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世界終了のお死らせです  作者: 透坂雨音


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第15話 二度目で打ち止め



「やあ、君ならやってくれると思ったよ」


 アレンは無事だった。焦った様子もなく、炎の壁を、氷結世界を越えて出口にたどり着いた。

 丸焦げにはなってなかったが。手放しで良かったとも喜べない。あの状況を、どうやったら、とか思うだろ。普通、皆、誰だって。俺、普通だしな。牛エネミーだって、里留が心配するぐらいにはいたんだろ。

 ホント。お前、何者(なにもん)だよ。


「ただの天才だよ」


 それは無様な俺への当てつけか?

 嫌味言えっつったんじゃねーよ。





 それからは階段を進んで今みたいな試験のあるフロアに着いて、その繰り返しだ。上に上に、上がる度にいろんな事させられた。

 室内のはずなのに、何故か遥か高所の吹きさらしになってて綱渡りみたいなもんをさせられたり、または密林で猛獣に追いかけられたりした。

 まるで統一性のない試練ばかりだったが、性格の悪さだけは共通していた。

 三層目のフロア以来、あのアイテムは使っていない。出番なんてなかった。死に戻るなんて、もう二度としたくもねぇ。あんなのはもうたくさんんだ。これでいい。

 なんでかってぇと、あれだな。認めたくはないけどな。成り行きで仕方なく加えてやった三人目の実力が桁違いすぎたからだ。





 四層目を越え、五層目のフロア。


 「ふ……っ」アレンが自身の剣を一閃させて、「灼熱陽光(プロミネンス)!」グレンが残りを適当に焼き払う。ムカデだか、クマだか分んねぇような生き物が文字通り真っ二つになって転がったのが、消し炭になっていく。


 例の白一色ののっぺりとしたフロアで、アレンは重力なんてありませんみたいな顔して壁を足場に、化物どもを一掃している。


 哀れな敵共はロクに活躍する事無く、奴の剣にかかって切り刻まれていく。


 あいつの得物は剣だが、それを自分の手足の様に使っている。あからさまに使いなれていた。剣士アレン、か。魔術師紅蓮とはハマり具合が大違いだ。様になっている。


「お前、兵士か何かかよ」

「ただの一般人だよ」


 嘘つけ。


 ただの一般人があんなステータスになるわけがないだろ。

 紅蓮は、フロア間移動のさい覗いてみたアレンのステータスを思い浮かべる





 名前 アレン


 レベル 99


 クラス 剣士


 スキル アイテム鑑定 身体能力強化(ブースト)




 こんなんだぞ。これでその言葉は無理があるだろ。

 だが聞いてみた所で、先ほどみたいな具合にはぐらかされるだけだった。


 それで大した苦労もなく今回の試練は終了。

 そのまま出口へ、扉を通過する。


 先の戦いを見て、「アレンさん……すごい」「大したことないよ。ありがとう里留ちゃん」二人が中よさそうに会話してるが別に、紅蓮は何も思ったりはしない。


「実力がっつーより敵が、って聞こえんぞ。謙遜かよ」


 断じて何も思ったりはしない。何もだ。


「彼も労ってあげたらどうだろう。嫉妬している様だ」


 誰がだ。


 そこ、肩すくめてんじゃねぇよ。やれやれとかやられるとムカつくだろうが。


 気を利かせたつもりなのか、アレンの発言を真に受けた里留がこちらへ向けて一言。


「紅蓮も……頑張ったと思う」

「そりゃ、どういたしまして」


 そら、頑張るだろ。ここで頑張らないで、どこで頑張る。

 だが俺のは精々、頑張り止まりだ。紅蓮のやった事といえば、アレンの後始末をするだけ。


 そんなこっちの心中など知らない奴は別の事が気になるらしい。


 アレンが紅蓮の持っている杖を見て、「そういえば、この杖だけど。やはり魔法具みたいの様だね」と言う。


 そうだ、三層のフロア攻略のあと、なんとなく使っているがこれを持っているとどういう理屈か魔法の効力が上がるのだ。ここまでのフロア攻略にそれなりに役立っている。あの設計者め。重要なもんなら階段の途中なんかに、適当に置いとくなよ。里留の玩具(おもちゃ)にしてたじゃねーか。


