車があった。思わず、ぐっと泣きたくなったよ。あの時小さな棚の一番下の引き出しに入れた封筒は、どうなっただろうか。

 そっと引き出しを開けてみると、封筒はない。そのまままっすぐ進み、物置のドアノブのつまみの部分をくるりと回して物置の扉を開けた。




 あぁ……、木々の緑がまぶしい。向かいの山に生い茂る青々とした木々の緑。辺り一帯の生命に満ち溢れた山の景色。懐かしい、懐かしい日本の匂い。足が自然と前に進み出て、思わず視線が向かいの山の下を見た。


「100……均」


 あの時と変わらない100均の看板。そして、振り返った先にあった物。コンクリートブロックでできたような物置、その隣にある二階建て一軒家の日本家屋。その奥には、五分咲きの桜の木。ポロリと、涙が流れ落ちた。

 五年前と同じ光景だけど、一つだけ違う物がある。当時パステルカラーの車があった場所には、三列シートのミニバン。車がおっきくなってる。お姉さん、いるよね?

 私は流れる涙を袖でふいて、フラフラと玄関の前に立つ。震える指先が、玄関チャイムに触れた。“ピンポーン♪” あぁ、おの日と同じ音。


『はーい』


 聞こえたのは女の人の声。パタパタとスリッパの音がして息を飲む。スリッパから何かに履き替える音がして、がらがらと玄関の引戸が横にスライドした。

 じっーとこちらを見つめるその人の顔は驚きにみちあふれ、目の前で固まってる。再び、私の目から涙が流れ落ちた。そんな私を見て、よりいっそう目を見開いたお姉さん。

 私はまた涙をふくと、あの時のことを思い出す。初めてお姉さんに会ったあの日、私はどうしただろうか。そうだ、ここはあの日のように言うしかないじゃないか。

 私は右手の人差し指をビシッ! っとお姉さんに向け、左手を腰にあて胸を張って言ってあげるの



『異世界転生なのです、お姉さん!』







【 fino 】


一口メモ


エスペラント語 → 日本語


ヴェルマ → 温かい

fino → 終わり




※ここまでお読みいただき、ありがとうございました!m(__)m


4月から書き始めて、今年中に完結することができました。o(^o^)o


こんな所で終わるのかぁーって言う終わりかたなのですが、最初に “ほのぼのした心やすまるものが書きたいなぁー” と思った時に、ふと頭の中に浮かんだ場面が最後のこの場面でした。

だから、この浮かんだ場面にたどり着くためにお話を作っていきました。とは言え、最後のほうは急ぎ足で考えていたキャラも出でないし、今年中はお休みすると思いますがこの後番外編が少し入ります。

まぁ、“うちのお嬢様は変わってる!” 的な?(^o^;)

2歳から10歳くらの間のお話になると思いますので、とりあえず “完結”はまだつけずにおきます。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!m(__)m

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