表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若葉のカムイ  作者: ☀シグ☀
第一章:東へ
69/74

六十七話:白の学舎

 摘心したバジルの蕾を水につけていたら、花が咲きました。

 バジルの花は、始めはミントのようなスースーと清涼感がきて、途中からバジルの香り、次にボソボソ感とすこしのえぐみがありました。

 すこし乾燥しちゃっていたものを食べたので、ボソボソ感とえぐみはそのせいかもです。


 今回は早足です。


 ヨミちゃんにいろいろ教えてもらって、その夜。


「祖たる鷲の羽搏き……神解き砕く不倒の城壁……」


 今日もメラニーが広場で魔法の練習をしている。

 でも、様子がおかしい。


「篠突く雨の悉くを弾き……天分かつ無二の剣……」


 唱えている魔法は、昨日の夜のものと同じ。

 でも、なにも起こらない。

 メラニーの魔力は動いているし、その両手で持った杖にもたくさんあつまっているけれど、風は生まれていない。


「正解じゃなかった……? いや、昨日は……ならどうして……」


 首をかしげて、うんうん唸っているメラニーを眺めて、僕も首をかしげる。


 帰る時間になるまで、メラニーは昨日の魔法を使うことは出来なかった。



□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



 翌日。アベルとギルスが街を案内してくれた。

 北の大通りは物を売っているヒトが多いらしくて、色がたくさん使われていて、模様が入ったお洒落な服のヒトが多かった。

 大きな鞄を背負っていたり、荷車もあった。


 あ、そうそう! ヒトよりも大きな亀さんがたくさんの鞄を背負っていたんだ! 小亀竜(ミニタラスク)っていうんだって。

 すっごく大きいから、道の半分くらいを塞いじゃって、連れてきたらしいヒトが怒られていた。


 亀竜(タラスク)はもっと大きくて、爪や頭の角や尻尾、甲羅の棘に毒があるんだけれど、それは育つ環境で毒を持たないと生き残れなかったり、食べものに毒が入っているからなんだって。

 だから、毒が必要ない環境で、毒のない食べものを食べて育てられた小亀竜(ミニタラスク)は、毒を持っていないし、力持ちだしで、大きな荷物を運んでもらうのに大人気なんだって。


 まるく削られた角がうしろ向きに六つ生えた頭を、怒られているヒトへとじっと向けていた姿が、なんだか印象的だった。


 アベルとギルスが教えてくれる場所は、どこもかしこもお酒の匂いでいっぱいで、「ガハハ!」って笑い声もいっぱいなところだった。

 とってもたのしそうな場所だったから、たのしい気分になりたい時にまた行きたいな。


 アベル達と別れて、お昼ごはんを食べたあとは、クエスト!

 今日は白の学舎? に行くんだって。


 お屋敷の扉を触ってすこし下がると、扉がギーっと開く。

 昨日のお昼もだったけれど、お屋敷の男のヒトが言っていた通り、僕でも開けるようになっている。

 あの男のヒトには、お礼を言っておかないとね。


 お屋敷に入ると、さささーっとまっすぐ掲示板へ。

 お目当てのクエストをジャンプして咥えて取ると、次は受注窓口!


 今日も土ごーれむさんに持ち上げてもらって、クエストを受けて、お屋敷から出る……!


 ふっふーん。

 なんだかとっても、冒険者って感じ。

 今日もしっかり解決しちゃうよ!


 お屋敷の広場を抜けて、門から出る。

 すぐに右に曲がって、お屋敷の隣りの白い建物。

 ここがトリシアが言うには白の学舎? なんだって。


 大きな三角の左側に、縦に長い四角が付いたような白いレンガの建物は、門に使われている赤茶色のレンガを際立たせていて、とっても綺麗だった。

 それに、太陽の光でなんだかキラキラしている気がする。

 たくさんある窓には、模様を作る様に硝子がはめ込まれている。


 縦に長い四角の建物に付いた窓の一つ。

 その向こうから覗くなにかと目が合った、と思ったら、下へと消えて行った。


「テレッサせんせーへんなのきたー」


 大きな三角のまんなか部分にある出入り口。

 開けっ放しの両開きの扉の向こうから声が聞こえた。

 さっき覗いていたヒトかな。


 意を決して中へと入る前に、足踏みをして、足についた土や砂を落とす。


 よし!


