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若葉のカムイ  作者: ☀シグ☀
第一章:東へ
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五十九話:建物の中を探検しよう!


 部屋が暖かくなってきた気がする。


 しっかりとした体に、ピチーっと張り付く白い洋服。

 青く染められた革のズボンを、中の太く長い脚がパンパンに膨らませている。


 かついだ猪さんはでーん! と大きいけれど、かついでいるヒトもででーん! と、とっても大きい。


 そもそも、カンタラのヒト達って、背が高いヒトが多いのかも?

 僕が小さいから、そう見えるだけかな?


「ビル、その大砲猪(キャノンボア)はなんだ?」


 マットの声がうしろからする。


 ビル? それがこのヒトの名前みたい。

 そういえば、さっき屋根の上にヒトがいたって時に、テオが言っていたね。

 キャノンボアは、あの猪さんのことかな?


「いい筋肉との出逢いには、いい肉が必要だろう? ハグレを探して獲って来た。血抜きも済ませて、ヨアンの所で内臓も抜いてきた。後は焼くだけだ」


 よくわからないけれど、キャノンボアのお肉を食べようってことかな?

 やった!


「待てビル、焼くのは皮を剥いでからにしてくれ。キャノンボアの皮は、そこそこ売れる」


 マットとテオがビルへと歩み寄っていく。

 その姿にヨミちゃんが、「え、ちょ、マット? ツッコむトコそこなの?」と困惑している。


「いや、強火で一気に焼き上げたい。皮が残っていないと、肉が焦げてしまう」


大炸裂甘蕉(オオサクレツバナナ)の葉がまだ残っていたはずだ。あれで包んで焼けばいいだろう」


「あの葉は遮熱性が強すぎた」


「前に減った一枚はビルさんだったのか……」


 さんにんがお話しし始めたけれど、お肉食べないのかな?

 あ、食べる順番を決めているとか?

 前の世界だと、そういうのがあった気がする。


 あれ? でもそれって、ヒトだったっけ?

 住んでいるところで違うんだっけ?

 ……わかんないからいいや。


 隣りにふよふよと来たヨミちゃんを見ると、話し込むさんにんを呆れた様な目で見ていた。

 ヨミちゃんのぶらーんと下げられた腕が、サトちゃんの頭に触れて……あれ? ぶつかっていない?


 ヨミちゃんの手が、サトちゃんのおでこから出たり、入ったり。

 不思議ー!


 じっと見ていると、サトちゃんが頭をかしげた。

 すると、サトちゃんの頭のよこから、ヨミちゃんの手がまた出てきた。

 不思議―!


「あれ始まると長いんだー……はあ。もういい! 若葉いこっ! ギルドの中を軽く案内するから!」


『……! うん!』


 ふよふよと移動し始めたヨミちゃんに付いていく。

 サトちゃんも来るんだね!

 やった!


 ヨミちゃんが向かった先は、左側にあるお店。


 木で作られた棚が一、二、三、四つ綺麗に並んでいる。

 ベンチの側からだったら、上におかれていた瓶とか、包帯みたいなものが見えたけれど、ここまで近くだと、小さい僕じゃ見えないや。


 でもたのしいね!


「ここはギルド内の売店。便利アイテムがそこそこな値段で買えまーす! もちろんメダル提示でのお会計が出来るよー」


『そうなんだ!』


 あいてむ……?


 棚の間を通って進むと、背の高い四角いテーブル……で寝ているヒト?


 テーブルに近づきすぎると見えなくなっちゃうけれど、前に組んだ腕をまくらにして、ヒトが寝ている。


「あー、目を離したらすぐ寝るんだからー。ほらキヌタ起きてー」


 寝ているヒトをヨミちゃんがキヌタと呼んで、その肩をとんとんと軽く叩いて起こす。


 ヨミちゃんの手、触れる時もあるんだね。

 不思議―。


 ふわーっとあくびをしながら起きた女のヒトの左ほっぺには、しっかりと赤く腕の跡。

 頭には、(ふち)が黒くて、すこしまるっこい三角の耳。


 狸さんみたい。


 キヌタがぐしぐしと手で目を擦ると、こげ茶色の髪が揺れて……あれ? ヒトの耳が見えた。

 あれれ?


 ヒト? 狸さん? どっち? どっちも?


「ほらキヌタ、もうみんな行っちゃったよ?」


 ヨミちゃんの言葉にキヌタがはっ! とすると、ポン! と桃色の煙が上がる。

 煙の中からまるっこい狸さんのおきものが現れると、カタタターッ! と扉へまっすぐ向かっていき、外へと出ていった。


 ヒトだと思ったら狸さんで、やっぱりヒトで、結局、狸さんのおきものだった。

 不思議ー。


「さっきキヌタが化けていたユルビって(ウェア・)獣人(ラクーンドッグ)の子がここの店員さんね。棚の上の商品以外にも欲しいものがあったら、店員さんに聞いてね。後は……買い取りは次行くトコだから、ここではやっていないよ。こんなところかな?」


 うぇあらくんどっぐ……?

