仲間が出来た!
「君、私と行きたいの?」
さて、ミレインと会った日から六日。つまりこの世界に来て一週間が経過した。
剣の方はまだまだ素人も良いとこだけど、魔法なら小さい火に関しては、ほぼ無意識レベルで出せるようになった。五日目位に、薪に火を着けようとしたら自然と指に火をともしていて、大きさも丁度良かったから純粋に嬉しかった。
で、今は火の練習よりも水の練習に時間を掛けている。
水の制御を誤ると、また服が濡れちゃうから大変なんだよね。
二日目に、決めた通り日中は魔法と剣の練習をして、周りが確認出来なくなるまで暗くなってから野宿の準備。幸い街道が途切れたりすることは無いから、今の所迷うことなく進むことが出来ていた。
五日目の夜、ご飯の準備をしていると、森の方が騒がしかった。
行ってみると小さな翼が生えている黒い生物がいて、村人らしき五~七人の男に追い詰められていた。その黒い生物は炎を吐いたりして近づけないようにしているけど、まだ子供だからか、長く続けられず炎が途切れた時、バランスよく鍛えられた体を持つ男が斧で攻撃を仕掛けた。
その攻撃が当たっていたら、その生物は確実に死んでいた。私が火でその男を攻撃して、他の人間達の気を逸らしている間に、その生物を連れて逃げた。
男達の叫び声は、完全に無視した。
そして、その生物を野宿場所まで連れて行って見ると、漸く正体が分かった。
龍の子供。
まだまだ小さい体に多数の切り傷があり、弱っているのは明らかだった。でも子供は、私も男達と同じだと思っているようで、腕の中で弱々しく抵抗していた。出来るだけ優しく語りかけて、癒しの魔法を掛けたけど、深い傷や昔の傷跡を完全に癒すことはできなかった。
けど子供は、警戒心をいくらか和らげてくれたみたいで、抵抗はしなくなってくれた。それから火を消して結界を張り、出来るだけ近づいて眠りに着いた。
翌朝起きると、子供が近寄ってくれていた。それでも二メートルくらい離れてたけど……。
制御した水で目を覚まし、結界を張ったまま少し離れた所で練習開始。大分慣れてきたみたいで、少しの水なら火と同じくらい扱える様になった。もう少しで増やす段階に入れる。
それから三十分程続けて、本当にあと少しと言う所でミレインの時の様に
「ガウ!」
「わっ!」
いきなり鳴き声が聞こえて驚いてしまい、水があふれ出してずぶ濡れになってしまった。
火じゃなくて良かった……。
後ろを見ると、子供が私の近くに来ていた。何かを伝えようとしているみたいだけど、言葉が分からない。
そう言えば、そろそろお腹へってきた。
「君も、ご飯食べる?」
聞くと、子供は私の言葉を理解している様ですぐに頷いた。
朝食の前に、また三本木の棒を拾ってきて二本を立てて服を脱ぎ、三本目に服を通して乾かし始める。鎧は着たまま。
鞄から食料を出して、子供と一緒に朝食開始。
もうすぐ食料も無くなるな……しばらくは、魔物を食べないと駄目かも。節約にはなるけど……この先どんな所でお金が必要になるかわからないからね、できるだけ貯めておこう。
朝食を食べ終わり、それからまた練習開始。子供は、また寝てしまった。まだ疲れが残っていることと、満腹になったからだろう。
一時間程練習をして、服が乾いたことを確認。鎧に残っていた水滴を小さな火で蒸発させて服を着ていき、最後に鎧を着けて完了。同じ轍は踏まない。
うん、成長した、私えらい。
木の棒を森の中に投げ入れて、次の街へ向けて出発……の前に結界を解除して今度こそ出発した。子供はこのまま放っておく訳にもいかないと思ったけど、無理矢理連れて行っても意味は無いからその場に残して後は自由にして貰おうと思っていたけど、暫く経って振り向いて見ると後ろを着いてきていた。
「…………」
「…………」
まあ、自分で決めたなら。
お昼頃になった所で、子供とお昼を食べて、また練習を始める。
子供は起きていたけど、いきなり吠えることはなかった。多分、私がしていることを理解してくれてるんだと思う。そのお陰で練習は捗り、水の量も大分増やせるようになった。
一息吐いて空を見てみると、綺麗なオレンジ色になっていた。
「集中してると、時間って早いな……そう言えば、魔物にも全然会わなかった。どうしてだろ?」
いくら集中していたと言っても、今は結界も張ってなかったからいつでも襲おうと思えば襲える状態だった。にも関わらず、一度も戦闘は起こってない。
もしかしてこの子かな? 見た感じは間違いなく龍だし、子供とは言え持っている力は大きいのかも知れない。だから、野生の勘でこの子供には敵わないと感じて襲ってこない。
そんな子の近くにいる私にも。
魔物が襲ってこないなら、むやみに狩る訳にもいかない。今日も残っている食料を、二人で分けて食べることにした。子供との距離は、一メートルまで近づいていた。
もう少しで、また触れるかな?
食べ終わったらまた練習。さっきまでの練習のお陰で、少量の水はすぐに出せるようになった。まだ無意識レベルまでは達してないけど、焦らずにいこう。
終わった頃にはもう夜になっていたので、結界を張って鎧と剣を外し、鞄を枕にして眠りに着く。
目を閉じて少しすると、小さな足音が聞こえて胸の辺りに温かさを感じた。それが心地よくて、すぐに眠ることが出来た。
目が覚めて胸の辺りを見てみると、そこには誰も居なくて、昨日と同じ一メートルの距離に子供はいた。
少し残念……。
今日は寝癖が付いていたから、それを魔法で直す。
結界はそのままにして、少し離れた所で練習を始める。一時間程して、そろそろかな~と思っていると、予想通り鳴き声が聞こえた。それを聞いて結界に戻り、食料を出してまた分けて食べる。
食べ終えて結界を解除、出発する。
暫くして振り向くと、また付いてきていたから思い切って聞いてみた。それが冒頭の台詞。
子供は少し間があったけど、
「ガウ!」
と一鳴きして、了承の意を示してくれた。
ゆっくり近づいて、抱き上げてみる。抵抗もしないから、本当に私と一緒に来てくれるみたいだ。
こっちに来て、初めての仲間。
「名前、つけないとだね?」
「ガウ!」
「う~~~ん……よし、決まった! 君はの名前は、テイルだよ。よろしくね、テイル」
「ガウガ!」
人間のように、表情がはっきり変わる訳じゃ無いけど、喜んでくれて居たら私も嬉しい。
その日は練習もこれまでで一番捗り、少量の水なら無意識レベルで出せるようになった。
私が喜ぶと、テイルも喜んでくれた。
そのことが堪らなく嬉しくて、思わずぎゅっと抱き締めた。
苦しそうに声を上げるテイルに謝り、一緒に夕飯を食べて結界を張る。
そしてその日は、テイルを抱き締めて眠りに着いた。