 気を取りなおして、入って行く。

 白いツルツルした石の床。

 天井は高く、テントの様な骨組みが見える。

 夕焼け石がところどころ置いてあって、とっても温かい雰囲気。


 ふと、左の方から、たたたーっと明るい黄色の長い髪を、左右に大きく揺らして、女の子が走って来る。

 女の子が僕と目が合う。


「きゃぁあああ!!」


 悲鳴が上がった。


 女の子は悲鳴を上げながら僕へと向かって走って来て、


「かわいい!」


 と僕の頭をガッシリと両腕を僕の首に回した。

 女の子にうしろに押され、足が滑って体勢が崩れる。

 女の子を支えきれずに、うしろに倒れた。

 倒れ込む様に、女の子が僕の上にのっかる。


 び、びっくりした。

 悲鳴もびっくりしたけれど、たいあたりされたのもびっくりした。

 この女の子、いったいどうしたんだろう。


「おねえちゃんがいっていたとおり! とってもふかふか!」


 女の子の腕にさらに力が込められる。

 痛くはないけれど、首が絞まる。


 うぐぐぐ。

 だれか助けて―!


「あー! せんせーアニーちゃんがへんなのおそってるー!」


 僕の首を絞める女の子と同じ方向から来た男の子が、こっちを見るなり引き返して行った。


 白に水色の線が入ったゆったりとした服を着て、頭巾を被った女のヒト――テレッサを男の子――ジルが呼んで来るまで、僕はアニーことアンに首を絞められていた。


 テレッサに助けられて、アンとジルに挨拶した。

 その時にはアレクトにウィストール、ヘデラ、ストライア、アシュリカと、お祭り前に知り合ったごにんも来ていた。

 ごにんはここに住んでいるんだって。

 今日はこのななにんが僕と同じクエストを受けたみたい。


 みんなで中で繋がっている隣りの建物に移る。

 門の方から見ると、縦に長い四角だったけれど、奥にも長いみたい。

 光沢のある木の床に、澄んだ空気、たくさんの窓からは太陽の光が入る。

 六つの背の低いテーブルにたくさんの小さな椅子があって、一番奥には、カウンター越しに台所のような空間が見えた。


 みんな一斉に好きな場所に座っていく。

 日が当たっている場所に座ろうとキョロキョロしていたら、よいしょー! とアンに持ち上げられて、隣りに座ることになった。


 最初にテレッサは、紙で作ったお金を使って、数字について教えてくれた。

 僕は“二”から上は全部“いっぱい”でいいと思うんだけれど、ヒトと関わるなら、そうも言っていられないみたい。

 がんばって計算出来るようにしないと!


 紙で作られたお金をたくさんあつめるゲームで、ウィストールが一番になって、「このお金に働いてもらって、さらに増やします」って得意気に言っていたけれど、どういうことなんだろう。


 あ、そうそう。

 硬貨っていう小さな円盤が、この町で使われているお金みたい。

 冒険者ギルドや商人ギルド? とか、いろんなギルドが認めた硬貨で、ほかのお金を使っているところももちろんあるらしいけれど、一番使われているのは、この硬貨なんだって。

 なんだかよくわかんないけれど、すごいね。


 銅貨、銀貨、金貨があって、銅貨が千枚で銀貨。

 銀貨が百枚で金貨。

 銅貨一枚でも買える物はパンとか、小さなリンゴとかたくさんあって、このクエストの報酬は、銅貨五枚なんだって。

 あ、お肉は銅貨三枚から買えるんだって!

 そう考えると、銀貨とか金貨って、なにを買うためにあるんだろうね。

 やっぱり、一度にたくさんお肉を買うのかな。


 そのあとはすこし休んで、裏のお庭でセンチメートルとメートルについて教えてもらった。


 うん。

 よくわからなかった!


 センチが百個でメートルなのはわかったけれど、目で見てパッとなんメートル! とはわからないね。

 お庭の中に隠された模型を探し出して、形と大きさを伝える役と、伝えられた情報を元に模型を作る役にわかれるゲームをしたけれど、模型を見つけるまではいいんだけれど、伝えるのがとーってもたいへんだった。

 練習しないと、だね。


 終わりごろにテレッサの服の裾に、いろんな色のお花の様な模様を見つけて、『綺麗なお花だね』って言ったら、「はい。天の遣いもこふわです。空の花束とも言われているのですよ」って、皺のある顔を綻ばせていた。

 もこふわ……不思議ー。


 太陽もかたむいて、空も橙……オレンジだっけ。

 みんなでお屋敷に行って、クエスト完了と報酬受け取りをして、白の学舎にもどって、テレッサに別れの挨拶をした。

 その時に「寄り道して遅くなると、エイダに攫われてしまいますよ」と、テレッサがアンに注意していて、アンが攫われないように、『僕がお家まで送るよ!』と言ったけれど、テレッサに「この時間帯は、冒険者達が帰って来るから真っ直ぐ帰れば大丈夫」って言われたから、僕はそのままお屋敷の広場に帰った。

 でも、今考えてみると、アンは一度捜索願いが出ているよね。

 大丈夫なのかな?


 うーん。


 きっと大丈夫だよね!

 よーし、日も落ちて来たし、メラニーが来るまで寝ようっと!


 読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=714406171&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