 狸さんの耳とヒトの耳があるヒトのこと?

 そのヒトがユルビってヒトで、でも、さっきのはキヌタって狸さんのおきものが化けていたユルビで……?


 いいや!

 ここは、いろんなものが買える!

 それでおっけー!


 キヌタが寝ていたテーブルから右に進んで、お店から出ると、開けた空間。

 ベンチの隣りでヨミちゃんとお話していた時は、お店の棚に隠れて見えなかったけれど、奥へと向いたベンチが四つあったんだね。


「あそこのカウンターの右からクエスト受注とクエスト完了報告ね。報酬受け取りはさらに左の小さな窓口で、買い取りはその左隣りの通路奥」


 奥にある長いテーブルをヨミちゃんが指さしていく。


 左の壁には、掲示板かな?

 たくさんの紙が綺麗に並んで貼られているけれど、ところどころ虫食いみたいにないところがある。

 だれかが取っちゃったのかな?


 掲示板から視線をすこしずらすと、四つのベンチですこし見えにくいけれど、ヨミちゃんが指さした通路があった。


 この建物の出入り口は、扉をふくめて大きいけれど、それと同じくらい横にも縦にも大きい。

 あそこが、買い取り。


 たぶん買い取りはわかる。

 あとは、くえすとじゅちゅうとくえすと完了報告、報酬受け取り……。

“くえすと”がよくわからないし、なんだかむずかしそう!


『くえすとってなにー?』


「クエスト? あ、そこからね。えっと…………あ、お願い事! クエストは、お願い事! どこどこに行ってどんぐり持って来てーとかのやつ!」


 お願いごと!

 お願いごとなら、よくされたし、したこともあるよ!


 うんうんとうなずく。

「よしよし」とうれしそうなヨミちゃんが、今度は壁の掲示板を指さした。


「あそこのボード……掲示板? に、お願い事を書いた紙が貼られているから、これなら出来る! ってやつを取って、さっき言った一番右の窓口でその紙を出す。そしたら、お願い事によって必要なランクであったり、道具とか、行く場所を、そこの職員さんと一緒に確認してもらって、それで出来るねってなったら、紙に書かれていた場所に行ってお願い事を達成してくる。ここまでオーケー?」


 あの掲示板の紙は、そういうことだったんだ!


 掲示板の意味がわかったことがうれしくて、なんどもうなずく。


『おっけー!』


「あ、オッケーはわかるんだ……はいいとして。お願い事が終わったら、ここにまた帰って来て、右から二番目の窓口――“クエスト完了報告”って看板に書いてあるでしょ? あそこにお願い事をちゃんと達成しましたって伝えるの! そしたら、報告ありがとねー報酬は左隣りの窓口で受け取れるよーって、職員さんが言ってくれるから、移動して、報酬を受け取る! わかった?」


『たぶんわかった!』


 報酬ってどんなものなんだろう。

 お肉もあるかな?


「あの通路の先に解体場……狩ったモンスターをお肉や素材? にする所があるの。さっきビルが持って来たキャノンボアだと、肉はもちろんとして、皮、牙、臭い袋、爆発袋、蹄なんかにわけてもらえる。欲しい所だけもらって他は全部売れば、冒険者は欲しかった素材とお金が手に入り、ギルドは手に入った素材を加工して道具として売ったり、欲しがっている他国なんかに売りつけたり、みんなハッピーって事」


『わかったよ! ありがとう!』


「よしっ!」


 理解を示す僕を見て、ヨミちゃんが胸の辺りで両こぶしを握った。


 ばくはつぶくろの“ばくはつ”って爆発ってことだよね?

 ここの猪さんはすごい袋を持っているんだね。

 気をつけないと、だね。


 解体場。

 お肉と硬かったりして食べられないところをわけてくれるみたいだけれど、どうしようかな。


 ヒトと一緒に暮らす前は、狩った子の内臓とかも食べたりしていた。

 けれど、お肉を焼いてもらうようになってからは、全然食べていないや。


 世界樹の森にいる時は、毎日コロッケを食べていたけれど、体に悪いことはなかったね。

 なら、コロッケを食べていたら、栄養は大丈夫……?


 キャノンボアみたいに、体の中にすごいものを持った生き物がほかにもいるだろうし……やっぱり、解体場でわけてもらった方がいいかも!

 食べ方は、その時の気分にしよう!


