第13話 アレン
痛みが引いた後、落ち着いた紅蓮は里留に覗き込まれていた。
その瞳には、わざわざ探ろうとしなくても分かり過ぎるくらいの心配と不安の色がある。
「痛そう……」
「別に、今はそうでもねぇよ」
駆けられた言葉に淡々と答える。
嘘ではない。脳の中をひっかきまわされるような痛みは今はもうなかった。
だが。
あの野郎……。
紅蓮は内心で目に見えない破壊神を罵った。
里留の記憶三秒分の対価は紅蓮の左目だった。
塞がったまま見えなくなった左目、その瞼を触ってみる。
あからさまな違和感などはない。あるべきの所にあるべきモノがない、とかそういうホラーな事には幸いなってはいないが……。左目はどうあっても開かない。視界は半分になったままだ。
自分の浅はかさを呪わずにはいられない。
奴が何の見返りもなく、人を助けるような人間でない事ぐらい分かり切っていたと言うのに。
それが分かったとしても、結局あの時俺が下した判断は変わる事はなかっただろう が。やはりムカつくもんはムカつくのだ。
過ぎた事だ。ムカつくけど。
問題は他にある。考えなければならない事も。めちゃくちゃムカつくけどな!
俺はある事を確かめるために、服をめくって地肌を確かめる。目に見えるところにはアレは、ない。
ウィンドウを操作し鏡を取りだして、服を脱ぐ。探してみるが、だが見つからない。肌着の下にもアレは、ない……。
不思議そうにその様子を見ている里瑠に「?」、俺は声をかける。「背中何かあるか?」「鳥かごの模様……みたいなのがあるよ」やっぱりか。自分では見えない位置だった。
実は、背中にある模様と同じ様なものがもう一つ右足の甲にもある。人の体に勝手に マークとか書き入れてんじゃねぇって、思うけどな。証なのだろう。破壊神に願いを叶えてもらったという。
つーか、ガキの前で脱ぎだすとか、やばくなねぇか。冷静に考えて見たら。いろんな意味で。いや、そういう意味じゃねーっつのは分かってるんだけどよ。こんな場所じゃなくて、誰かに見られたら人生軽く終わるんじゃねぇのか、これ。
そこまで考えたところで、俺はようやく無視できない次の問題を直視する。
「元気になったようで何よりだ」
「何で、当たり前の様にテメェはいんだよ」
一連の行いを黙って見ていた男がいる。紅蓮でも里留でもない第三者。
目の前で胡散臭い笑顔を浮かべている黒髪の男だ。
睨みつける。
「次のフロアの攻略だけれど、白さんに聞いたよ。考えると、少人数での攻略は困難らしいとか。綿密な作戦を立てないといけないね」
「なんで、お前が俺らと一緒に行動する事になってんだよ」
紅蓮は里留に顔を向ける。
里留は「……?」首を傾げた。聞いてんだよその理由を。「お前が言ったのか?」「紅蓮を……助けてって……言ったよ?」それは俺が痛みに呻いている時だろう。「暴れてる紅蓮……抑えて、首を、とんって……大人しくさせてくれた」それは気絶させたって言うんじゃねぇのか? それ以外は何も言ってないのか? 本当に?
「という事で、これからよろしく頼むよ」
「だから、どういう事だっつてんだよ」
何こいつは自然に話を進めようとしてんだ。
「僕の名前はアレン。得意なのは剣術……だろうか? まあ、体術もそれなりにできなくはないけれど、あまり期待しないでくれよ。それで、次のフロアの事だけど……」
里留に聞いたフロアの事について色々とくっちゃべってるが。俺の耳には中身が入ってきてない。
こいつはどうやら俺達と行動を共にする気でいるらしい。
正直な感想を述べる。
何だよ一体、この胡散臭い奴は。




