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冒険の始まり(中編)

「ドワーフの王国に移動する前に二人には渡しておきたい物がある」


 そう言って、案内されたのはグランデル皇太子の家の地下室だった。


「まずはルランドに渡したいのは、この魔剣だ。ルランドが人間の中で非常に優れた能力を持っていることは分かっているが、魔族との戦いは更に次元の高い戦いになる。魔力を持った武器を持っておいた方がいいだろう」


 グランデル皇太子はそう言って、ルランドに魔剣を渡した。


「これが魔剣」


 魔剣の存在は知っていたが、私もルランドも魔剣の実物を見るのは初めてだった。


「そして、ラティリスにはアミュレットの腕輪を渡したいと思う。魔族が使う魔術に対するダメージを軽減してくれるので、身に着けておいて損はないと思う」


「こんな貴重な物を貰っていいの?」


「二人には恩があるので、ぜひもらってほしい。それに魔族の問題を解決するには、二人の力が不可欠だと私は思っている。だから、これらの道具で少しでも身の危険を減らしてもらいたい」


「まあ、そういうことなら」


「遠慮なく使わせてもらう」


「ああ、そうしてくれ。それともう一つ」


「もう一つ?」


 まだ、何かあるのだろうか?


「一緒に戦う仲間として、今後は皇太子という呼び方はやめてもらおうと思っている」


「では、何とお呼びしたらよろしいですか?」


「グランデル、もしくはグランとでも呼んでくれ」


「それでは、今後はグランデルと呼ばせてもらいますね」


 こうして、私はグランデル、ルランドはグランと呼ぶことになった。


 ◇


「……前から気になっていたのだが、二人は夫婦なのか?」


「と、突然、何を!?」


 グレンデルと馬車に荷物を運んでいる最中、急に私とルランドの関係について尋ねられた。


「指輪をしているので、最初は結婚していると思っていたのだが、寝室は別にしているようだし、どういうことなのかと思ってな」


「今はまだお互いに婚約者という関係です」


 というか、結婚できていないのは、あなた達のせいでもあるんですけどね。

 

 本来であれば、今頃、結婚式も終えて、ルランドと楽しく新婚生活をしていたはず。

 私は思わず溜息をついた。


「なら、可能性はゼロではないということか……」


「え、何か言いました?」


 小声だったので、何を言っていたのか聞き取れなかった。


「いや、こちらの話だ」


「そうですか?」


 まあ、たいしたことではなかったのだろう。


「それよりも、昨日渡したアミュレットの腕輪は身に着けてくれているのだな」


「はい、せっかく頂いた物ですし、魔術に対して抵抗力があるのでしたら、身に着けない理由がありませんから」


「そうか。それはよかった」


 グランデルは、何故か嬉しそうな表情でそう言った。

後編に続きます。

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