ダークエルフの兄弟(中編)
「どうした? 息が上がっているぞ」
「うるさい、うるさい、うるさい!! そうやって、いつも僕の前で余裕ぶって、いつまで僕を子ども扱いするつもりだ!!」
ブラグラ王子は子ども扱いするなと言っているが、そういう台詞を使っている限り、子ども扱いされても仕方がないのでは……
つい、そんなことを思ってしまった。
「子ども扱いをしているつもりはなかった。それに、お前の前で余裕があったわけでもない。私はただ、お前の前では立派な兄でいたかっただけなんだ……」
「それが気に食わなかったんだよ!!」
うーん、だいぶこじらせてるみたい。
「ブラグラ、すまない」
グランデルはそう言って、剣の刃ではない箇所を打ちつけてブラグラを倒した。
「グランデル……」
「頼む」
決着がついた様子だったので声をかけたが、グランデルは悲痛な表情で一言だけそう言った。
「分かったわ。女神魔法浄化!」
女神魔法でブラグラ王子の浄化を始めると。
「我が魔術を解こうとする者は誰だ!」
「え!?」
ブラグラ王子の影から突然声が聞こえてきた。
「まさか、女神魔法を使える者がいるとはな」
黒い靄と共に、影の中から魔族が出現した。
「あなたが魔王三天王誘惑のサビスル?」
「え? 私の名前を知ってるなんて、私ってそんなに亜人達の間で有名だったかしら。って、よく見ると人間じゃない。なるほど、あなたが女神魔法を使ったのね」
「どうして、ブラグラ王子を操るようなまねを……」
「どうして? 誘惑の魔族である私にどうしてと尋ねるの? それは、それが誘惑の魔族である私の生のいとなみだからよ」
「つまり、理由はないと」
「ええ、どうして理由が必要だと思ったの?」
魔族の正体は亜人ではなかったの?
もしかすると、魔族になった者同士の間で生まれた魔族は、生まれながらの魔族になってしまうのかもしれない。
もしそうだとすれば、思っていた以上に絶望的な話だが……
「まあいいわ、私は同性のあなたに関心なんてないもの。それよりも、この子のお兄さんの方が私にとっては興味深いわね」
「グランデル!」
グランデルを狙っていると分かり、私はとっさに名前を叫んだ。
「ラティリス?」
「遅いわ」
が、時すでに遅し。
黒の結界がグランデルを囲んで、グランデルを拘束した。
「くっ、何だこれは!!」
グランデルが抗おうとするが、拘束された後では、魔法も発動できないようだ。
「サビスル!!」
「フフ、ダークエルフの未来の王の命か、ダークエルフの王国の主権を私に譲るか、好きな方を選ばせてあげる。期限は三日、それを過ぎたら、この王子の命はどちらにしてもないと思ってね」
「待っ……」
私が待ってと叫び切る前に、二人の姿は地面の中へと消えてしまった。
「て……」
その場には、私とブラグラ王子の二人だけが取り残されていた。
後編に続きます。




