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冒険の始まり(前編)

「それで、今日はどこに行くんですか?」


「いや、知らない土地だし、昨日の今日だからな、特に決めてはいないのだが……」


 ドワーフの王国に行く条件と引き換えに、今日一日、ルランドと二人きりの時間を持つことになった。


 ダークエルフが攻めて来ると分かってからは、忙しく動き続けていたので、二人きりで街に出かけるのは本当に久しぶりである。

 お出かけが楽しみ過ぎて、実は昨日からずっとソワソワしていた。

 

 因みに、建前では出発の前の準備ということになっている。


「そうですよね。でしたら、普通に買い物でもしませんか?」


「そんなのでいいのか?」


「亜人大陸に渡って街でお買い物なんて、見方によっては、新婚旅行みたいじゃありませんか?」


「新婚旅行!? ま、まあ、見方によってはそうかもしれないが……」


 ルランドがあからさまに動揺している。

 思わず、クスっと笑ってしまった。


「明日からは、また忙しくなりそうですし、今日は二人きりの時間を楽しみたいですね」


「そうだな」



「あ、あそこにある装飾品のお店に行きませんか?」

 

「何の装飾品が見たいんだ?」


「ペンダントネックレスが見たいんです」


 お店に入ると、多彩な宝石がきらびやかに並んでいた。


「えーと、ペンダントネックレスはここかな」


 お店の人目がつく場所に、様々な種類のペンダントトップとネックレスが飾られていた。


「どれがいいかなー」


 ルランドは嫌がるけど。

 私はお揃いで身に着けられるペンダントネックレスを探していた。


 目立った宝石が入っているようなのは、ルランドには似合わないよね。 


「よし、これに決めた」


 私が手に取ったのは、男女ペア用の銀でできている三日月型のペンダントトップ。

 男性用の三日月には、男性がつけても似合うように装飾が施されている。


 このペンダントトップと銀のネックレスを合わせれば。


「うん、いいんじゃないかな」


「ラティリス、気に入ったのはあったのか?」


「はい」


「なら、それは俺に買わせてくれ」


「え?」


 そう言って、ルランドが右手を差し出した。


「今回、誘ったのは俺だからな。ラティリスにプレゼントしたい」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」


 私は二つのペンダントネックレスをルランドに渡した。


「ん、同じようなのを二つ買うのか?」


「ふふ、ルランドとお揃いで身に着けたいんです」


「お、おれも身に着けるのか?」


 ルランドが動揺している。

 装飾品があまり好きではないことは、もちろん知っている。


 でも、たとえ身に着けてもらえなかったとしても、魔力が込められている婚約指輪以外にも何か繋がりのある物を持っていたかった。


「……嫌ですか?」


「い、嫌ではない」


 明らかに無理をしている。


 そんなルランドの心遣いを、私は嬉しく思った。

中編に続きます。

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