 ふむ、アレンは目を細める「やはり……。魔法発動補助具と書いてある。効果は能力の増幅、だそうだ」


「鑑定スキルってやつか」

「ああ、そうなるね。内容はとくには変わっていないみたいだ」

「他のも教えろ」

「教えたじゃないか。僕のスキルは鑑定と、身体強化。これだけだよ」


「で」ほんとのところはどうなんだよ、と先を促す。

 アレンは「嘘じゃないんだけどなあ」苦笑を刻まれた。





 そうして得体のしれない三人目を挟んで喋りながら、願壁(がんぺき)内部の階段を、次のフロア向けてひいこら言いながら登っていくのだが。


「少し、休憩しようか」


 歩きながら里留が船を漕ぎ出したので、休憩だ。

 器用なもんだった。右に紅蓮、左にアレンのそれぞれの服の裾がいつのまにか掴まれていて、それがだんだん重くなっていくのだ。少し皺が伸びたか、と思う時点で眠気に襲われている少女の存在に気づいた。


「すぅ……すぅ……」


 階段に腰を降ろす。

 野郎と並んで……なんて、虫唾が走りそうだったので離れたたかったが里留が話さなかったので、仕方なく三人で並ぶ形になった。


「で?」


 そこで、良い機会だとばかりに、アレンが何事かを聞いてきた。


「あん?」

「僕に話がありそうな目をしていたからね」

「たりめーだ」


 聞かなきゃならない。いくら何でも、正体不明すぎる。里留が起きてたからあまり突っ込んだ事は聞けなかったが、こいつの正体と目論見をはっきりさせなければならない。


「聞かないほうがいいと思うんだけどな」

「痛い腹ぁ探られたくないってか?」

「まあ、そんな所かな」


 やはり何かある。こいつには。だが何も話す気はないようだった。涼しげな顔なんかして、態度は余裕のままだ。こちらはただ生き残るだけでも必死だと言うのに。何から何まで気に入らない。


 その余裕のままアレンは、「でも、僕は進んで君たちの敵にはならない。これだけは誓わせてもらうよ」そう口を開いた。だがそれは、「条件さえありゃぁ、敵になんだろーが」そういう事になるのだろう。アレンは否定しなかった。「そうとも言うね」曖昧な返事だ。


 気にいらねぇ。何が気にいらねぇっつーと、そりゃ色々あるけどよ。余裕こいてるその態度が特に気にいらねぇ。こっちは必死になって、どうにかこうにかやってきてんのに。それをお前、隣で同じ事を涼しげにこなされても見ろ。心底、気に入らなくもなるだろうが。


「でも必要だろう? 僕の力が、君達にとっては」

「チッ」

「協力した方が良い」


 そうだ、分かり切っている事だ。こいつの力がないと、困る。


 今の俺には守らなければならないものがある。里留だ。そして、俺はその守らなければならない存在と、いまだ距離を測りかねている。いざというとき、信用されてなくて必ず困る場面が出てくる。

 その点こいつは、紅蓮とは違う。

 あれだけ苦心して、どうにかこうにか縮めた一歩の距離を、馬鹿みたいにやすやすと飛び越えていくのだ。忌々しい事に。何でこいつが、とかすげぇ思う。こんなに胡散臭いのに、とかも。考えたらきりがないほどに思う。


 でも、だから、必要なのだ。

 こいつの存在は欠かせない。

 欠かせてはならない。


 俺は、「くそっ、おかしなことでもしてみろ、八つ裂きにしてやるからな」三層フロアでも言ったようなことを口にして、念を押した。


 結局はそうやって妥協するしかないのだ。約束を守る為には。




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