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隣に立つために

「よし、お疲れ様。テイル」

「ガウ!」

 あれから一ヶ月。私は剣の練習に重点を置いてクエストを受けていた。

 あの次の日も魔物の討伐をしたけど、やっぱりたった数日でなんとかなる物じゃ無かった。でも、テイルが居て一緒に戦ってくれたから、泣くことは無かった。

 二週間くらい経ってやっと慣れてきて、それからは魔法も織り交ぜて戦い、火と水だけでなく風と氷を少し使えるようになった。まだ、本当に少しだけど。

 魔物のことも少し勉強した。

 姿と名前を一致させるのに時間が掛かるから、クエストボードで名前を見て姿を思い出すまでに数分かかる。

 その間に取られることは無かったけど。

 今、ぱっと出てくるのは最初の仕事で倒したトライ・サーペント。最初に食べたワニの様な魔物のアークロンに、お昼を取られそうになったトゥース鳥。それから、一番最初に見た魔物、六本足に四つ目のレグルフと……あ、魔物じゃないけど、目を持ってる花のアイフラワー…………それに、それに……う~ん、今はこれくらいかな? 

 今日倒したのはレグルフ。

 話は変わるけど、テイルが少し大きくなった。

 全長五十㎝位だったけど、今は五十五㎝位。まだ腕の中に収まる大きさだけど、後十㎝位大きくなったら厳しいかも。

 そのうち、私の身長を遥かに凌ぐ大きさにまでなるんだよね……成体になると五十メートル位にまでなるみたいだし。大きくなるのは嬉しいけど、ご飯どうしよう? 多分銅が百枚で銀一枚分くらいだから、今の私の財産は……銅が百円として、十倍で千円。千円の十倍が一万円。銀は今四十枚位だから、四十万円。銀十枚で金一枚でしょ? それが使ってないから十枚。十万円が十枚だから、百万円? じゃあ、今の財産は約百四十万円か。

 無駄遣いしなければ何とかなるかも。テイルが成体になるのは約二年後のことだけど、お金は計画的に使わないと。

 二の街に戻って、クエスト完了の報告をして銀一枚を貰う。

 それからずっと泊まっている宿に帰りシャワーを浴びて、服は結局買ってないからテイルの体を拭いた後タオルを巻いてベッドへダイブ。夕飯までテイルと遊ぶことに。

 この宿はバイキング方式で、朝食は六時から十時。昼食が十二時から三時。夕飯は十八時から零時。こんな感じで時間が決まっている。

 今はまだ二時位だけど、お昼は帰ってくる途中で食べたから、後四時間くらいの空きがある。

 テイルと遊んでいる内に、どっち先だったか分からないけど、いつの間にか寝てしまった。

 起きると外は夕日が出ていたから、多分もう、夕飯を食べられる。

 服を着て、テイルを抱き抱え下に降りると、ちらほらと人がいた。グループで旅をしている人、一人で旅をしている人達が夕飯を食べている。

 テイルを片腕で抱き抱えて、皿に肉と野菜、パンを取って適当な席に着く。膝にテイルを乗せて先に食べ始め、少ししたら匂いに釣られたのか眠気が残っている目で私を見上げた。

 はぁ、ほんとに可愛い。

「おはよう、テイル。ご飯だよ?」

「ガゥ~、グアァ……」

 欠伸をして、テーブルに前脚をかけ肉を食べ始めるテイルに、時々野菜を食べるように言ってから、私はそんなテイルを見ていた。

 約二年後には、五十メートル位にまでなるなんて想像出来ないな……。

 テイルも夕飯を食べ終わり、皿を返してから部屋に戻る。

 歯を磨いてもう一度お風呂に。軽く洗い湯船に浸かって、テイルの体を拭いてタオルを巻き再びベッドへダイブ。

 現在時刻は七時。まだまだ寝るには早い時間で、さっき寝たから眠気が全く来ない。

 魔法の練習も部屋じゃ出来ないし。

 結界を張れば大丈夫かな? 外に音が漏れないようにして……。

 起き上がって、部屋の中央へ。

「遮音・展開」

 キンと音を立てて半円の結界が張られる。

 テイルに一度外に出て貰って、音が漏れていないか確認して貰う。私が何を言っても、聞こえないと言う風に首を振るから多分聞こえていない。手招きして中に戻って来たテイルに、今度は中に残って貰って私が外に出る。中でテイルが鳴いているけど声は聞こえない。

 どうやら成功らしい。中に戻って、早速練習を始める。

「テイル、暇だったら寝て良いからね?」

「ガウガウ、ガウ!」

 一緒に居てくれるみたいだ。

「ありがと。さて、始めよう」

 予習というか慣らしと言うか、そんな感じでまずは火と水を出す練習を始める。

 この二つは、もうすぐに出せるようになった。小さな火を指先に灯して段々大きくしていき、掌サイズになったら今度は消えるまで小さくして、次に水を出す。

 同じように大きくして小さくし、今度はミックスさせる。火と水を細い棒状にして、二つを螺旋状にくるくると回しながら回転速度を上げていく。

 これは今思いついたから自信は無かったけど、出来て良かった。

 指先から滑るように掌へ移し、速度を維持したまま規模を大きく。最後に二つを完全に一つにしようと収縮させていき、二つがぶつかりあった瞬間、軽い爆発が起きてどちらも霧散してしまった。

 新しい課題だね。魔力を抑えてて良かった。

 次は、氷と風の練習。

 これはどっちもまだまだなんだよねぇ……。

 小さな風でも、火より難しい。

 ミレインは凄いな……爆発が起きる瞬間に火を包み込んで抑えたんだから。今の私じゃ、あんなことできない。もっと頑張らないと。

 両手を胸の前に持ってきて、間を拳一つ分位開けて中心に風を起こす。少しして、ヒュウゥという小さな音と共に風が発生した。

 まだ両手じゃないと出来ないんだよね。

 少しずつ大きくしていこうとするけど、中々上手く行かずに霧散してしまう。

「ふぅ、難しいな」

「ガウ! ガウガウ!」

「テイル……うん、分かってる。諦めたりはしないよ?」

 何を言っているのかは未だに理解出来ない。でも、励ましてくれていることは分かる。テイルに励まされたら、途中で投げ出すわけには行かない。この一ヶ月、ずっと側で私を支えてくれたんだから。

 でも、やっぱり疲れるんだよね。これじゃ、テイルが大きくなった時に隣で戦うことが出来ない。絶対に諦めたら駄目だ。

 隣に居る為にも。

「よし、頑張ろう! ありがとう、テイル!」

「ガウ!」

 練習を再開して少しだけ、本当に少しだけ風を大きくすることが出来た。それだけでも、十分に嬉しい。テイルも喜んでくれる。

 でも、これ位で満足していたらいけない。テイルが成体になった時に一緒に戦えないと、どれだけ魔力を持っていても意味がない。

 ずっと一緒に居るって約束したんだから、それに見合うだけの力を身に着けないと。

「ずっと一緒にいたいから――」

「ガウ?」

「……今日はこれ位にして、もう寝ようか?」

「ガウ」

 結界を解除して、ベッドに入る。

 魔法の練習をしていると、時間があっと言う間だ。

 今は十時だから、三時間も経ってる。それでも、眠気はまだ来ない。暫くテイルとじゃれて、先にテイルが寝た。

 テイルの頭を撫でていると心が落ち着いて、私も次第に眠りに着いた。

 お休み、テイル。


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