表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若葉のカムイ  作者: ☀シグ☀
第一章:東へ
60/74

五十八話:ようこそ!

 育てていた大根にさや大根が出来ました。

 食べるべきか、種にしてまた大根を育てるべきか……。


 ぎるどますたぁ……ってなんだろう?


 マットの前にいるのは、ヨミちゃんだよね。

 あとは、マットのうしろのテオと、僕の側にいるサトちゃん。


 ぎるどますたぁ、いないよ?

 ヒト違い?


『マット、ヨミちゃんだよ?』


 僕がマットを見上げながらそう言うと、


「そう。私はヨミちゃんだ」


 ヨミちゃんもずずいとマットに迫る。


 でも、マットはすこしも表情を変えず、


「そのようですね。ではギルド本部長(マスター)、ワカバの件ですが」


 ヨミちゃんをぎるどますたぁともう一度呼ぶ。


 ヨミちゃんを見つめるマットの目に迷いがない。

 もしかしたら、ヒト違いじゃないのかも。


 でも、ぎるどますたぁってなに?


「いいや。私はヨミちゃ」


「ギルド本部長(マスター)、民が待っております」


 さっきよりも深く頭を下げるマット。

 その姿にヨミちゃんは「うぅ……」と唸り、


「……じゃあ代理付けて」


 ボソッと言った。


「ギルド本部長(マスター)代理」


「よし」


 うなずくヨミちゃん。


 よくわからないけれど、ヨミちゃんは、ぎるどますたぁだいり、なんだね。


 で、ぎるどますたぁ……だいり?

 だいりは、たぶん代理だよね?


 ぎるどますたぁの代わり。

 やっぱり、ぎるどますたぁがわからないとだね。

 聞いてみようかな?


 そんなことを考えていたら、


「ねね、若葉さんや」


 ヨミちゃんが僕を見下ろして言う。


『どうしたの?』


「私達の仲間になる気はないかい?」


 仲間!!


 やっぱり、仲間に入れてくれるみたい!

 やったぁ!


「もちろん私達の仲間になると、様々な恩恵がありまーす! 例えば、冒険者ギルドが身分を保証するから、ギルドのある国や町に自由に出入りする事が出来るようになるよー」


 僕が仲間に入るか決めかねていると思ったのか、ヨミちゃんが身ぶり手ぶりを交えて話し始めた。


 自由にカンタラを出入り出来るのは、とっても素敵だね!

 仲間になりたーい!


 話を遮っちゃうとダメだから、仲間に入る意思をうなずきで示してみる。

 けれど、それを話を聞いていると思ったのか、ヨミちゃんの話し声に力が入った。


「さらに、ギルド内のお店でお買い物をする時に、ランクに応じて割引するよー! 若葉の場合、最初からSランクにするから……えっと、何割? ちょっとマット、何割? 五割? 本当? おっけー五割! 五割引きだよー!」


 ごわり……びき……?


 マットに聞いちゃおう!


 ヨミちゃんの隣りに立って、耳打ちしているマットに、『ごわりびきってなに?』と聞くと、「全体を十とし、五、すなわち半分引くことだ」と教えてくれた。


 ごは、数字の五だったんだね!

 へー! 知らなかった!


「さらにさらに~なんと! Sランクの若葉にはギルドから御給金が出まーす! Aランク以下だと何処かの国や町に所属するか、クエストを達成しないと出ないんだけど、Sランクなら所属しなくても出るんでーす!」


 おきゅうきん?


 マットへ視線を向けると、「金銭」と教えてくれて、それでもわからない僕のために、「謝礼金、給料、労働の対価となる金」と教えてくれて、お金を知っている僕がうなずくと、ホッと胸をなで下ろした。


 ついでにぎるどますたぁについてもマットに聞くと、「ギルド本部長(マスター)は、全ての冒険者ギルドをまとめる者であり、私達の長だ」って教えてくれた。


 その代わりだから、ヨミちゃんはすごい! ってことだね!

 これでよし! ヨミちゃんの話を聞こう!


 マットにお礼を言って、ヨミちゃんの話に集中する。


「あっ! 今、お金なんて重たいから持ち歩けないって思ったでしょ?」


 ん?

 思っていなかったよ?


