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県境の長いトンネルを抜けると、異世界だった  作者: りょお@夜の全裸中年男性


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1-1 地方ローカル線の日常

地方に行くと何処にでも有りそうなローカル線。

そんなローカル線ののどかな日常・・・・。で済むわけないよね。何かが起こるんです。

 大川原鉄道。


 旧国鉄の赤字ローカル線だったが、地元の熱意で三セクとして存続する事になった。その会社名である。

 県第二の都市である真江原から会社名にもなっている大川原地方の中心である勝間田、そして県境の長いトンネルを抜けて、隣の県の澄田までが路線の全てであるが、県境を挟む勝間田と澄田の間は、山深いところを走っており、利用客は殆どいない。

 一方の真江原から勝間田の間は、平野が広がり、昔は米どころでもあったが、昨今、IT産業の進出がめざましく、沿線住民も増加傾向で、国鉄時代よりは利用客も多くなっている。

 実のところを言えば、県境の区間の赤字が酷すぎて、まあまあ儲かってた勝間田までの区間も道連れに廃止にさせられるところだったのを、その時の沿線自治体が反発して第三セクターへと転換した訳だ。


 あ、私?

 大川原鉄道で総務部長を務める吉良と言います。以後、お見知り置きを。

 私と大川原鉄道の絡みは会社設立からである。最初は県庁の総務部に採用された筈なのに、ちょこっと「鉄ヲタ」である事がバレたら、あっという間に会社設立の要員にされ、いつの間にか出向して早、三十年近く過ぎた。事務仕事から駅員、気が付けば動力車操縦免許まで取らされ、列車の運転までやってました。まあ、三セクですからね。何でも屋でないと会社が成り立たんのですわ。


 最近は利用客も増えたんで、会社もしっかりと社員を増やしましたんで、本来の総務部長って言う仕事に専念出来てるのは有難い・・・でも、昔の様に現場に立ちたいと言う気持ちもちょこっとだけ有ります。


 私は起点の真江原市内に家を持ってるんですが、本社は鉄道の拠点でもある勝間田なんで、毎日、列車で通勤してます。朝のラッシュは真江原に向かうお客さんが多いので、私は逆方向で少しだけ楽に通勤。出勤時には一番前で線路を巡視し、運転士とも軽く話をしています。小さい会社ですから風通しは良いですがね、事務屋と現場じゃなかなか接点が取れませんですしね。

 今朝の運転士は、私が総務部長になって初めて面接した若手。地元採用でそろそろ結婚話が聞こえても良い頃なんですがねぇ・・・。

「部長、おはよーございます」

「おはよう、松田くん。今日も頼むぞ」

 しばらくは、沿線の工場勤めのお客さんもいるので、雑談は交わしませんが、そのラッシュも過ぎると、

「ねえ、部長。澄田までの終列車に人乗せる話はどうなりました?」

 松田くん、澄田への終列車を担当する時にもう一人係員を乗せてくれって要望を出してます。理由は、

「僕が終列車やる時って必ずお客さん居ないんですよ。んでもってあんな山奥一人で走れって、何かあったら怖いじゃないですか」

 怖がりなのは仕方ない。なにせ、県境の大坂峠トンネルを抜けると人家なんて殆どない。川を挟んで対岸には県道が走っていて、そちらには人家がちらほらあるが、線路側は森ばっかり。鹿とか鹿とか鹿とか出て来て、列車と「がっぷり四つ」になると一人で全部処理しなきゃならない。

 一回、そんな事案に遭遇して以来、松田くんは澄田への終列車にもう一人乗せて!と熱望しているのである。


「話はちゃんと聞いてるよ。保線の石橋に頼んでるんだが、なかなか人が出せないんだと。まあ、人が少ないのは何処も一緒だ。気持ちは判るが・・・」

「澄田までの線路、潰せないんですか?」

「俺もそれは考えてるんだが、隣の県との話し合いがなかなか纏まらなくてなぁ。知事にもお願いはしているが、向こうが首を縦に振らんのだ」


 大川原鉄道の目下の問題。勝間田〜澄田の廃線計画。利用客が真江原〜勝間田の五パーセント以下だが、隣の県がなかなか話に応じてくれない。金は出してくるからなおのこと厄介だ。

「ハァー、今日も終列車担当なんですけどねぇ」

 松田くん。悪いな。


 真江原から勝間田までは約四十分、そこから先、澄田までは更に二十分ほど。真江原〜勝間田間は三十分に一本の頻度で列車が走るが、澄田へは一日に四往復。会社としては最低限の事はやってるんだが、どうも鉄道としての「役割」が終わってる事を納得してくれないんだよ。どーしたもんだか?


 勝間田に着くと、松田くんとはお別れして、駅舎横に建てられた「本社」へと向かう。本社と言ったが、社長はこっちには出勤してこない。県の副知事が社長を兼任してるので、実質的な社長役は私と、運輸部長の牧さんとで分担している。まあ牧さんは運転士が不足しがちな我が社では、運輸部長と運転士を半々で勤めておいでなので、結果、現場社長は私が勤めている様なものだ。


 設立当時は、車庫に隣接した建物が本社だったが、最近の利用客増加と建物自体が狭くなったのを機に、十年ほど前に新しい建物を建設。そちらに本社機能を移している。

 一階に運輸、総務、施設の机が並び、二階には「お飾り」の社長室兼応接室、そして会議室がある。一つのフロアに壁なしでみんなが仕事をしているので、物理的にの精神的にも風通しは良い。


 総務部と言っても、本当に事務屋の何でも屋である。部長の私を筆頭に、県の出納課から出向してきている財務担当の「お姉さま(そう言わないと社会的に抹殺される)」の榎本さんと、広報を担当する入社十年目の高橋くん(広報とは名ばかりの何でも屋)、去年入社した地元の女子、真中さん。以上が総務部フルキャストである。

 部長の席に座ると早速、榎本さんから書類の束を押し付けられる。

「さあ部長、朝から全開でお願いしますね」

 ったく、現場時代はこんな書類からは逃げまくってたのに、あーあ偉くなるモンじゃねーなぁ。茶を啜りながら、早速書類の束と格闘する私。

 四、五枚の書類を片付けて、本来の始業時間である九時に近づいたその時、机の湯呑みがカタカタと揺れ出した。

「ん、じ、地震?」

 誰ともなく呟いたその直後、


 どーーーん!


 大きな揺れが本社を襲った。

 運輸部長の牧さんは、無線のマイクを握って列車に停止命令を出す。榎本さんは自分の机の上の書類の山が崩れない様に押さえる。施設の石橋さんは、即座にテレビを付けて国営放送にチャンネルを合わせる。

 一方の私は、湯呑みを手に取り書類を汚さない様に必死になる。

 揺れは十秒程で収まったが、呆然としている暇はなかった。早速、各自の仕事に取り掛かる。私も国営放送の臨時ニュースを眺めつつ、情報の取りまとめを行う。


 大きな揺れであったが震度は四という事で、少ない人員で手分けして沿線の被害状況を調べる事になり、それぞれが車や徒歩で調査に向かう。

 私ら総務部は、自治体やら警察、消防との情報交換で机に縛り付けられる。


 そんな騒動の中で、一つだけ大きな変化があったのだが、それはこれからの点検で明らかになっていくのであった。その変化は、会社だけにとどまらないとは誰も知る由が無かった。


鉄道で怖い災害というとやはり地震ですね。予告なくやってきて、被害は大きい。大雨ならある程度準備が出来ますからね。

さて地震に見舞われた大川原鉄道。地震の被害はどうなったのでしょうか?


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