 決まり!


「おーし、次はあの階段を上るぞー」


 ヨミちゃんが右側にある階段へと向かっていく。

 長いテーブルの前を歩きながら、周りを見ていると、まだ話しているさんにんが目に入った。


『長いねー』


「でしょー?」


 お肉を焼いてからお話すればいいのにね。

 もしかして、違うお話なのかな?


 長いテーブルの前にある八つの小さな台に気づく。

 うしろを見てみると、報酬が受け取れるところにも台があった。


「あれは、ちっちゃいの用のお立ち台。ほら、あのカウンター高いでしょ? あれがあると何かと便利なの」


 子ども達のためだったんだー!

 うん! 素敵!


 でも、僕は小さすぎて、台に乗ってもカウンターの上に届かないね。

 ジャンプしたらお話は出来るだろうし、ずっとジャンプすればいいかな。


 階段へと着いたヨミちゃんが、ついでとばかりに細い通路を指さす。


「あそこは許可された者以外立ち入り禁止。……えっと、勝手に入ったら、怒られる所」


 怒られるところ!

 気をつけないと!


『勝手に入らないよ!』


「そうしてねー」


 そうする!


 こっこ、こっこ、と木で作られた階段を上っていく。

 大きかった時は、このくらいの階段をのっし、のっしで上り切っていたけれど、今では一段ずつ。


 たいへんだけれど、たのしい!


 こっこ、こっこ、こっこ……。


『とうちゃーく!』


「おー、がんばったー」


『がんばった!』


 階段を上り切った僕に、ヨミちゃんがパチパチと音が鳴りそうで、鳴っていない不思議な拍手をしてくれる。


 サトちゃんは……あれ? サトちゃん?

 いない?


 キョロキョロと辺りを探す。

 この階は、階段があるところから進んですぐに左右に通路がわかれているみたい。


 右、左と通路を覗く。

 間隔を空けて、綺麗に片開きの扉が六つも並んでいる。

 その左から三番目の扉が突然開いて……サトちゃん!


「あー、勝手に食べてー。後で怒られても知らないよー?」


 モグモグとバナナを食べているサトちゃんを見て、ヨミちゃんが呆れた様に眉を下げた。


 バナナ、おいしいよねー。

 僕も好きなんだー。


 あ、うしろを向いちゃった。

 好きだけれど、勝手に食べないよー?


「ま、折角だし中を覗いちゃおっか」


 そう言って、ヨミちゃんが左から三番目の扉を開ける。


 開かれた扉から中を覗く。

 ふわ~っと甘い木の実の香り。

 あのテーブルの上からかな?


 テーブルの左右にフカフカしてそうな大きな椅子。

 ソファって言うんだっけ。


 テーブルの向こうから光が差し込んでいるから、窓があるね。


 白い壁にうすく灰色の……植物の模様?

 左の壁に添う様におかれた木の収納箱。

 その上の壁には、茶色いお馬さんの絵。

 あ、左奥の隅に、鉢に入った植物があるね。

 ワカメみたい!


「他も内装は大体これと一緒。ここで、いろんな内緒話をするんだよー」


『内緒のお話?』


「そう。だから、ドアをトントンって叩いて、自分の名前を言って、入っていいよーって言われないと、入っちゃダメだからねー」


『わかった!』


 返事をした僕の頭をヨミちゃんがなでてくれる。

 ひんやりとしていて気持ちいい。


 そういえば、さっきもなでてくれた時だって触っていたよね。

 でも、サトちゃんの頭は、触れない?

 不思議―。


「よし! そろそろ終わったと思うし、戻ろっか」


『うん!』


 ヨミちゃんが扉を閉めて、階段をおり始める。

 僕も階段をおり……!


 一段下の段へおろした左前足の爪がカカッと滑って、体が前へ出る。

 なんとか落ちないように右前足を出すけれど、右前足も滑って、踏ん張れない!


『わ~!』


 コロコロコロコロ……すとん。


 階段を転がり落ちちゃった。


 大きなミミズさんに教えてもらった魔力の膜のおかげで、へっちゃらなんだけれどね!

 やっぱり、今度お礼を言わないと!


「だ、だだだだだだ大丈夫!?」


『うん! 大丈夫!』


 うわー! っと急いでおりてきたヨミちゃんに、その場で回って元気って伝えると、「よかったー」とほっとしたみたい。


 すすーっと階段の手すりの上を滑っておりてきたサトちゃんは、心配してくれたのか、じっと僕の顔を見つめて……首をかしげた。


 マットとテオとビルのさんにんが気になって、チラっと視線を向ける。

 さんにんはまだお話中だった。

 ながーい。


 読んでいただきありがとうございます。

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