「大丈夫! ギルドの青い札を立てた受付に行けば、その場でお金を下ろせるし。ギルドに登録しているお店なら、このメダルを見せれば預けているお金から、その金額分使う事が出来まーす!」


 ヨミちゃんがどこからともなく取り出したのは、青色が綺麗な首輪。

 そのまんなか辺りに、短い鎖で付いたまるくて平たいもの。


 あれがメダル?

 夕焼け石の光があたって、あったかい黄色に輝いて綺麗!


 あのメダルを見せたら、お金が引き出せたり、引き出さなくても、ごはんをもらえる? みたい。


 お店は、ここの左側にあるあのお店だよね。

 棚の上にいろんなものがおいてあるけれど……あれ? お肉はないのかな?


『お店にお肉はないのー?』


「あ、お肉? お肉……ピンチヒッター! マァット!」


 ヨミちゃんにビシッと指さされたマットは、すこし考えたあと、口を開く。


「食用肉は、ヨアンの所が一番でしょうな。店が大きく見付けやすい上、品揃えも多く、ここからも近い」


 ヨアンってヒトのお店?

 もしかして、ここに来る時に見た、あの青い看板のお肉屋さんかな?


「ギルドと提携している店でもあるので、メダルを提示しての購入も可能です」


「だって!」


 そうなんだ!


 うんうんとうなずく僕に、得意気に鼻息を荒くするヨミちゃん。


 えっと、ヨミちゃんとマットが教えてくれたことをまとめると……


『仲間になったら、カンタラに自由に出入りが出来て、お金がもらえて、お肉がもらえるってこと?』


「そう認識してもらって問題無いと思うよー!」


 グイッと胸を張るヨミちゃん。


 なら!


『じゃあ、仲間に入れてー!』


「いいよーこれで仲間だー」


 ヨミちゃんがふわりと僕の側に来て、茶色の首輪をはずして、青い首輪を付けてくれる。


 茶色の首輪はやわらかくて、付けていると落ち着いた。

 けれど、この青い首輪はかたいから、付けているとすこし気になる。


 でも、それでいいの!

 だって、ずっと付けていたら、いつかやわらかくなるからね!

 たのしみー!


 くるんとその場で回って、胸を張る。


 ふふーん。

 どう? 似合ってる?


「おっけおっけー似合ってるねー!」


『やった!』


 うれしくて、隣りのサトちゃんにも見せてみる。


 けれど、サトちゃんは首輪に目もくれず、じっと僕の顔を見て、首をかしげた。

 まだわかんないみたい。


「よし! これで若葉も仲間! マット、避難者全員戻しておっけー! 今みんなシェリルちゃんに健康診断してもらってるから、それが終わり次第戻って来てもらってー。あ! あと、アレ連れて来て。私が一人でアレ担いでゴブイチのとこ行くから」


「承りました」


「マットも大きくなったねぇ……昔は(しん)の後ろを付いて回ってあんなに可愛かったのに……」


「……その話は勘弁していただけますか。部下もいるんですから」


 ?

 見た目から、ヨミちゃんはマットよりも若いって思っていたけれど、もしかしたら、違うのかも?

 ……まあいっか!


 どっちにしても、マットはマットだし、ヨミちゃんはヨミちゃんだもんね!


「あ、そだそだ。若葉!」


 ん? どうしたの?


 マットと話していたヨミちゃんが急にふり返った。


「ようこそカンタラへ! そしてようこそ冒険者ギルドへ! 私達冒険者一同は、君を大いに歓迎するよ!」


 ヨミちゃん、マット、テオ、サトちゃんの顔を見回す。

 首をかしげたサトちゃん以外のさんにんが、僕にうなずいてくれる。


 ようこそ。

 カンタラの門を抜けた時にも聞いた言葉。

 あの時もうれしかったけれど、そのあとのみんなの視線から、壁みたいなものを感じた。


 まあ、どっきり? だったけれどね!


 でも、さっきのようこそは違った。

 ここには僕を入れてごにんしかいないけれど、けれどそれでも。

 目をそらすことなく僕を見てくれるその目が、僕がここにいてもいいって言ってくれているようで、とっても、とってもうれしかった。


 こんなにうれしい気持ちにしてくれるヒト達に、僕はなにが出来るかな。


 ブワッ! と扉が開く。


 ノッシノッシと足音を立てて、大きな猪さんをかついで入ってきた大きな男のヒトは、さっき屋根の上にいたヒトだった。


 読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=714406171&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