表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスト・ビー・マッド!!  作者: 射月アキラ
第一章 無法都市の法
PR
5/5

第一節 情報屋と殺人鬼 03

「ミス・ハルの魔面は使役用ではないな。隠したいものでもあるのか?」


「──いえ、使役用ですよ、首領。彼女は半使い魔。私と知識の一部を共有しているのです。英語が話せるのはそのためですよ」


「ふむ……まぁ、そういうことにしておこうか」


 男が背をもたれて、革張りの椅子がわずかに軋んだ。


 オクルスはシルクハットの位置を直して、咳ばらいを一つ。


「ところで、私への要件を伺っても?」


「あぁ、そうだったな」


 指を組んで腹の前に置き、男は続ける。


「情報屋の仕事だ。アグローに入り込んだ魔薬学者を探してほしい」


 それだけを言って、言葉を切った。


 オクルスが返答するまでの間に、わずかな沈黙が挟まる。


「それは……あなたが把握しない魔学者の出入りがあった、ということですか?」


「残念だが、その通りだ。どころか、認めた覚えのない薬まで出回っている」


 細められた男の目には、わずかな苛立ちの色がにじむ。


「麻薬のような『魔薬』、らしい。あくまで噂ではあるが、心当たりがあってな」


「その魔薬学者に……ですか」


「やつが求めているものにも、だ」


 言って、男は細く長いため息をついた。


 その間に、オクルスはハルの方をちらりと見る。仮面で隠された目元はおろか、顔の下半分にもこれといった表情の変化がない。退屈や疎外感を表に出すような人物でもなかった。


「では、まずは魔薬から探してみましょう。魔薬学者が狙っているものについては、」


「すでに手を回した。ネズミ探しに専念してくれ──それともう一つ」


 念を押すように、男の声はわずかに低くなった。


 オクルスを射抜くような瞳は、青と緑が混ざり損ねた色をしている。


「分かっているとは思うが、身内を売るような真似はしてくれるなよ」


「えぇ──承知しておりますとも」


 それだけ応え、オクルスはシルクハットを取って礼をする。


 見た者を刺し殺すような視線の圧は、幻のように消えている。対峙する相手を威圧する存在感を持っていながら、その使いどころをわきまえている男だった。


 無法都市アグローを束ねる首領。


 逆らうどころか近づくことすら避けられる、恐怖を伴うカリスマ性がそこにはある。


 臓腑が冷えるような錯覚を抱きながら、オクルスは部屋を辞する。扉を開き、ハルを外へ促したところで、男が再び口を開いた。


「あぁ、そういえば、言っていなかったな」


 男の放つ圧力は変わらぬまま、表情だけがわずかに柔らかくなる。


 ありもしない裏の感情を読みとってしまいそうな、歓迎の表情だった。


「アグローにようこそ、ミス・ハル」


「ありがとう、ミスター・アグロー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