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魔王三天王サビスル(後編)

 何かないの? 


 この危機的状況から脱する方法。

 サビスルと会話をしながらも、私は何か打開策がないかと頭をフル回転させていた。


 ……危機的状況?


 確かデミストからハーリを受け取る時に、そんな話をしていたような。

 そう思い出して、肩に乗っているハーリの様子を見ると、何故か元気がない様子だ。


 そうか、デミストの魔力が闇障壁ダークウォールによって防がれているから……


「ん?」


 そう自問自答していると、ある仮説が私の脳裏をよぎった。

 

 既に危機的状況にあるにも関わらず、ハーリには何の動きもない。

 それはおそらく、この闇障壁ダークウォールがデミストの魔力を遮断しているから。


「だったら!」


「フフ、最後の悪あがきでもするつもり?」


 サビスルは私との実力差が分かっているのだろう。

 勝利を確信し、余裕の笑みを浮かべている。


水魔法結界崩壊バリア・ブレイク!!」


 私が放った魔法によって、人も通れないほどの小さな穴が闇障壁ダークウォールにできた。


「フフフ、何その弱い魔法? そんな小さな穴じゃ、あなた一人すら闇障壁ダークウォールの外には出られないわよ」


 確かに私の魔力では、こんなことくらいしかできない。

 でも、私の仮説が正しければ、この穴で十分なはず。


 私は心の中で私の仮説が間違っていないことを祈っていると、真上から黒い稲妻がハーリに落ちた。

 轟音ごうおんと共に土煙が舞い上がる。


「デ、デミスト?」


 土煙の中から出て来たのはデミストだった。


「よく気がついたな」


 いや、ハーリを通して危機を脱する何かが起こるとは思っていたが、まさかデミスト本人が来るとは思っていなかった。


「なっ、デミスト!? どうしてあなたがここに!!」


「もちろん、サビスル、お前を倒しに来た」


「どうして同じ魔族である私を……。倒すなら亜人や人間でしょ?」


「同族であったとしても、野放しにしておいてはいけない存在もいるということだ」


「ふーん、それが私ってわけね……。それなら、降参するわ。どうせ、今の私では勝ち目はないもの」


「フ、どうやら先の戦いで、魔力を随分と使ったようだな。なら、魔術で拘束するが、もし抵抗すれば分かっているな」


 私の力量では分からなかったが、ルランドとエアルとの戦いで魔力を相当消耗していたようだ。


「私はそんなにバカではないわ」


 サビスルはそう言って、デミストの魔術でおとなしく拘束された。


「あーあ、残念、私はけっこうデミストのこと気にいっていたのに」


「それはどうも」


 デミストは素っ気なく返答した。


「あと、あなた」


「え、私?」


 話しかけられるとは思わなかった。


「あなたを見ていると、昔の私を見ているようで、とてもイライラしたわ。世界に絶望して、わたしのようにはならないよう、せいぜい頑張ってね」


「……忠告ありがとうございます……」


 そんな風に思われていたなんて思いもよらなかった。

 

 一体どんな絶望を味わったらあんな風になってしまうのか……


 私は思わず身震いした。


「ラティリス、お前のお陰で心配事の一つを解決することができた。感謝する」


「あ、いえ、こちらこそ、助けてくれて、ありがとうございます」


 正直、デミストがいなかったら、私達は全滅していた。


 ただ、それはそれとして……


「ハーリを通して、全部見ていたんですか?」


「魔獣に名前をつけたのだな。ああ、ラティリスの予想通り、そのハーリと俺は魔力で繋がっている」


「ということは、温泉で私の裸も見たってことですよね!」

 

 私はデミストに問い詰めた。


「……見るには見たが、裸を見られたくらいで、何故そんなに怒っているのだ?」


 これも魔族との価値観の違いなの?


 私は恥ずかしくて仕方がないのに…… 


「今後は絶対にハーリとは一緒にお風呂に入りません!」


「そうか、そんなに気になるのであれば、その時は見ないようにしよう」


「もう!」


 何も分かっていない様子のデミストに、私は溜息をついた。


 まあ、でも、こんなことで怒りをあらわにできるのも命あってのこと。

 私は改めて、デミストが助けに来てくれたことに感謝した。 


「風の精霊エアルよ。少しは回復したようだな。俺はそろそろこの場を去らせてもらうが、後のことは頼んだぞ」


「言われなくても、そうするよ」


 エアルは飛べるようになるまで、いつの間にか自己回復していた。


 こうして、魔王三天王の一人サビスルとの戦いは、終わってみれば呆気ない幕切れとなった。

 ルランド、エアル、グランデルを治癒した後、私達はダークエルフの王国に戻り、グランデルは王との再会を無事に果たした。


 これで、しばらくは平穏が訪れる。

 少なくとも、今日まではそう思っていた。



 次の日、部屋から出てこないルランドの部屋を訪れると、そこには婚約指輪と一緒に手紙が置かれていた。

次回、『ルランドの決意』

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