レイドモンスター『嫉妬の魔王』1
「――――――――――さぁ、見せてみなさい。あなた達の可能性を」
そう言ってリヴァイアサンが攻撃を開始する。
水の槍が一斉にプレイヤーを突き刺し始めた。
しかし、周囲のプレイヤーたちは呆然として動かない。
ムッツリきなことフラウさんは動けるみたいだけど、ムッツリきなこはMP切れで使えない。
フラウさんもそろそろ限界だ。他のプレイヤーは死んでるか放心してるよ。
「魔力充填!術式起動!【機神術・魔導大砲】!」
そんな中、一つの砲声が鳴り響いた。
放ったのは普通のプレイヤーで、特筆すべきは腕が大砲に変異していたことだ。
砲弾はまっすぐに飛翔し、リヴァイアサンの障壁を一つ破壊した。
「お前はいいな!!名前を言えっ!」
「パイソーンです!!」
「よし!女王の名において告げる!英雄パイソーンに『魔導技師』の称号を与える!」
パイソーンくんには『魔導具』の能力が上昇する『魔導技師』を与えた。
これで戦況が有利になるはずだ。
「私も奥の手を出してやる!ミオ!来て!」
無詠唱で【幻想術】を行使する。
水が私の拳に収束し、その形を変えていく。変形が終わると拳に機械的なガントレットが装着されていた。
このまま、リヴァイアサンに向かって飛翔し、拳を叩きつける。
魔力が収束した障壁が軋み、ひび割れ始めた。
「ぶち抜け!【幻水機構】!」
異常なほど回転した水の槍が射出され、障壁を貫いた。
残る障壁はまだまだあるが、一歩進展したと言うべきだろう。
「使いたくなかったけどぉ!ユニークスキル!『紛い物の龍』!」
今度は一人の女性プレイヤーが能力を起動した。
魔力が収束し、そこに瓦礫や乙姫の鱗などが集い始める。
瓦礫たちはやがて一頭の龍に変貌する。
珊瑚と貝殻で構成された体に、まばらに存在する青色の鱗。瞳は真珠で、牙は水。
なんとも個性的な龍の姿だった。龍は首を持ち上げて、高らかに吠える。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
この声で正気を取り戻したのか、プレイヤーたちが行動を再開した。
見かけによらず凄いな、この龍。
なら、私も奥の手を出そう。
ついさっき実現した、魔力の運用法を。
「『汝は我が盾、汝は我が剣。万象に存在せし原初の水よ、我が呼び声に応えよ』」
魔力をリヴァイアサンの支配する水に浸透させ、その支配権を奪い取る。
負けじとリヴァイアサンも支配権を奪ってくるが、より濃密な魔力で奪い取っていく。
魔力を乗せた詠唱も行い、その力を高めていく。
「『我は大海の主。愚かなる者共に、大いなる海の鉄槌を』!!」
魔力の密度が一気に上昇し、私は新たな世界を作り出す。
『霊』の魔力を限界まで変質させて、私が定義する世界を構築する材料にする。
周囲の水の支配権がすべて私に移った。
「これが私の世界だ」
新しい世界は変わりなく海の底だが、一つ変わったことがある。
リヴァイアサンの障壁が全て解除された。
私の世界で、敵が力を行使できるわけがない。
リヴァイアサンは目を見開き、楽しそうな目で私を見つめる。
「『霊界・大海主君』、これが世界の名だ。」
名を与えられたことによって、私の世界が確定した。
今この世界では私がルールとなり、少しは世界の法則がいじれるようになるらしい。
解除したら元に戻るよ。そしたらリヴァイアサンが強化されるだけだけどね!
「――――――――素晴らしい。人の子にもこの技を習得している者がいるとは驚きです。」
「ありがとう。リヴァイアサンのお陰で私はここまでこれた。」
「――――――――試練はまだ終わっていません。他の子らもこの領域にたどり着けると嬉しいですね」
「さぁ?私はイレギュラーみたいだしね」
会話を終えて、再び戦闘に復帰する。
さぁ。魔王討伐の始まりだ。




