ルランドの決意(前編)
「どうして、こんなことに……」
ルランドの手紙を読み終えた後、私はルランドを必死に追いかけた。
親愛なるラティリスへ
突然、ラティリスの前からいなくなり、さぞや驚いていることと思う。
今回の戦いは、自身の無力さを痛感する戦いでもあった。
敵に負けたことも悔しかったが、それ以上に大切な者を護ることができない自分自身に絶望した。
このままではラティリスの婚約者に相応しくない、そうも思った。
しばらく、俺は修行の旅に出たいと思う。
何も告げなかったのは、ラティリスは必ず俺のことを止めると思ったから。
婚約指輪を置いて行ったのは、決意を固めるため。
必ず強くなって、ラティリスのところへ戻る。
だから、それまでは、俺のわがままを許して欲しい。
ルランド
「ルランド、ルランド……」
私は名前を連呼しながら、ルランドを探し続けた。
ルランドが、既にダークエルフの王国にはいないことは、なんとなく分かっていた。
それでも、私は一日中、馬も使い探し回った。
じっとしていると気がおかしくなりそうだったから……
「護れなかったのは私も同じだよ!!」
私は馬に乗って草原を駆けながら叫んだ。
ルランドの気持ちは分かる。
私も今回の戦いで自分自身の力の無さを痛感した。
でも、それでも。
「私はルランドと一緒に強くなりたかった」
私と一緒じゃ強くなれないの?
私はそんなに頼りにならないの?
どんな宿命に振り回されたとしても、ルランドと一緒にいられれば希望を失わなかった。
ルランドがいたから、何度も困難にぶつかりながらも前向きな気持ちでいられた。
それなのに、私は今、ルランドがいなくなったことに、こんなに絶望している。
私のことを大切に想ってくれているからこそ決断したこと。
ルランドの決意を尊重したいと頭では分かっているのに。
「ルランドがいなくなったことが、今はこんなに寂しい……」
私はボソッと言葉をもらした。
ああ、そうだ。
それが、きっと今の私の本音。
ルランドがいなくなったことが、ただ、ただ、寂しかった。
『ラティリス、俺は何があっても君を護る。だから、ずっと俺の傍にいてくれないか』
『はい、もちろんです。ルランドが離れたいと言っても離れません』
ルランドを探しながら、口づけを交わしたあの日の誓いを、私は何度も想い出していた。
日も沈み、辺りはいつの間にか真っ暗になっていた。
疲れ果てた私は、ベンチに腰かけて空を見上げた。
結局、予想通り、ルランドはダークエルフの王国から姿を消していた。
婚約指輪を置いてかれたので、魔力でルランドを探すこともできない。
「どうしてこうなるんだろう……」
私は幸せになってはいけない。
そう運命に宣告されているようだった。
ルランドに買ってもらった三日月のペンダントトップと、空に浮かんでいる三日月を重ね合わせながら、私は涙を流し続けた。
中編に続きます。




