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ドリーム・エクスプレスに乗って  作者: 三羽高明


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5/7

岩投げドラゴン出現!(1/2)

「お手柄っすね、ヤマトくん!」


 ルカがカートからジュースを出してくれました。それを一気に飲んで、ヤマトは大きく息を吐きます。


「まさか夢の国にドラゴンがいるなんて思わなかったよ。臨時列車があったことも今日初めて知ったし、毎日来てるのに新発見がいっぱいだね」


「ドラゴンは、夢の国でも限られた場所にしかいないっすからね。でも、出くわしたのが大人しい奴でよかったっすよ」


「大人しい……?」


 ヤマトは、知恵試しドラゴンがムーマたちを容赦なくしっぽで弾き飛ばしていた光景を思い出して、首をひねります。


 けれどルカは「あんなの、かわいいもんすよ」と言います。


「もっととんでもないのもいるんすから! それこそ、出会ったら一巻の終わり、みたいな……」


 言った傍から、ガチャン! と窓が割れました。床にはこぶしくらいの大きさの石ころが転がっています。


「ウガアアアッ!」


 空気を震わせるような恐ろしい遠吠えが響きました。


 ヤマトは身を竦ませます。その内に車内灯まで消えてしまいました。外は夜のように暗かったため、ヤマトは辺りの様子が全く見えなくなってしまいます。


 怖くなったヤマトは、姿の見えないルカに向かって頼みました。


「明かりを出して!」

「はいよ! 明かり、一丁上がり!」


 ルカがカートからランタンを取り出します。


 その瞬間に、またしても車体が揺れました。見れば、壁の一部が変形しています。きっと、先ほどの石ころよりももっと大きなものがぶつかって来たのでしょう。


「お客様にお願いです。ランタン、その他明かりがつくもののご使用はお控えください」


 アナウンスが流れます。ルカが「どうしてっすか?」と聞き返しました。


「明かりがなかったら、何にも見えないっすよ!」

「それでいいのです。何故ならば……」


 ヤマトの体が座席から放り出されました。お腹の奥がキュッと絞られるような感覚。そして次の瞬間には、体中に衝撃が走っていました。床に叩きつけられたのです。


 いいえ、「床」ではなく「床になった壁」と言った方がいいかもしれません。先ほどとは車内の様子がすっかり変わってしまっています。天井と床が壁になり、辺りには物が飛び散っていたのです。


 どうも、列車が横倒しになってしまったようでした。


「うーん……。一体何が……?」


 目を回しながらルカが起き上がります。汽車が倒れてもまだ、何かが車体にぶつかってくるような音と振動はやみません。


 ヤマトは素早く起き上がってルカの手からランタンを取り上げ、明かりを消しました。


 その途端に辺りはしんと静まり返ります。列車が攻撃される気配もありません。


 ヤマトがほっとしていると、前方から物音がしました。


 思わずビクリとなりますが、聞き慣れた声で「お客様、ルカ様、ご無事ですか」と問いかけられて安心します。車掌さんが機関室から様子を見に来てくれたのです。


「ウガアアアッ!」


 さっきの恐ろしい声がまたしても聞こえてきて、ヤマトの心臓がバクバクと鳴ります。無意識の内に声を潜めて「どうなってるんですか?」と言いました。


「事情をご説明する前に、まずは周りのものが見えるようにしないといけませんね。……ルカ様、何か出してください。ただし、光らないものを」


「ちょっと待つっすよ……カートは……あった! ……はいよ! 周りが見えるもの、一丁上がり!」


 周囲が見えないので、ルカが出してくれたものをヤマトは手探りで受け取ります。ペタペタと触っている内に、それがゴーグルのようなものだと分かりました。


 頭に装着してみます。すると、昼間のようにはっきりと、というわけにはいきませんが、先ほどよりも辺りの様子がずっとよく見えるようになりました。


 ヤマトは同じくゴーグルをつけたルカと車掌さんに視線をやります。列車は倒れてしまいましたが、二人とも怪我はないようでした。


「またドラゴンが現われました」


 車掌さんが言いました。


「ただし、今度は先ほどの知恵試しドラゴンよりもずっと厄介です。岩投げドラゴンでございます」


 ヤマトたちは車両の前の方に移動します。苦労してドアから外に出ると、向こうの丘に大きな体のドラゴンが陣取っているのが見えました。


 知恵試しドラゴンが賢くて物分かりのよさそうな顔をしていたのに対し、この岩投げドラゴンはとても野性的な顔立ちをしています。


 その尻尾の周りには、大小様々な岩が転がっていました。先ほど列車を攻撃したときも、ここの岩を使ったのでしょう。列車が倒れてしまったのは、岩投げドラゴンの岩に当たったからだったのです。


「岩投げドラゴンはとても凶暴です。近づいてくるものは全て岩を投げて追い払ってしまうのです」


「じゃあ、回り道するしかないっすね」


 ルカが言いました。ヤマトは、遠回りなんかして起床時間に間に合うのかなと思いましたが、車掌さんが「それはできません」と首を振ります。


「この辺りに迂回路はございません。通れるルートはあちらのみでございます」


 車掌さんが指差したのは、岩投げドラゴンの目と鼻の先にある線路でした。ヤマトは眉をひそめます。


「あんなところを通ったら、ドラゴンに見つかっちゃいますよ! 岩でぺちゃんこにされちゃいます!」


「いいえ、平気です。あの岩投げドラゴンは光に反応するのです。ですから、列車のライトを全て消せば発見されることはないでしょう。ドラゴンが我々に気付かないうちに全速力で遠ざかれば、やり過ごせるかと存じます」


「そう上手くいきますか……?」


「やってみるしかないっすよ。……それよりも、問題は他にあるんじゃないっすか?」


 ルカが倒れた車両を見ます。車掌さんが「ご心配には及びません」と言いました。


「幸いにも機関室は無事ですので、脱線した車両だけ切り離せば走行は可能です。お客様、ルカ様、別の車両に移る準備をお願いします」


「分かったっす! カートを持ってくるっす!」


 ルカが倒れた車両へと戻って行き、車掌さんは連結を切り離すために車両と車両の間に向かいました。

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姉妹作です。
メアは悪夢の女王様
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