知恵試しドラゴンのなぞなぞ(2/2)
「ルカ、そのカート、使えないの?」
ヤマトはルカの魔法のカートを指差しました。
「ヒントになるようなもの、出してよ!」
「なるほど! その手があったっすね! ……はいよ! ヒント、一丁上がり!」
ルカがカートの上段にかかった布を取って、中に手を突っ込みます。
何が出てくるかとドキドキしながら見守っていたヤマトでしたが、現われたものが意外で目をパチクリさせてしまいました。
「これって……新聞?」
「『日刊夢の国』でございます」
車掌さんが付け加えましたが、何故そんなものが出てきたのか、ヤマトにはさっぱり分かりませんでした。どうしてこれがヒントになるのでしょう?
一方、車内の様子を観察していたらしいムーマたちが、はしゃいだ声を上げます。
「おい、あいつらの出したもの、見たか?」
「もちろんだ! キヒヒ、俺たちが先に答えを言っちゃうもんね!」
「おい、ドラゴン! 答えは『新聞』だろ!」
ムーマたちは、ルカがカートから出したヒントを答えだと誤解したようです。
案の定、ドラゴンは「ハズレ!」と言って、答えを間違ったムーマをしっぽで弾き飛ばし、またその場でゴロゴロと転がり始めました。
「新聞が答えじゃないなら……新聞紙!」
「朝刊、夕刊!」
「ニュースペーパー!」
「全部ハズレ!」
ムーマたちは次々と弾き飛ばされていきます。ヤマトたちは顔を見合わせました。
「オイラ、もうお手上げっす」
「ドラゴンに別のヒントをもらってはいかがでしょう?」
車掌さんにアドバイスされ、ヤマトはドラゴンに頼んでみることにしました。けれど、いい返事はもらえません。
「ヒントならもうあげています」
相変わらずその場でゴロゴロ転がりながら、ドラゴンはそう言いました。
「やっぱり新聞がヒントっすか。……もしかして、ここに載ってる記事が重要とか?」
「ふむ……。ですが、これといって特別なものはなさそうですよ」
車掌さんが『日刊夢の国』をパラパラとめくります。ヤマトは額を押さえて必死で考えました。
(三つの文章……。ヒントは新聞……)
ヤマトはドラゴンをじっと見つめます。ドラゴンは、まだ転がるのをやめようとしません。ふと、ヤマトは気付きました。
(そういえば……あのドラゴンが転がり始めたのって、なぞなぞを出題した後じゃなかったっけ……?)
ドラゴンはお腹を上にしたかと思うと、今度は背中を空に向けます。そうやって、何度も何度もひっくり返っていました。
(ひっくり返る……)
ヤマトは新聞を手に取りました。上下を逆にしたり、裏を表にしたりして色々と考えてみます。
同時に、ムーマたちが外した答えのことを思い出していました。
――新聞紙!
――朝刊、夕刊!
――ニュースペーパー!
(これをひっくり返す……。……新聞紙をひっくり返す?)
ヤマトはドラゴンが炎で作り出した文章をもう一度見ます。それを小さな声で何度も呟きました。
その内に、ヤマトの頭にひらめくものがありました。
「そうか! ひっくり返すんだ! 二人とも、新聞紙をひっくり返すんだよ!」
「え……?」
ルカが戸惑いながら『日刊夢の国』に手を伸ばします。けれどヤマトは「そうじゃなくて!」と首を振りました。
「本物の新聞じゃないんだよ! 新聞紙! 新聞紙をひっくり返すんだ!」
「……?」
ヤマトに説明されても、ルカはまだ理解ができていないようです。
でも車掌さんは、「そういうことですか」と頷いていました。制服のポケットから、ペンとメモを取り出します。
車掌さんはそこに「しんぶんし」とひらがなで書きました。
「ルカ様、これを反対から読んでみてください」
「反対から? ええと……『しんぶんし』の反対は……『し、ん、ぶ、ん、し』。……新聞紙! すごい! 逆から読んでも、ちゃんと『新聞紙』になるっす!」
「こういった、上から読んでも下から読んでも同じ意味になる文のことを、回文というのですよ」
車掌さんがヤマトの方を見ました。
「つまり、お客様はドラゴンの問題も回文になっている、とおっしゃりたいのですね?」
「はい、そうです!」
ヤマトは勢いよく返事しました。ルカが炎の文字とにらめっこを始めます。
「最初の『アカン車掌。よし、野心家ぁ!』は……ちゃんと反対から読んでも同じになってるっす! ……あれ、でも、二つ目の『ルカ言った。「……ライオンくん。オイラ……」。竜、怒る』は違うんじゃないっすか? 『竜、怒る』のところが……」
「あれは恐らく、『りゅう、おこる』ではなく『たつ、いかる』と読むのでしょう。それならきちんと回文になります」
車掌さんが助け船を出します。
「では、三つ目の『確かヤマト、「いい○○は格好いい!」とまやかした』の○○に入るのは……位置から考えると、『格好』を反対から読んだものでしょうね」
「格好の反対……こっか……国家!」
ヤマトはすぐに答えを返し、窓から顔を出してドラゴンに向かって叫びます。
「答えは国家! ○○に入るのは『国家』だ!」
「お見事」
ドラゴンは満足そうに言って、線路の上から退きました。車掌さんが機関室に戻り、ドリーム・エクスプレスは元気に汽笛を上げながら再出発します。
「しまった! 先を越された!」
ムーマたちが追いかけて来ようとします。けれど、ドラゴンがそれを許しません。
「ここを通りたければ、ワタシの質問に答えるのです。何度同じことを言わせるのですか」
「嘘だろ!」
ムーマが顔を引きつらせます。ドラゴンが肩越しにチラリとこちらを振り向きました。
「全ての線路は門へと続く。線路がある限りどこまでも走る。知恵と勇気と、何より諦めない心があれば、あなたはきっと目的地にたどり着けます」
「はい!」
ヤマトは大きな声で返事しました。




